第52話 いつもと違う朝


 散々はしゃいで、星空と陽菜ちゃんに迷惑をかけた張本人は、昨日一番早く寝ただろう。


 そして、今も私の腕の中で寝ている。

 いつからこういう風に寝るようになったんだっけ。



 光莉は寝相が悪くてよくベットから落ちる。

 首から落ちたりしたら危ないと思って、こうやって離さないように寝るようになった。



 光莉はその名前のとおり、体も心も温かい人だ。一緒に生活するといつも私のことを考えて行動してくれるし、一緒に頑張ろうと言ってくれる。



 ただ、お互い素を出し過ぎて喧嘩をすることもある。

 それが悪いとは思わないが、光莉といると感情の変化が激しくて疲れるし、小さい頃、星空と一緒に居た時みたいな気分になる。


 今まで感情を隠してくるのが当たり前だったので、光莉との衝突は体力を消費する。

 人と向き合いぶつかり合うのってこんな大変だったんだとしみじみ感じた。


 

「黙ってればかわいいんだけどな……」


 光莉の頬を撫でる。

 うるさくなったらいっそ唇を塞いでしまおうか。


 そう思って光莉の唇に触れる。


 私は何を思ったのか、体を光莉に近づけて指が触れていた部分に自分の唇を押し当てた。

 

 これで少しは静かになればいい……。

 


 いや、光莉は光莉のままでいい。

 


 光莉が目を開けて私と目が合った。

 

 えっ——。

 自分がさっきしていた行動がバレていないかと手に変な汗が滲む。


「私さ、真夜のこと好きって言ったよね? そういう事するってことは真夜もそういう気持ちだって勘違いしてしまうんだけど」

 

 すごい真剣な顔で私に話してくる。

 いつもふざけているくせにこういう時は真面目な顔で話す光莉はずるいと思う。

 


「ちがっ……」

 

 否定する前に今度は光莉から唇を塞がれる。

 口の中に熱い感覚が流れ込む。

 それを拒否することだってできたのに受けいれてしまった。

 

 光莉のその小さい体から想像もつかない熱が私に流れ込み頭がクラクラする。

 

 呼吸が浅くなり、より意識が唇に集中すると気持ちよさだけが残った。

 


 光莉が私から離れ、さっきまで感じていた熱がなくなり、少し寂しいと思う自分がいた。

 

「私、本気だから」


 その言葉を聞いた瞬間に顔が一気に熱くなるのがわかった。


 これから、光莉と生活していけるのかと不安になる朝だった。

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