第44話 《おまけ》黒猫とラブラドール


 私の家にやってきたラブラドールの刺繍が入ったハンカチと黒猫の絵が入った黒色のペンケース。


 まさか、滝沢が私の誕生日に興味を持ったりプレゼントをくれるとは思わなかった。今でも信じられないと何度も見つめてしまう。



 滝沢はお泊まり会以降、私に変なことをしなくなった。あの距離はいけないと感じたのか他に理由があるのか何も聞けないでいる。


 滝沢がああいうことをするのは多分私だけで、特別に感じていたからそれが無くなるのは少し寂しい。



 黒のペンケースの中にいる黒猫は机からこっちを見てくる。枕元に置いている黄色のハンカチと薄ピンクのハンカチを見る。


 滝沢、前もラブラドールのぬいぐるみ取って喜んでいたけど、好きなのかな。


 滝沢ってこんなに刺繍上手だったんだ。というか裁縫とか好きだったんだ。

 滝沢の好きな物のことを全然知らないな……。

 一緒にいる時間は長いはずなのに案外滝沢のことを知らないんだと痛感してしまう。


 明日、舞に滝沢の誕生日を聞いてみよう。


 受け取ってくれないかもしれないけど、私も滝沢に何かを渡したい。


 誰かに何かをあげたいと思ったのは父と母に思った時以来だ。あの時の感情を思い出し懐かしくなり心が温かくなる。


 滝沢はいつも私を救ってくれて、私の心を温かくしてくれる。その温もりが心地よくて、距離を感じると急に寂しく、苦しくなってしまう。



 早く朝になって欲しい。

 夜は悪いことばかり考えてしまう。

 そう思ってラブラドールのハンカチを握り眠りに落ちるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る