第27話 夏休み②
今年の夏はとにかく猛暑が続く。
暑いと勉強に集中しにくくなるので、冷房の効いた図書館で勉強するのが1番はかどる。
それで今日も図書館に来た訳だが、色々とよくわからないことが起こっている。
私の目の前にはいつも通り遠藤さんがいる。
しかし、問題は私の横に座っている人だ。
「滝沢、今日は私との勉強会なのになんで他の人も呼んでるの」
遠藤さんはニコニコと顔は笑っているが、声のトーンは低くてなかなか怖いことになっている。
「星空が友達と勉強するって言うから着いてきてみたら、すごい美人さんに出会えてお姉さん幸せだなぁ」
うん。今すぐこの場を離れたい。
最近、考え事が多すぎて禿げそうな勢いで悩んでると思う。しかし、今日は特にめんどくさいことになっている。
「あなたは滝沢のなんなんですか」
遠藤さんの顔つきが変わった。飼い主に近づく悪い人に噛みつきそうな犬のような顔だ。
「んー…言ってもいいけど、美人さんの求める答えかどうかわからないよ。それより名前教えてよ」
新手のナンパかなんかと思うくらい、名前を聞くのに手馴れている。
「遠藤陽菜です。それよりなんでここに居るんですか?滝沢の何なんですか?」
「恋人だね」
「えっ」
遠藤さんが信じられないと言わんばかりに私を見た。
んー……なんか喋れないでいたら、ややこしい事になっている。というか、真夜姉は遠藤さんの反応見て絶対に楽しんでいる。
真夜姉の小さい頃からの悪い癖だ。
このバグった距離感が色々な人達を勘違いさせるのだ。
魔性の女とでも言っておこう。
「ここ図書館です。イチャイチャしないでください」
普段、誰の前でもニコニコと作り笑顔を作っている遠藤さんが、かなり怒った顔して言ってきた。
そんな大きい声を出してる遠藤さんの方が目立っているのだが…
でも、前より表情が変わるようになったなと思い、遠藤さんの顔に手を添えた。
ほっぺがモチモチしててやわらかい。
ほっぺを引っ張ってみる。
遠藤さんは怒った顔から嫌そうな顔になった。
「滝沢何してるの」
遠藤さんの機嫌が直らないので、彼女の顔から手を離し、説明することにした。
「これは私の姉。なんか遠藤さんと勉強するって言ったら着いてきた」
遠藤さんはハッとした顔をして真夜姉を見ている。
真夜姉はお得意のニコニコとした表情で遠藤さんを見ていた。
「なんでもっと早く言ってくれないの…」
「だって2人とも私の入る隙がないくらいの勢いで話してたじゃん」
「陽菜ちゃんの反応が可愛くてつい虐めたくなっちゃった」
真夜姉はとにかくすごい。いきなり名前で呼ぶのもすごいし、どんなことをしても許されるような人との関わり方をする。見習いたくないけど、人との関わり方が下手くそな私は見習わないといけないのかもしれない。
「お姉さんは私より頭がいいから今日は姉に聞くといいよ」
悔しいが事実だ。姉に学力で勝つのは一生無理だと思っている。
「お姉さんなんて他人行儀だなぁ。いつもは真夜姉、真夜姉って甘えるように呼んでくるじゃないか」
「私は滝沢に教えて欲しい」
うん…
何も会話が噛み合わないし、誰が誰に話しかけているのか分からない…
この2人は一生会わせない方がいいと分かった。
少なくとも私がこの2人といると、神様にでもならない限り、イライラが爆発してこの場を荒らしそうだ。
「とりあえず勉強しよっか」
1番ふざけていた真夜姉の真剣な一言で、勉強が始まった。
この人はほんとにすごいと思う。
姉の一言で場の雰囲気が変わる。
憎いほど羨ましい。
何時間か集中していたらまた雑談タイムが始まる。
「陽菜ちゃんは付き合ってる人とかいないの?」
「いません」
遠藤さんはてっきり彼氏がいるもんだと思っていたからその回答にはびっくりした。
「じゃあ、好きな人は?」
「……いません」
真夜姉の質問に心臓が早くなり、遠藤さんの回答を聞いて、安堵している自分がいた。
なんで……?
「えーじゃあ、お姉さんと大人の遊びをしようよ」
真夜姉はにこにことして、いや、いやらしい目で遠藤さんを見ていた。
「無理ですね」
私のお姉ちゃんと言うこともあるのか、いつもの遠藤さんらしくない。あまりに真夜姉が遠藤さんを虐めるのでさすがに可哀想だ。
「真夜姉、邪魔するなら帰って」
「じゃあ、星空が好きな人いるかどうか答えてくれたら勉強に集中するよ」
ニコニコとそんなこと言われた。
人なんて好きになったことは無い。いつかは終わる関係だと思っているからだ。
友達も恋人も家族すらも、その時は一緒にいて楽しいかもしれない。しかし、出会いがあれば別れもある。
友達とは卒業までだ。
恋人はどちらかの気持ちがなくなったりすれば終わるだろうし、それがいつ終わるか分からない関係。家族すらも別れがあると思っている。
実際、私は家族とは一緒に暮らしているが、ほとんど縁が切れているようなものだ。
そんな世の中で好きな人を作る理由がわからない。
大切なものを作るから失った時の失望や落胆が大きくなる。だから、私は誰のことも好きにならないし、誰も特別なんかにならない。
「いるわけない、わかってて聞くとか嫌がらせとしか思えないんだけど」
真夜姉を睨みつけた。そんな顔しないのと頭を撫でられた。
「いつかできるといいね」
「別に好きな人なんていらない」
場の雰囲気がすごく悪くなってしまった。これも全て姉のせいだ。昔から真夜姉が関わるとろくなことが起きない。
「滝沢、ここ教えて」
この場の雰囲気に耐えられなくなって、帰ろうと思っていたら、遠藤さんがいつもの調子で話かけてきた。
急にいつも通りの遠藤さんになるので、帰るに帰れなくなった。
姉もいつの間にか勉強に集中している。
このまま勉強を続けるしか無かった。
結局その後、勉強は無事終わり?帰るのことになった。その時、自分のペンがないのに気づいて取りに戻った。
2人を置いていくのは不安だが仕方ないので急いで探すことにした。勉強していた机の下にペンが転がっている。
ペンは見つかり姉と家に帰ることになった。
今日はすごく疲れた…
もう絶対に2人がいる時には勉強しないと誓った日だった。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
真夜姉さんにコロコロと転がされる遠藤さんがかわいい会でした!星空ちゃんのことになるとムキになるようです。
読者さんに読んでいただけたり、作品フォローしていただけたりすることがいつもモチベになってます!
評価いただけると泣いて喜びます、、、
連載中の作品も他にあるので、時間ある時に覗いてもらえると嬉しいです!
今後もよろしくお願いします!
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