第26話 曇天
珍しく予備校でもないのに勉強会を断られた。
滝沢は月、水、金の3日間予備校に通っていて、それ以外の日に勉強を教えてもらうようにしている。
今日は土曜日だ。
絶対予定が無いはずなのに断られた。
舞と遊ぶのかと思って聞いたけど、違うと言われ、他の人かと追求すると既読無視される。
「今日会えると思ったのに……」
なんで会いたいと思っているんだろう。
嫌なことされるなんて目に見えてるのに…
返信の返ってこないスマホをベットに投げ捨てた。
家は静かで物音1つしない。
当たり前だ。
私以外住んでいないのだから。
モヤモヤとしたこの感情が嫌になり、朱里と奈緒を遊びに誘った。
私から誘うことなんて滅多にないから2人がノリノリで遊ぼうと言ってくれた。
ショッピングモールで奈緒と朱里の買い物に付き合うがやはり気が乗らなかった。2人は女子高生なので、コスメの話や服の話で盛り上がっている。
私もかわいいものや服が好きだが、2人ほどでないので何となく話を聞いて、2人に合わせていつもの私になってしまった。
かわいいカフェがあったのでふと見てみると、そこには私の知る人が座っていた。
滝沢……
滝沢の隣には髪の短いきれいな女性が座っている。
舞といる時とも違う距離感でとても仲が良さそうに見えるし、こんなオシャレでかわいいカフェ、滝沢は絶対に行かないと言いそうだ。なのに、スカートと大人びたブラウスを着て真剣そうに隣の女性の話を聞いている。
胸がちくりと痛む。
友達の前では笑顔でいるし相手にある程度合わせている滝沢だけれども、私の前では全く気を使わないし、人が傷ついているのにずかずと酷いことを言ってくる。
酷いことをされているし冷たいとは思っていたが、それは私だけに向ける特別なものだと勝手に感じていた。
しかし、今、滝沢が隣の女性に向けているものは舞とも私とも違う感情のように見える。
とても親しそうで、滝沢の方が隣の女性に食いついている。
胸のもやもやを晴らすために2人を誘って遊びに出たのに、晴れることの無い
今日はあんまり良くない日だ。
結局、滝沢のことを考えていたら遊ぶ時間は終わって、2人と解散していた。
あたりは暗くなり静けさが訪れる。
家まではそんなに遠くないのにいつもの倍に感じる道を歩いていた。
私が滝沢と公園で初めて会った日もこんな感覚だった気がする。
ふと、あの時の滝沢と後ろに見えた夜空を思い出した。
ほんとに綺麗な夜だった。
それに見劣りしない滝沢の綺麗な瞳と綺麗な黒髪は今も忘れられない。
空を見上げると、そこにはあの時と同じ星空が広がっていた。
「きれい……」
心で唱えたつもりが口に出ていた。
この無数に広がる星たちは常に輝いている。
そしてその星の中でひとつ、私をずっとここまで導いてくれた星がある。
「
彼女の名前を口にしていた。
さっきまであんなにモヤモヤしていたのに、今は滝沢に会いたい。
コンビニに寄って、好きな飲み物を飲んで、滝沢と会う約束をしよう。
帰り道のコンビニでいつものオレンジジュースを手に取ろうとすると、手がぶつかる。
ごめんなさいと謝る前に、目の前にいる人物に驚いて声が出なくなった。
運命というものは本当にあるのだろうか。
綺麗な瞳に綺麗な黒色の髪。
少しムッとした口に形の整った鼻。
私が驚いている間に名前が呼ばれる。
今日、私とは会ってくれなかった理由は、あのかっこいい女性だと思い出すと、少し腹立たしくなったが、今はそんなことよりも大切なことがある。
明日も会いたい。
「明日は勉強会できる?」
滝沢は頷く。
このままここに居たら、さっきの女性のことを聞きたくなってしまいそうなのでその場を離れることにした。
ぴっとコンビニのレジを通るオレンジジュース。
今日はこのオレンジジュースのおかげで滝沢に会えた。
オレンジジュースに感謝するなんてバカバカしいが、心の中で「ありがとう」と伝える。
コンビニを出ようとした時、さっき見た夜空を思い出した。
「滝沢みたいに綺麗な星が沢山見えるよ」なんて素直に言えたら今の胸のもやもやは消えるだろうか。
そんな勇気も自信も今の私には無い。
ただ、この綺麗な景色を滝沢と分け合いたい。
「今日、星がよく見えるから見てみて」
滝沢は怪しいものを見るような顔でこちらを見てくる。
その顔が外に出た時に少しでも晴れるといいなと思い、一歩踏み出した。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
女の子の嫉妬ってかわいいですよね( * ॑꒳ ॑*)
綺麗なものや好きなものを共有したい相手が居るって素敵なことですよね。
読者さんに読んでいただけたり、作品フォローしていただけたりすることがいつもモチベになってます!
評価いただけると泣いて喜びます、、、
連載中の作品も他にあるので、時間ある時に覗いてもらえると嬉しいです!
今後もよろしくお願いします!
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