第24話 気になる
キス事件があってから、滝沢との勉強会は続いている。
滝沢は勉強を教えるのが上手で私の成績は驚くほど上がっている。
滝沢の言うことを1つ聞けば3時間くらい勉強を教えて貰える。
しかし困ったことがある…
滝沢から要求されることについてだ。
最初は肩を貸してとか、そばに居てとかそんな可愛いものだったが最近は違う。
指を舐めろだとか、逆に腕を貸せと言われて噛まれたりする。
約束だからなんでも言うことを聞いているが、私が嫌な顔をして楽しんでいる滝沢がちょっと気に入らない。
私は一体滝沢にとってなんなのだろうか。
犬か何かと思われている?
考えれば考えるほど分からなくなりため息が出る。
たまに滝沢の教室の前を通ると舞と仲良くじゃれあってるのが見える。
滝沢は私に対しては気まぐれで、懐く時もあれば冷たい時もある。
だけど、友達の舞に対しては常にお腹撫でてくれとおねだりする猫みたいに心を開いている。
私にも、舞みたいに接してくれたらいいのに…
2人が仲がいいのは友達だから当たり前で、私だって友達とあれくらいする。しかし、それを見ると無性に邪魔したくなる時がある。
「舞を呼んでもらってもいい?」
「あわわ、遠藤陽菜さん!今呼びます!」
舞と同じクラスの子は慌てて舞を呼んでくれた。
奥の滝沢と目が合う。
すぐにそっぽ向いて窓の外を見てしまった。
確かに学校では関わらない約束だが、あからさまな態度で少し悲しくなる。
「やっぽー。どしたの陽菜から話しかけてくれるなんて」
「どうしたのじゃなくて私になにかいうことないの」
「んーー、、、あ!プリントが星空に無事届いて何よりだよ」
「ほんともっと感謝して欲しいわ。今日なんか奢ってよね」
「陽菜さんそれはカツアゲですか。怖い怖い。星空とお揃いで2人とも怖いです〜」
滝沢も私の話を?どんな話をしていたか気になるが舞に聞いてもまともな答えが返って来なさそうだ。
私も舞みたいに名前で呼べる関係になりたい。
しかし、最近の関係は舞と滝沢のような関係からはかけ離れていて、悲しくなる。
体育の時間、何となく屋上を見た。
あそこで滝沢と関わるようになってから、かなり濃い人生を過ごしている気がする。
あの時、滝沢が屋上であんなことをしていたのか今だに聞けずにいる。
いや、聞かない方がいいのかもしれない。少なくとも今の関係を変えたくないのなら聞かない方がいいと思う。
私の勘がそう言っている気がする。
私には、滝沢が死のうとしているようにしか見えなかった。
なんで?と何度も考えたことがある。
滝沢と関わるようになってから滝沢のことを少しづつ知ることが出来た。それでも、結局彼女があそこにいた理由はわからない。
思い当たる節といえば、滝沢の家族のことくらいだろうか。
お見舞いに行った日、滝沢のお母さんは滝沢の名前を聞いた途端に顔色が変わった。私のことを人間では無いものを見るような目で見ていた。そして、家の中では滝沢が怯えるように部屋にこもっていた。
人にはそれぞれ家庭の事情がある。
私だってあまり聞かれたくない。
だから、滝沢が自分から話してくれるようになるまで自分からは聞かず待とうと思った。
そんなことを考えていると屋上に人影が見えた。
目を疑った。
あれは滝沢だ。
なんで?
また?何か嫌なことがあったのか?
私の心臓は私の体の一部では無くなったかのように独立してどくどくと動いている。
はやく、滝沢の元に行かなければ。
走って屋上へ向かう途中、朱里と奈緒に止められる。
「すごい顔してどこ行くのー?珍しいねそんな顔してるの」
朱里が能天気にそんな話をしてきた。
「ごめん。お腹痛くて」
「あ、止めてごめん。先生には適当に説明しておくよ!」
かなり恥ずかしい嘘をついたがそれでも構わなかった。
1階から4階まで一気に駆け上がり、少し息が上がる。息を整える暇もなく、屋上の扉を開けて滝沢の肩を掴んだ。
自分でもびっくりするくらい怖い声で何をしようとしていたか聞いた。
滝沢はキョトンとした顔をして、ただサボっていだだけだと思った。
その言葉に嘘は無いことは分かる。
安堵したと同時に、自分の滝沢に対する過保護な意識に嫌気がさす。
なんで、滝沢のことになるとこんなにも自分のペースが乱れるのだろう…滝沢のことになると正気ではいられなくなる…
滝沢の無事が確認できたので体育に戻ることにした。
その日の放課後、私の家で例の勉強会が開かれた。
今日の滝沢はいつも以上に不機嫌そうだ。
いつも不機嫌そうな顔をしているが今日はそれが
私が屋上で厳しく声をかけたからだろうか、それともほかに理由があるのか聞けずにいたら、滝沢の命令を聞く時間になった。
最近、滝沢は指を舐めろと言ってくる。
全く意図がわからない。
分からないけれど、私に拒否権は無いのだ。彼女に言われたとおり、行動する。
滝沢は私に指を舐められて嫌じゃないのだろうか。
そんなことを考えつつ、彼女指を咥える。
おいしいわけではない滝沢の指は、細くてスベスベしている。そんな綺麗な彼女の指を私の口の中でドロドロとしたものと一緒に汚してしまう。申し訳ない気持ちと自分のしていることが嫌になり、いつものように笑えない。
滝沢の細い指が私の喉の深いところに触れた。
人間の体というものはしっかり出来ていて、異物が入れば吐き出そうとする。
私の体の受け付けられないところに滝沢の指が入る。
反射で咳が出る。
苦しい…痛い…
こんなことをして何が楽しいのかと滝沢見ると少し嬉しそうだ。
「変態」
その言葉が一番似合うだろう。
しかし、滝沢には全く響いていなくて気にする様子もない。
そのうち命に関わるような命令をされそうだ。
絶対にそんな命令聞けるわけが無い。
いや……
本当に拒否できるだろうか?
拒否しなければいけないのだ。
そんな簡単な答えも迷ってしまうあたり私も滝沢と大して変わらない変態なのかもしれない。
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