第20話 訪問

 結局、ちゃんと寝れずに朝になった。

 

 お父さんとお母さんにいつも通り挨拶をして家を出た。

 2人はいつもどおり、にこやかに私を見送ってくれる。都合のいいように考えているだけかもしれないが、昨日のことも許してくれてるように見える。


「今日も頑張るね」


 2人に挨拶をして家を出た。


 学校は歩いて30分くらいのところにある。

 近くは無いが交通機関を使わないと行けないほど遠くないので、いい所に入学できたと思う。


 学校が近くなると同じ制服の人が多くなる。その辺で立ち止まり、第1ボタンとネクタイを締める。


 滝沢と関わるようになってから、自分の身の回りに気を使うようになった。こんなのは私らしくないと思う。友達の奈緒と朱里にも急に真面目になってどうしたのかと、驚かれた。


 私は滝沢のことがもっと知りたい。


 滝沢は学年でトップの成績なのに、それでも勉強をし続ける。それにはきっとなにか理由があるのだと思う。勉強しなければいけない理由。どこか行きたい大学があるのかもしれないし、なにかしたいことがあるのかもしれない。


 そんな滝沢の邪魔をしたくない。


 けれど、もっと仲良くなりたいのだ。

 わがままかもしれないが、自分の気持ちを優先してしまう。だから、滝沢と関わっているところを見られても滝沢に悪い影響を与えないように関わると決めた。


 ネクタイをしっかり閉めると息苦しい。


 滝沢はよくこんな状態で勉強ができるなと関心する。


 校門に入ると奈緒と朱里の姿が見えた。


「よっ優等生ちゃん。今日も元気かい」


 朱里が明るい口調で話してきた。

 いつも通りかと言われると、いつも通りじゃない。土曜日に色々あって2日くらいしっかり寝れていない。


「今日も元気だよぉ」

 いつものように笑顔をつくる。


 滝沢に「その作り笑顔やめて」と言われたことを思い出す。


 私の笑顔は不自然だろうか。


 ちゃんと上手くできているだろうか。


 そんなことが不安になり、2人の顔色を伺う。


「いつも通り元気そうだね!それよりさー、日曜日デート行ったんだけど大輝と喧嘩してさぁ最悪だったぁ」

「その話、詳しく聞きたい!」

 そんなことを2人が話している。


 2人の声が遠くなる。


 笑顔、笑顔

 大丈夫…きっと上手くできてる。

 そんなことを心の中で唱える。



 放課後、2人にカフェに行こうと誘われたが部活があるので断った。断るのも大変で、断ると次は断った人が一緒に出かける場所を探さなければいけない。目的のない遊びは2人には許されない。

 滝沢と目的もなくフラっと街を歩くのは楽しかった。


 そういえば、、、今日滝沢を見ていない。

 舞も1人でいた気がする…


 放課後の部活の時間、舞に声をかけてみた。


「今日、珍しく舞が1人だった気がしたけど滝沢さんはどうしたの?」


「陽菜が星空に興味持つなんて雪でも降りそう」


 訝しげな顔で見られる。


「舞、1人で寂しそうだなーって思っただけ」


「わぁ、陽菜ちゃん優しい。天使」


 そんな茶番はいいから早く滝沢のことを教えて欲しい…


「今日、星空珍しく休んだんだよね。1年生の頃からサボりはあったけど、休んだことはなかったからびっくり。部活終わったら今日の宿題とか持ってくんだぁ。友達のことは大好きだが家が逆方向だから辛いぜ…」


 舞がふざけてそんなことを言っていた。


 本当に体調不良ならいいが。いや、体調不良は良くないが、もしかしたら休んだのは私のせいかもしれない。


 ため息がこぼれそうになる。


 あの話は滝沢が持ち出した話で、私はそれを受け入れただけだ。受け入れると思っていなかったのかもしれないけど…


「その宿題私持っていくよ。家近いし」


「え、いいの!?陽菜、今日ほんとに天使なんじゃないのぉ助かるよぉ!」


 滝沢の宿題やプリントを渡された。


 滝沢は私になんて会いたくないのかもしれないが、私は会いたいので今日ばかりは舞に感謝しようと思った。



 滝沢の家の前に着く。


 なんて言われるだろう…


 勝手に来たから嫌われるかもしれない。というか、なんで家知ってるのとか言われそうだ。

 いや、舞に教えてもらったって言えばいいか。


 一応、本当に風邪の可能性もあるので、スポーツドリンクやウォークインゼリー、おにぎりなんかを買ってきた。


 勇気を出してインターホンを押す。


「はーい?」

 高めの滝沢ではない人の声が聞こえた。


「あの、滝沢星空さん今日休んだのでプリントを届けに来ました」


「あぁ……」


 明らかにインターホンの先の女性の声のトーンが低くなった。


 玄関が空いて、滝沢にそっくりな女性がでてきた。


「2階にいるので」とだけ伝えられて滝沢の母親らしい人は姿を消した。

 どうやら私は歓迎されていないようだ。



 そういえば、滝沢は私に家族の話を1度もしたことが無い。私があまり聞かれたくないので詮索しなかったが、もう少し色々聞いとくべきだった。もしかしたら、滝沢のお母さんが苦手なことや嫌なことを私がしてしまったのかもしれない。次から気をつけようと反省する。


 部屋の前には『星空』と『真夜』と名前の書かれた札がかかっている。


 滝沢の部屋をノックした。


 返事は無い。


 寝ているのだろうか。


 もう一度強くノックした。


 出ない……


 プリントを部屋の前に置いて帰ろうとした時に扉が空いた。


 滝沢と目が合う。


 学校に来ていないはずなのに制服を着ていた。


「なんで、遠藤さんがここにいるの」

 すごい不機嫌そうな声だ。


「プリン届けに来た」

 そう告げると下から物音がして、滝沢の肩に力が入ったように見えた。


「1回中入って」

 私は滝沢に指示されるままに部屋に入る。




 滝沢の部屋は簡単に言うと必要なもの以外何も無い部屋だ。

 学校の教科書、参考書が並べられた勉強用机。

 厚みのあるマットレスがひかれたベット。

 小説なんかが並べられてる本棚。

 部屋の真ん中には小さな机が置いてあり、参考書が開かれている。


 それ以外は何も無い。失礼だが、とても女子高生の部屋とは思えない。



 滝沢は黙ったままだ。


 なにか話そうと思って口を開いたら、それを遮るように滝沢が声をかけてきた。

 



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 最後まで読んでいたたぎありがとうございます!

 放課後、友達の家に宿題のプリントとか届けたかったタイプの人間です!やんちゃすぎて先生に不安だから任せられないと言われたことありますがw


 読者さんに読んでいただけたり、作品フォローしていただけたりすることがいつもモチベになってます!


 評価いただけると泣いて喜びます、、、


 連載中の作品も他にあるので、時間ある時に覗いてもらえると嬉しいです!


 今後もよろしくお願いします!

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