第15話 《おまけ》再会 ⑴
黄色いハンカチを見つめる。
今日から高校生活が始まる。
一歩大人になったと思いつつ、あと三年間は高校生活を送らなければいけないという憂鬱な気持ちもある。
今日も黄色いハンカチに唇を優しく当てて家を出た。
ハンカチを渡してくれた少女に未だに会えない。
ただ、あの時のお礼をしたい。
もう一度だけでいいから、会いたい。
公園であったその少女は綺麗な黒髪の少女だった。肩に髪がかかるくらいの長さで、私より身長は少し低めだ。その日、部屋着のような格好をしていたから、近くに住んでいるのではないかと家の近くの店に行く時は周りを見ながら歩いていたが、一度も見たことはない。
やっぱり、家が近いという訳では無さそうだ。
入学式の日。
親と校門の前で写真を撮ったり、友達と歩いたりしている人がいる。もう友達ができたのかと感心して歩いていたら、目の前に大きな桜の木が現れた。
吸い込まれるようにその桜に近づく。
桜の木の下に一人の少女が居た。
スマホの画面を上に向けて桜を撮影している。
パシャリ
その子は写真を見返して少し微笑んでいた。
こっちに振り向いた時に、心臓が飛び出そうなほど勢いよくドクンッと鳴る。
公園で会った黒髪の少女……?
なにかの見間違いだと思い、目を擦るがそこには確かにあの夜、私にハンカチを渡してくれた少女が居た。
声をかけなければ……声をかけたいのに体が動かない。
綺麗な黒髪と綺麗な横顔。
桜が見劣りするくらい綺麗だった。
動けなくなって、何分経っただろう。
その少女はもう居なくなっていた。
でも、この高校にあの子はいる。
あんなに憂鬱だった高校生活に少しだけ希望の光が差した瞬間だった。
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