第7話:先客あり。

俺は裏社会の連中の闇取引の当日の真夜中、バイク屋で借りてきたバイクにネルを

乗せての現場に向かった。

まあ、取引が行われるのはまず真昼間ってことはない。


現場はたくさん建ってる港の倉庫街の、もう使われていない倉庫内。

Mが言った倉庫の目印は倉庫の入り口の上の壁に「三田村商会」って書いて

あるってことだった。


倉庫の勝手口には鍵がかかっていなくて、簡単に中に入れそうだった。


ネルと中に入ろうとしたら、向こうから車のライトが・・・。

見ると、一台の黒いワーゲンがやって来るのが見えた。

倉庫街のライトがいくつか点灯していたから夜でもよく分かった。


ワーゲンは倉庫の少し向こう側の岸壁に止まると中から一人の男が出てきた。

その男が倉庫に近ずいて着たので、俺とネルは倉庫の横の隙間に隠れた。

今、入った男も裏社会の組織の一員なんだろうか?


俺たちも後に続こうと思ったら、また向こうからなにやらバイクの男が

聞こえてきた。

いや、あの甲高い音はスクーターだ・・・しかもベスパ?・・・レトロそうな

ベスパを運転してるのは女の子。


派手なメイドの衣装を着た子だった。

で、メイドの女の子だけかと思ったら、ベスパの後ろに男性が乗っていた。

俺とあまり変わらなそうなニイちゃん。


メイドさんとニイちゃんが乗ったベスパはそのまま倉庫の前を通りすぎて

止まるとベスパから急いで降りて来て、さっきの男と同じように勝手口から

倉庫の中に入って行った。


いったいどうなってる?

あんなに若い二人組が裏社会の組織の一員か?


「ツッキーなんか変じゃない?」


「そうだな、ちょっと状況が違う気がするな」

「これってただの闇取引とかじゃないんじゃないか?」

「でもまあ、いいや・・俺たちは詳細を見届けて頃合いを見計らって警察に

連絡すればいいだけなんだだから・・・」

「俺たちも中に入ろう」


って勝手口から入ろうとしたら、一人、デカそうなおっさんと鉢合わせになった。


「なんだ、おまえら・・・」


「ヤバ・・・ネル下がれ・・・後ろに下がって」


「どうしたの?ツッキー」


「見つかったみたいだ」


そいつは外に小便でもしようと出てきたところだったんだろう。

面倒臭いことになった。

そいつは俺とネルを捕まえようと外に出てきた。


「おまえら、ここでなにやってる?・・・ちょっとこ・・・」


って男が最後までしゃべり終わらないうちに勝手口の横にぶっ倒れた。

俺はなにが起きたか分からず右往左往していた。


「ツッキー片付いたよ」


ネルがそう言った。


「え、こいつ、ひとりでぶっ倒れたぞ?」


「違うよ、私がやっつけちゃったの」


え?・・・・ネルが?、おまえが倒したのか?」


「そうだよ」


「なんで?」


「分かんないけど・・・自然に体が反応するみたい」

「さ、中に入ろう?」


「まじで?」


驚きだな・・・ネルだろ?・・・・なんでよ、なんで強いんだ?


首を傾げながら倉庫の中に入ったと同時くらいにピストルを撃ったみたいな

音がした。

その模様が、こっちからも見えた。


そしたらさっきのメイドの女の子が見張り役だろう男をふたり、あっと

言う間に倒した。

めっちゃ強いメイド。

あんな子見たことないけど・・・。


ネルと言い、あのメイドの子といい・・・最近の女は強いんだな。


「ツッキーあまり奥まで入らないほうがいいよ」

「勝手口まで戻って様子見よ」


ネルにそう言われたから俺とネルは勝手口まで下がって様子を見ることにした。

なんかの取引って様子じゃない気がした。

それから15分くらいしてからだろうか?

ワーゲンの男とめちゃ強いメイドさんとベスパの後ろに乗っていたニイちゃん。

それと老人らしき人が奥から出てきた。


で、ワーゲンに乗ってきた男がどこかに電話をしていた。

話し声を聞いてると、どうやら相手は警察みたいだった。

なんだよ、俺より先に警察に連絡されちゃ俺の仕事がなくなるじゃないかよ。


それは俺のバイトだからって出て行くわけにもいかないし・・・。

それになにより俺たちは警察が来る前に逃げなきゃ。


「ネル帰るぞ・・・さっき見たことをジャンクショップのMに報告だけでも

しとかなきゃ・・・報酬もられないからな」

なもんで、俺はまたネルをバイクに乗せてジャンクショップに向かった。


たしかに何かの闇取引なんかじゃない。

もっと複雑なことが起きてる気がした。


つづく。

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