第6話:私も一緒に行く。

暗狩さんからの紹介で来たって言ったら今、丁度控えてるバイトがあるから

やってみるかって言われた。

だけど失敗したら命の保証はないんだって・・・。

命の保証がないって・・・いったいなにやらされるんだよ?


で、バイトの内容はこうだった。


なんでもライバルの裏社会の連中のヤバい取引を阻止してくれってことだった。

現場に侵入して取引が終わる前に警察にチクるってセコ〜い仕事。

連中に気付かれないようにして、警察が来て全員一斉に検挙されるのを見届けたら帰っていいらしい。


それなら俺でもできる・・・まあ、正当なバイトじゃないけど警察の

お世話にることもなさそうだし・・・。

裏社会の連中に見つかんなきゃいいんだろ?

だから俺はバイトを引き受けて、取引の場所と日時を「M」に聞いて帰ってきた。


ジャンクショップの「M」に俺は信用されてないだろう。

試しに俺が使い物なるかどうか見てみようって魂胆に違いない。

そりゃそうだよな、まあそれが普通だろう。


で、アパートに帰って、バイトの件をネルに黙っておく訳にもいかないから

新しいバイトのことを話した・・・そしたら、怒られた。


約束やぶった訳じゃないからいいだろって言ったら


「そのバイト、前のバイトと、目クソ鼻クソだよ」


って言われた。


「要は警察に捕まんなきゃいいんだろ?」


「どっちにしてもヤバいバイトじゃない」

「そんなお仕事ばっか引き受けてたらいつか死んじゃうよ」


「まあな、やつらに見つかったらたぶん、コンクリート抱かされて岸壁から

ダイブだろうな」


「なに自慢げに言ってるの・・・断って来て・・・そのバイト」


「今更断れないよ・・・そんなことしたら信用されなくなるだろ?」

「頼まれた仕事は最後まで責任もってやる、それが俺のポリシー」


「ポリシーなんていらないから・・・」


「分かった・・・断れないお仕事なら、今回は私も一緒に行く」


「なに言ってんの・・・それこそ危険だし・・・だいいち足手まといだよ」


「連れて行かないつもり?」


「あたりまえだろ?」


「トッキーだけ海には沈ませない・・・その時は私も一緒に海に沈むから」


「まだ海に沈むって決まったわけじゃないだろ?」


「私は、いつでもどこでもツッキーと一緒がいいの」

「ほんとはバイク屋さんもバイトもついて行きたいくらいなんだからね」


「ストーカーか?」

「はいはい・・・分かった」

「だけど、ヤバくなりそうになったらすぐ逃げるからな」


「毎回、おまえを連れてなんてバイトできないわ」

「もし、今回無事にこなせたら、俺この手のバイトから足洗うわ」


「俺はいいけど、ネルにもしものことがあったら俺生きて行けないから」

「私だって同じだよ・・・トッキーがいなくなったら私だって生きていけないもん」


「だな・・・平和が一番だな」


って訳で、俺は裏社会の連中の取引の当日の夜、バイク屋で借りてきたバイクに

ネルを乗せての取引現場に向かった。

まあ、取引が行われるのは決まって夜中。


現場はたくさん建ってる港の倉庫街の、もう使われていない倉庫。

目標は倉庫の入り口の上の壁に「三田村商会」って書いてあるらしい。


つづく。



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