第5話:ネルとのルーティーンと俺の新しいバイト。

「な、なんだこの女」

「お、おまえ人間じゃないだろ?」


「ガイノイドですぅ」


「ガイノイドだと・・・なんだよそれを先に言えよ・・・」

「女だからってガイノイド相手に俺たちが敵う訳ないだろ、バカ野郎」


「あの、私の彼の無実・・・」


「分かった、分かった・・・証明してやるよ」

「だから、もうとっとと帰れ!!」

「なにも触るなよ」


「じゃ〜お願いします・・・もし彼が釈放されなかったら、また事務所に

乗り込んできますからね」

「私の言うこと聞いてくれないと、そこの壁に張り付いてる人みたいに

なって病院送りになりますよ」


愛する人のためならハッタリだってカマそうって勢いのネル。

そう言い残してネルは事務所から出た。


ビルの外に出たネルはその場にしゃがみこんだ。


「え〜ん・・怖かったよぅ」


男を投げ飛ばすくらい強かったネルの義体は実は普通の義体じゃなかったらしい。

戦闘用だったみたいで、事務所で男を投げ飛ばしたのは反射的に体が動いた

からだった・・・条件反射ってやつ。

ネルの義体は軍の払い下げとして中古ショップに流れてたみたいだね。


そんなこと知らない俺は気に入ったラインの体を選んだだけなんだけど・・・。

ってことで、今後ネルに喧嘩を売ろうってやつはみんな病院送りだな。


それから二・三日後、俺は釈放されて、警察にネルが迎えに来ていた。


「トッキーよかった、釈放されて・・・」


「悪かったな、ネル・・・ネルのおかげだ、ごめんよ心配かけて」


「もういいよ・・・トッキーさあ帰ろう?」

「もう、危ないバイトはやめてね・・・私のためにやめて」

「しないって約束して・・・約束させないとまたやるでしょ?」


「分かった、約束する・・・人に後ろ指指されないようなバイト選ぶよ」

「ごめんな・・・この埋め合わせはたっぷりするから・・・家に帰ってから」


「エンドレスでお願い」


「まじで?・・・俺を殺すつもり?」


「分かった死なない程度に加減する」


次の朝、俺が生きてるってことは、手加減してくれたってことだよな。

そうは思えないくらい激しかったけどな。


そんなことばっかしてると俺はまじ死ぬって思ったからネルとのセックスを

土曜日だけにしてくれって彼女に交渉してみた。

ネルは一週間もなしなんて我慢できないって言った。

おまえはいいわ、疲れなんか知らないんだから・・・。


「だから平日は俺はどうしても疲れるから、ネルを抱いても気が入らないんだ」

「そうなると楽しみ半減しちゃうだろ?」

「最初の頃みたいにはいかないよ」


「もしかして・・・トッキー私に飽きてる?」


「そうじゃないけど、飽きるってんじゃなくてどんなもんにでも慣れって

ものが来るだろ?」

「いつまでも新鮮を保つことなんて無理だから・・・」


「だから土曜日から次の土曜日まで間隔を開けようって言ってるの」

「土曜日ならさ、俺も仕事もバイトも休みだし・・・で次は日曜日だろ」

「だから土曜日なら元気だしネルを満足させてやることだってできると

思うし・・・」

「それっていい提案だと思わないか?」


「それってトッキーの都合だよね」

「そうだよ・・・悪いか?・・・なあ、俺のためだと思って賛成してくれ」

「ほんとまじで、俺の体が持たないの」

「俺はおまえと違って生身の人間なの、分かってる?」


「しょうがないね・・・じゃ〜その間に自分でお一人様するから・・・」


「こら・・・それじゃ土曜日まで我慢する意味がないだろ?」

「土曜日は丹精込めてちゃんとネルをケアするから・・・」


「手抜きなしって条件でオッケーしてあげる」


それ以降、土曜日にセックスは俺とネルのルーティーンになった。

そうなってみると、それが普通になっていくもの。


で、次の問題・・・俺はネルとの約束があるから、もうヤバげなバイトはできない。

だから今度は多少ヤバくても警察に捕まらないバイトを探すことに決めた。


今のバイトの斡旋業者の上の人間に「暗狩 闇男くらがり やみお」って

男がいて、まあこいつ自体、怪しいんだけどな。

で、暗狩に頼んで、ヤバくなくて金になるバイトがないか聞いてみた。

そしたら一軒のジャンクショップを紹介された。


倉庫街の端っこにある軽量鉄骨にスレート引きの怪しげな店。

店のオーナーは初老の紳士で、見た目以外とまともな感じがした。

だけどそれは見せかけだろう・・・こんな店やってるくらいだから裏社会とも

繋がっているんだろうな。

初老のじいさんは自分のことを「M」って名乗った。


で、カウンターの上に不愛想な猫が一匹鎮座してて俺のほう見てニャ〜って

鳴いた。

その猫の名前は「Q」って言うんだそうだ。

なんだよ旧時代の007じゃないかよ。


このぶんだと結局、俺はまた裏業者に関わるバイトをする羽目になるのか?

ネルが聞いたらエッチさせてくれなくなるぞ。


暗狩さんからの紹介で来たって言ったら今、丁度控えてるバイトがあるから

やるかって言われた。

だけど失敗したら命の保証はないんだって・・・。


つづく。


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