第2話:ネルの義体化。

俺のところにやって来たホログラムのネル。

自動にしておいたら次の日からさっそく朝、俺を起こしに来た。


「トッキー朝だよ・・・お〜き〜て〜」


普段なら目が覚めても布団の中でゴロゴロしてるんだけど、今朝は

ネルの心くすぐる甘い声で起きてしまった。

そんなもんだろう・・・なんだろうね、この豊かな時間は?

心の中がキューって締め付けられてこそばゆくなる。


家の中に女っ気があるって、こんなに違うんだ。

ホログラムとはいえ、この効果は俺には絶大だな。

俺は毎日が楽しくてしょうがなかった。

ネルがいたら頑張れそうだ。

だから仕事にも気合が入るしバイトも率先してやった。


家に帰ってくるのが楽しくてしょうがなかった。

そうして俺とネルの毎日がはじまった。


ただ・・・ただホログラムの欠点は実態がないから料理を作ってもらえない。

掃除洗濯もできない、触ることもできないし、ハグもチューもできない。

話し相手にはなってくれるけど・・・。

せめて触れることができたらなって贅沢な悩みが出始めた。


だから当然セックスもできないってことだ。

ネルはホログラムだけど、一応性に関する知識があるみたいで最近、俺と

セックスをしたがる。

できもしないのに、すぐ「エッチしよ!」って言う。

起きてる時も寝る時も。


逆に俺が欲求を満たしたかったらネルが言ったように風俗へ行くか、はたまた

セクサロイドを手に入れるしかない。

ゲットするなら普通のガイノイドではセックスはできないからセクサロイドって

ことになる。

だけど、もうネルと俺は精神的に繋がってる。

ネルを手放して新しいセクサロイドをゲットしようって気にはならない。


そう、だからネルを実体化することがベストなことだと俺は思った。


そこで頑張って稼いで貯めた金とローンを組んでネルのAIをセクサロイドに

移植してもらうことにした。


で、ガイノイドやセクサロイドの中古を扱ってる店に行ってみた。

ホログラムのAIは義体の脳に移すことができるって話だったから迷わず

頼むことにした。

セクサロイドの顔はホログラムの時のネルとそっくりにしてもらった。


一週間後店から連絡が入ったから俺はウハウハでネルを引き取りに行った。


だから今、俺のアパートにいるネルはちゃんと実体化して肉体を持っている。


「エッチ、エッチ、エッチ〜・・・トッキーエッチしようよ〜」


ってネルはセックスができるって喜んだ。

だけど、最初はそうはうまくはいかなかった。

まあ、人間のセックスと同じで最初はちょっと苦労させられた、いろいろとね。

ネルはセックスの仕方は知ってる・・・でもネルにとってははじめての経験。

思い描いてたようにはいかない。


「トッキー・・・なにも感じない」


ってネルに言われた・・・そんなこと言われたって・・・。

俺のせいじゃないし・・・。


「回数をこなしたら、そのうちそう言う体になってくから・・・」


って誤魔化した。

まあ、それでもネルは俺とひとつになれたことを喜んだ。


もとはホログラムだったけどネルは実体化してより人間っぽくなった。

以前は通り抜けていたタンスやテーブルも実体化したことで普通にブチあたるし、

つまずくし、天袋で頭は打つし、よくコケそうになるしでドジで間抜けで天然。

がより目立ってきた。

料理も作れるようになってよかった〜って思ってたら何枚割ったんだろう?

ってくらい皿が減っていく。


喜怒哀楽もちゃんとあるから泣いたりスネたりする、だから俺を困らせて、

笑わせてくれる。

ただ人間の女性みたいにヒステリックになったり激怒したりはしないから

いい。

たぶんロボットに三原則があるようにネルもそうプログラムされてるんだろう。


そんな訳で人間じゃないネルを俺はどっぷり愛しちゃってる。

ネルも俺を愛してる。

まさにベストカップル。


なんだけど義体を手に入れたことでネルからクレームを言われることもある。

でなんてクレームかって言うと・・・。


「おっぱいが大きすぎる・・・重いし、邪魔だし・・・」


って言われる。

ネルの義体は俺が勝手に俺の好みの体を選んだからな。


「な、こと言ったって、それって贅沢ってもんだよ」

「貧乳で悩んでる人もいるんだよ」

「欲しいものほど手に入らずって言うだろ?」


「欲しい訳じゃないです」

「モノにはほどほどってもんがあるでしょ?」


「んなこと言われたって・・・じゃ〜ほどよい大きさのおっぱいの義体に

交換するしかないじゃん」

「だけど金銭的にそんな余裕ないよ・・・ローンだって残ってるし」

「かと言ってホログラムに戻りたくないだろ?」


「だって・・・、足元だって見えないし・・・いっそ、おっぱい

モギ取っちゃおうかな・・・どうせシリコンだし」


「なに言ってんの・・・そんなことしたら俺の楽しみがなくなっちゃうだろ?」

「あのさ、おっぱい大きいほうが乳ガンチエックの時、便利なんだってよ」


「それはちょっと違うと思うけど・・・」

「だって、私人間じゃないから・・・乳ガンなんてならないもん」

「チェックなんてしないもん」


「病気になんてならないほうがいいんだよ」


「だから、ならないってば!!」

「なんか誤魔化そうとしてる?」


「いやいや、彼氏として心配してるだけ・・・」


つづく。


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