第157話 ランニングしながら談笑②


「海は表情豊かな方が、俺は好きだぞ。海の笑顔は可愛いからな!」


「……柔らかいケツバットにしといてあげる」


「無くなりはしないんだな……」


「そんなことより景色楽しも! ほら! 今度はお花畑ゾーンだよ!」


 しばらく走っていると川は見えなくなり、変わりに両サイドを花畑で挟まれた道にやってきた。

 色とりどりの花は傍を通る人たちを和ませてくれる。


「色々咲いてますね〜。ツツジ、クレマチス、アネモネ、ライラック……本当に色々ですね」


「桜姉って花に詳しいんだな?」


「多少ですよ。淑女の嗜みです」


「嗜みか。んで、この辺で半分くらいか?」


「そうだね。疲れてきた?」


「いや、まだ大丈夫だ。ただ1週したら休憩挟みたいな」


「わかった! 近くに自販機あったかな?」


「ちょっと離れた場所に自販機あったよ! もう疲れてきたユッキー?」


 桜と会話していると愛羅も参加してきた。


「いや、1周したら休憩したいって話をしてたんだ」


「あーね!」


「にしても、よく知ってたな。この公園のこと」


「まぁね! あーしのバイト先の人がこの辺走るらしくて、ちょー綺麗になったから行ってみって言われてさ」


「そういう繋がりなのか。愛羅はほんと顔が広いな」


「にしし、まぁね!」


「バイトってファッションモデルだったよな? ここから近いのか?」


「事務所はね。だいたい現場に行って撮影するから、あんま行かないけど」


「へぇ……んっ? ってことは愛羅って雑誌に載ってるのか?」


「載ってるよ?」


「まじかよ! 有名人みたいなもんじゃん!」


「そこまではないと思うけど、町中で声はかけられるね」


「普通は声とかかけられねぇよ」


「ユッキーはかけられるっしょ」


「……そうだな? 俺も有名人なのか」


「仲間じゃん!」


「なまかだったわ」


「なまかなまか!」


「なんで2人が話すと漫才みたいになるんですか? ツッコミがいないようですけど」


 会話に置いてけぼりの桜が怪訝な顔をして俺と愛羅を見ている。


「ダチ公だからな」

「マブダチだからね!」


「友情ですか……愛羅ちゃん、雪君を狙ってる訳じゃないんですよね?」


「なんでもかんでも恋愛に捉えるのは良くないよサクサク」

「普通に会話してるだけだろ?」


「普通男性とそんな会話聞くことありませんし、男女で友情は成り立つんですか?」


「成り立つっしょ」

「だな。別に性別なんて問題ないだろ」


「そういうものなんでしょうか……」


 そんな会話をしながらお花畑ゾーンを走っていると終わりが見えてきた。

 お花畑畑ゾーンを過ぎたら今度は、木々が大きく育ち、伸びた葉がまるでアーチのようになって太陽の光を遮り、涼し気なゾーンに突入した。

 葉と葉の隙間から溢れる日の光が道を照らしてくれている。


「ここは涼し気なゾーンだな」


「そうね。夏でもここは少し涼しそうね。ベンチも所々あるからそういうことでしょう」


 今度は時雨が俺の隣に並んで走ってくる。


「だな。こういう場所もデートで使えそうだよな。ここのベンチに座って弁当広げて食べるのも雰囲気があっていいと思う」


「それもありね。ただ、あそこにキッチンカーがあるでしょ? あそこで買ってここで食べるんじゃないかしらみんな。ほら、あっちは何か持って食べてるし」


 時雨が指指した方向には確かにキッチンカーが停まっていた。

 何が売ってるんだろうか?

 ああいうキッチンカーの料理ってけっこう美味しい物が多いんだよな。

 時雨が指差したベンチの方では女の子2人が何かを持って談笑しながら食べている。

 昼メシ食べたいあとだけど……気になる!


「あとで行ってみないか?」


「さっきお昼食べたのにまた食べるの?」


「キッチンカーってワクワクしないか?」


「しないわよ」


「俺の中でキッチンカーで売ってる物って、なんかすげぇ美味そうな気がするんだよな」


「ふーん? まぁ、いいけど。夜の高級寿司が入らなくなっても知らないわよ?」


「さり気なく高級寿司にグレートアップするなよ!」


「ほら、残り走るわよ。休憩する時に行ってみましょ」


「すげぇ、話題転換するじゃん」


「何のことかしら?」


「回るところで許してくれよ? 流石にこの人数高級寿司奢るとか高すぎるからな」


「全員に奢るつもりなの? 愛羅だけじゃなくて」


「全員分俺が出すぞ。普段世話になってるからな」


「愛羅にだけ出すと思っていたわ」


「そんな訳ないだろ。だから安心してお腹いっぱい食べてくれ」


「そうね。ネタを大きくしてもらうようにするわ」


「回転寿司でネタの大きさとか指定できないからな?」


 そんな下らない会話をしながら走り続けていると、最初の場所まで戻ってきた。


「ふぅ〜……久しぶりにこんなに走ったな」


「お兄ちゃん飲み物買ってくるね」

「おう、俺の分も頼むわ」


「さっきのキッチンカーに売ってるんじゃないかしら」

「確かに、そっちで皆で見るか」

「えぇ」


「雪君、はい、タオル!」

「ありがとう、桜姉」

「頑張ったね雪君、いいこいいこ!」


「どうだったユッキー」

「最高だった!」

「にしし! でしょ!」


 久しぶりにこんなに走って気持ちよかったのもあるが、景色のおかげで楽しくランニングすることが出来た。


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