第156話 ランニングしながら談笑①


 なんやかんやあって、休憩施設で昼食を食べたあと、ジャージに着替えて休憩所を後にした。

 なお、鞄なんかの荷物は受付の人に俺が少しだけ預かっててもらえないかお願いしたら、快く引き受けてくれた。


 そして、公園に向かって向かって歩くこと10分―――


「おぉ、ここか?」


 公園と思われる場所が見えてきた。


「多分そう! まだここ公園の端だから入口はまだ先!」


 そう愛羅が言って歩みを止めないので、そのまま付いて行き、5分程歩くと入口が見えてきた。


「結構広そうだな?」


「でしょ! ペースに寄るけど、1週走るのに30分位掛かるって!」


「へぇー。景色もいいんだろ?」


「らしいよ!」


「楽しみだ」


 そう言って俺たちは公園の中に足を踏み入れた。

 公園は大通りに面した側は木々が生茂り、イマイチ全容が見えなかったが、入口を過ぎると中はまるで別世界のような光景だった。


 舗装された道は美しく、横は芝生が広がっており、子供達がボールを投げて遊んでいる。

 近くにはレジャーシートを引いてお母さん達が談笑しながら見守っていて微笑ましい光景だ。


 そんな光景を眺めながら、俺たちは公園の中央へ歩みを進めていく。


 そして中央に行くと公園らしく遊具が設置されており、近くにはこの公園の案内板があった。


「こんなに広いのね。それで? この公園の外周をグルっと走るの?」


 時雨が案内板を見ながら愛羅に問いかける。


「そそ! ここの道からこう回って、ここから戻ってくんの」


 愛羅が案内板の地図の道をなぞりながら説明してくれたが、なかなか距離がありそうだ。


「わかったわ。雪、すぐ走る?」


「いや、軽く準備運動してからだな」


「そ、なら、始めましょ」


 そう言って各々が準備運動を始める。

 上半身は軽くでいいから足を中心に準備運動をすること数分、十分にほぐし終わり―――


「そろそろ行きますか?」


 準備が出来た桜が問いかけてきた。


「そうだな」


「行こうお兄ちゃん!」

「行きましょ」

「景色いいらしいからゆっくり目でね!」


「おう!」


 そう答えて、俺たち一行は走り始めた。

 まずは外周に向かって西に走り、そこからグルっと回って更に半周回って東からここに帰ってくるルートだ。

 けっこうゆっくり目のペースで無理なく走る。

 外周に側に向かって走っていくまでにも、噴水や花畑などを横目にしながら走っていく。

 そして外周に到達したら突き当たりを右……北方面に走っていく。

 通路は走りやすいように小石がなく、綺麗に舗装され遠くに同じ様に走っている人が見える。

 北側には川が流れており、その横を走っていくが横目で川を見ると、水面は太陽の日差しを反射して光るほど澄んでおり、種類はわからないが魚も泳いでいる。


「綺麗だな」


「だねー、お兄ちゃんペースは大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だ」


「さっきあれだけベッドで動いてたのに元気だね?」


「時雨や桜が動いてくれたからな」


「3回も出して直ぐにランニングなんて普通に考えたら、異常なんだけどね」


「直ぐって言っても、シャワー浴びて昼飯食って十分に休んだけどな」


「お兄ちゃんの世界ではそれが普通なの?」


「普通かどうかと言われても困るけど……常識の範囲内じゃないか?」


「お兄ちゃんの世界絶倫の民しかいないの?」


「そんな訳ないだろ! 絶倫の民ハードル低すぎるわ」


「下級の絶倫の民位はありそうだけどね」


「なんだよ下級って、新しい要素を入れてくるなよ」


「そんなこと私に言われても……作者に言ってよ」


「下級、中級、上級って階級があって、主人公は特級だったりするのか?」


「よくわかったね? お兄ちゃんも読んでたの?」


「適当に言っただけなんだがな……というか、エロ本なのに無駄にストーリー性あるんだな」


「そうだねー。だいたいヒロインを賭けて、どれだけビル爆発出来るか勝負してるからね」


「バトル漫画かよ」


「半分そうだと思うよ」


「……というか、綺麗な景色見ながらランニングする時の会話じゃないよな?」


「別に景色とか興味ないから」


「景色はそうでも、なんかこう……その辺を走るのとは違って、風を感じるとかマイナスイオンを感じるとかないのか?」


「風は風じゃないの? マイナスイオンって言われてもわかんなくない? お兄ちゃんはマイナスイオンとか感じるの?」


「俺もわかんねぇわ」


「だよね」


「だがこう……なんかないのか? せっかくいい場所で走ってるんだぞ?」


「私はどこで走るかよりも誰と走るかが大事かな。仲が良くない人と走っても苦痛なだけだし」


「一理あるな」


「でしょ?」


「あぁ。けど、仲が良い人と綺麗な景色見ながら走れば、景色の感想を言い合えてよりいいんじゃないか?」


「んー、って言われてもねー」


「海にそういうこと求めても無駄よ」

「海ちゃんサバサバしてますね?」

「ウミウミってあっさりしてんね」


 俺と海がしゃべりながら走っていたら周りに時雨と桜と愛羅も寄ってきた。


「海はほとんどのこと興味ないから、そういう話題は聞くだけ無駄よ」

「海ちゃんのことまだあんまり知らないけど、前の雪君の時どうしてたんですか?」

「基本無表情よ。前の雪と会う時だけ、ニコニコ愛想よくしてたくらいね」

「ウミウミってけっこう極端なんだ?」

「海ちゃんどっちが素なんですか?」


「どっちも私」


「俺はその無表情の海を見たことないんだよな。出会った頃は泣いてばっかだったし」


「お兄ちゃん! 余計な事言わないで!」


「そうね。雪が居なくなるかもって時はガチ泣きしてたし、実際は表情豊かなんでしょうね」

「へぇー、ウミウミってけっこう泣くんだ」

「表情豊かだと思ってましたけど、そういう一面もあるんですねぇ」


「……お兄ちゃんあとでタイキック」


「どいひー……」


「タイキックはどいひーだよ、ウミウミ」

「本当のこと言ってるだけなのに、雪がタイキックは確かにどいひーね」

「年末の番組みたいな発言するってことはTVとかは見てるんですね」


「……お兄ちゃんが何に興味があるかわからなかったから、有名な物くらいは見とかないとお兄ちゃんと会話できないって思ったから」


 海は当時のことを思い出しているのか、無表情になってしまった。


★********★

ちょっと切り悪いけど、今回はこのへんで。


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