第150話 やられ放題 → ハーフタイム
一本取返し、相手のターン。
どうにかインターセプトして攻めに転じたいが、流石に俺以外がやるのは難しいだろう。
相手選手はこちらのマークを易々と剥がし、パスを回してこちらの陣地に攻め込んでくる。
バスケ部の先輩がボールを持ってゴール下からレイアップシュート―――
身長が高い桜と清香でゴール下を守ってもらっていたが、それがどうした? と言わんばかりに、華麗にシュートが入る。
「ごめん、雪君!」
「申し訳ございません」
「気にするな! 取り返していこう!」
そのあと、各々が出来る限りの力を尽くすが、点差がジリジリと広がっていく。
俺自身も少しずつ感覚を取り戻しているが、それを待ってはくれない。
こちらが1度点を取ると相手は2度点を取ってくる感じだ。
「ふっ!」
パスッ
そして、また相手のシュートが決まり点差が広がった。
現在6対16。
ボールを回してもらい、果敢に攻める。
と言っても、俺はスリーポイントシューターなので中にまでは攻め込まない。
中のに入るのはアグレッシブな動きが必要だし、自陣に戻る時一番距離があるので、体力に自信がある時雨と愛羅に任せている。
相手のスリーポイント近くまでに移動するが、パスを回せるようにフェイントを掛けながら動き回る。
隙をみて愛羅にパスを回し、愛羅がシュートをするが―――
ガンッ!
バックボードに当たり、地面へと落下していく。
ただ、今回は運良く時雨の方に落ちてきたので時雨がキャッチした。
時雨はキャッチしたが囲まれているのでシュートはせず、俺にパスを回してきた。
スリーポイントラインの外にいた俺は、そのままシュートをするが―――
ガンッ!
リングに弾かれてしまった。
ハズレはしたが、距離感は掴めてきた。
今の距離でシュートするなら、もう少し力を入れて山なりにシュートするようにしないとダメだ。
以前はどれぐらいの力で打ってた? どのぐらいの角度だった? もう少し、もう少し―――
**********
<SIDE 愛羅>
うがあああああああああああ!!
うまく入んないし!
中学の時はもう少し入ってたと思うんだけどなー
あーしが完全に足引っ張ってるよね?
シュートは外すし、ボール取られるで良いとこ無し……
あーしもボールを取ろうとボールを目で追って隙をつくけど、取らせてくんない!
試合が進んで、現在8対20。
流石に勝つのは厳しいっしょ。
っていうか、バリバリ現役のバスケ部員相手に勝つっていう方が無理な話なんだけどね。
運が絡むならまだしも、実力がモロに出るバスケなんだから、仕方ないか。
でも……ユッキーの顔はまだ諦めては無さそうなんだよね。
なんとなくだけど。
ビーーーーー
第1クォーターが終わってしまった。
適当に端に寄って休むかと思えば、いつの間にかにパイプ椅子が並んでて、傍にはさんちゃんとミッチーがいる。
「皆さんお疲れ様です。タオルをどうぞ」
「我が水を用意しておいた。ゆっくり味わうのだぞ?」
試合に出てない2人はマネージャーみたいな振る舞いをしてる。
さんちゃんからタオルを受け取って汗を拭いたあと、ミッチーから水を渡されて喉を潤す。
あーしは体力に自信があるからまだ行けるけど、あの感じだとみんなは―――あれ?
肩で息してると思ってたのに意外としてない?
「意外とみんな疲れてない?」
「そうね」
「そうですね」
「問題ありません」
シグシグとサクサクとキヨっちは何の問題も無さそうだけど、ユッキーはタオルを頭から被り、ゆっくりと深呼吸をしている。
「ユッキー、だいじょ「しっ!」モガっ?」
心配になって話しかけたのにあーしの口はシグシグに防がれた。
「そっとしておきなさい」
シグシグが小声で注意してくるから、あーしも小声で聞き返す。
「なんで?」
「雪が集中してるからよ」
タオルを被ってるから表情は見えないけど、シグシグが言うならそうなのかな?
「それよりも愛羅ちゃん。次は全力ですよ?」
……え?
「あ、あーし、ずっと全力だったんだけど」
「体力が持つならそれでもいいですよ」
「愛羅様、次は御主人様を全力でフォローして下さい」
キヨっちはキヨっちで指示してきてる。
「どゆこと?」
「恐らくですが、前半は準備運動、後半全力で攻めると言った感じでしょうか」
「準備運動というより、昔を思い出してるんでしょ」
「ユッキーが昔バスケしてたってこと? 1人で?」
「……まぁ、そんな感じね」
「へぇー、シグシグって幼馴染だから一緒にバスケしたりとかしてたの?」
「してないわよ」
「そうなんだ? 今のユッキーとシグシグのイメージからしたら一緒に遊んでそうなイメージだけど」
「……色々あるのよ」
ケンカでもしてたのかな? っていうかシグシグとユッキーってこんなに仲が良いのに、あんまりユッキーのこと話したことないんだよね。
中学の卒業前くらいで少し話聞くようになったし。
そう考えるとあんまりシグシグとユッキーのこと知らないかも?
今度聞いてみよ。
「フゥーーーー…………」
近くでユッキーが大きく息を吐いて、頭から被っていたタオルを取った。
「雪、準備は出来たかしら?」
「ん? あぁ、多分大丈夫だ」
「勝つつもり?」
「楽しめればいいって思ってたけど、勝ちたくなってきたわ」
「そ、なら次は本気で勝ちに行ってあげるから、帰りに寄り道デートして頂戴」
「別にいいけど、元気だな?」
「バカね。ご褒美がある方がやる気が出るのよ?」
「確かに」
「雪君は勝ったらお姉ちゃんにしてもらいたい事はないかな?」
「んー、といっても桜も疲れるだろうから、今日は桜の胸を枕にして寝かせてくれ」
「はーい! 枕から落ちないようにぎゅっとしてあげるね!」
「……御主人様」
「清香も何かあったほうがやる気でるよな?」
「それは⋯…はい」
「清香だけってのは難しいけど、清香のご飯食べてみたいからさ、ちょっと許可貰ってみんなで昼食交換とかでも出来るようにするよ」
「! 私のことも考えて頂き、ありがとうございます」
なんかいつもと同じに見えるけど……ちょっとだけ違うかも?
「愛羅」
ユッキー達のやりとりをボーっと聞いてたら不意に呼ばれた。
「勝とうぜ」
口角を上げてニヤリと笑うユッキーにあーしも、ちょっとだけ自信を取り戻す。
「にしし! もち!」
あーしも口角を上げて自信アリげに返事をした。
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