第149話 試合開始 → やられ放題
紗理奈、紫乃と別れて先輩からバッシュを受け取って実際に履いてみると……うん、良い感じだ。
時雨、桜、愛羅、清香もそれぞれシューズを受け取り、履いているみたいだ。
あと、動き回ることを想定して時雨と桜も髪を縛っている。
「雪君、まずはどうする?」
先に履き終えた桜が俺の元にやってきた。
「俺は一人でストレッチしたあとシュートの練習するよ」
「そっか。じゃあ、お姉ちゃん達もストレッチしてパスの練習しておくね!」
「あぁ」
そう返事して俺は、ストレッチを始める。
ストレッチは大事だ。
特に足は入念にしておかないと、試合中につったりするわけにはいかない。
そのまま1人でじっくりストレッチしたあと、もう少しだけ感覚を取り戻す為にシュート練習を再開する。
正直勝てるとは思っていない。
だが、勝てないなり一死報いるつもりだ。
報いる為の武器が今錆びついているので、研ぎ澄ましているような感じだ。
だが、錆びついた武器は簡単に剥がれることはない。
十分に錆を落とす前に時間がきてしまった。
「雪、時間よ」
「雪君、頑張ろうね!」
「あーしも頑張るからね、ユッキー!」
「御主人様、参りましょう」
「おう!」
チームが分かりやすいように、俺達は黒、相手チームは赤のゼッケン―――ビブスを身に着けている。
俺達5人は揃ってセンターラインに向かうと、相手チームは既に揃っており、なぜか七橋先生が審判役でいる。
「それじゃ……やろうか大淀君」
センターラインに並ぶとバスケ部の先輩が、不敵に笑いそう告げてきた。
「……はい!」
俺が返事をすると準備が整ったと悟った先生が宣言をした。
「互いに礼!」
「「「よろしくお願いします!」」」
七橋先生が、センターサークルに入ってボールを上げる準備をする。
ジャンプボールには勿論俺が行く。
相手チームからは女子高生ならぬ身長を持った人が出てきた。
「2人ともいいですか?」
「「はい!」」
「それでは……行きます!」
審判がトスアップしてボールから手が離れた瞬間、俺と相手チームの人は飛び上がりボールへ手を伸ばす。
バシッ!
届いた手は相手チームの手だった。
身長が高いだけでなく、ジャンプ力も高い。
「くっ」
弾かれたボールは当然相手チームに渡り、こっちのゴールポストに向けて走り始めた。
ボールを持った相手を桜が追いかける。
当然桜が行かせまいとブロックするが、すぐに別の人へパスを回す。
事前にマークする相手を決めていたが相手の方が1枚どころか2枚は上手。
パスは成立し、そこから中に入りこまれシュートが放たれる。
ボールは綺麗な放物線を描き、リングをくぐった。
その間僅か10秒。
10秒で2点入れられてしまった。
「一本返すぞ!」
「えぇ」
「「はい!」」
「うん!」
相手チームは既に自陣に戻ってこちらを迎え撃つ準備をしている。
俺はすぐにゴール下のエンドラインからボールを愛羅にパスした。
受け取った愛羅はドリブルして相手の陣地へ走っていく。
全員それについていくが、すぐに全員マークされ、愛羅も正面に相手が来てパスを回そうと辺りを見渡すが―――
「!?」
全員ベッタリとマークされており、回せる場所が見当たらない。
なんとか俺が受け取れるように動こうとするが、俺のマークには――――
「行かせないよ」
先程の先輩が張り付いている。
「ふっ!」
「あっ!」
愛羅にマークしていた選手が、隙をみてインターセプトを試み、見事に成功。
弾かれたボールは相手チームの選手へと渡ってしまった。
ボールを拾った選手は直ぐ様ドリブルして、攻めてきた。
正面に俺がいるが、スリーポイントラインまで来た選手は構わずシュート体勢に入る―――
さすがにそれは舐め過ぎだろう?
バシン!
「!?」
シュートしたボールは勢いよくジャンプした俺の手に簡単に届き、そのままセンターサークルの方に弾き飛ばす。
そのボールを今度は時雨が拾い、攻め込む。
時雨の動きは速い。
ドリブルをして果敢にマークしている人を抜き去り、ゴール近くまで来た時雨はそのままレイアウップシュ―――バシン!
時雨から離れたボールはリングに向かっていく途中でブロックされてしまう。
ただ、ブロックして弾いたボールは清香に渡り、そのままスリーポイントラインでシュート!
放物線を綺麗な放物線を描くが、リングに弾かれてしまう。
「リバウンド!」
俺の声にゴール下にいた時雨がすぐに回収しようとするが、相手チームの身長が高い選手が奪ってしまった。
その選手はすぐにパスを回す。
回す相手は、あの先輩だ。
先輩はダッシュでこちらの陣地に突っ込んでくる。
先輩の前に俺が入り両手を広げて妨害するが―――
ならパスするだけだよ? と言わんばかりに後ろから来ていた選手にボールをパスし、受け取った選手は愛羅が妨害しようとしたが、届かず、スリーポイントラインからのシュートを許してしまった。
シュートは吸い込まれるようにリングを通り追加得点を許してしまう。
これで0対5だ。
すぐに俺は清香にボールを回し、攻め込んでいく。
清香も運動神経がいいが、さすがバスケ部員。安易に抜くのは難しい。
俺にも先輩のマークがついているが、大きく右に移動するようにフェイントを掛け、左側から抜けることが出来た。
「清香!」
俺の呼ぶ声に反応してすぐに俺にパスを回してくれた。
ボールを受け取りドリブルをせず、そのままシュートするように膝を曲げ―――
「させない!」
躱した先輩が妨害する為にジャンプをするが―――
体勢を戻し、ジャンプした先輩を無視してターンで右にズレて、ガラ空き状態でシュートを決めた。
さすがにこの状態で外すことはなく、ボールはリングを通り抜ける。
今回は中の方に入ってフリースローライン辺でシュートをしたので、これで2対5だ。
ワァァァァァァァァァ!
「!?」
ビックリして周りを見ると声援が飛んできた。
「早速ショート決めてる! 本当にバスケ出来るんだ!」
「今、フェイント掛けてシュートしてなかった!?」
「一方的な試合かと思ったら違うじゃん! ちゃんと男の子が忖度なしでバスケしてる!」
あ、あぁ、なんだ、ただシュート決めただけなのにビックリしたわ。
「ナイス雪くーん!」
「その調子ですわよー!」
紗理奈と紫乃からの声援も聞こえ―――
「雪様頑張ってー!」
「流石だ! 我が伴侶!」
賛美とアリスも応援してくれる。
さて、どれだけあのメンツにやれるだろうか?
後半始まる前に、昔のあの感覚を取り戻せれれば……
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