第148話 ギャラリー


「いいんですか!?」


「うん、試合がしたいんだろ?」


「はい、是非!」


 シュートの練習をしていたら、愛羅が交渉してくれたのか試合に参加させてもらえることになった。

 さすがマブダチ、いや、心の中で勝手に親友に格上げしておこう。


「メンバーはどうしようか? というか、その格好で試合は出来ないよね。体操服は持ってきてるかい?」


「あー……体操服はありますけど、バッシュはないですね。メンバーは……ちょっと他の子に聞いてきていいですか?」


「うん、いいよ。バッシュもサイズがあれば準備してあげようか? 部活用の備品はけっこう揃ってるから」


「! 助かります!」


 俺は先輩にサイズを伝えて、6人のところに急いで戻った。


「試合させてもえることになった! ありがとな愛羅!」

「にしし! 言ってみたら先輩も乗り気だったよ」


「本当に試合するのね……メンバーはどうするのよ?」

「んー……時雨と桜は出ないか?」


「いいわよ」

「大丈夫ですよ!」


「あとは……愛羅もどうだ?」

「あーし? 別にいいけど」


「これで4人、あと1人なんだが……」


 賛美とアリスを見ると―――


「すみません、雪様。私は足を引っ張ってしまいそうで……応援に回らせて頂きます」

「我も体術は無理だ。影ながら応援しよう」


 となれば―――


「お任せください。御主人様に勝利を捧げましょう」


 清香が参加してくれることになった。


「ありがとう! これで試合が出来そうだ」


「ユッキー、一応言っとくけど先輩達、手は抜かないと思うよ?」


「上等! その方が楽しめるだろ!」


「……にしし! ユッキーならそう言うと思った!」


「だろ! んじゃ、体操服に着替えようぜ」


 そうと決まった俺達は教室に体操服を取りに戻り、体育倉庫を借りて着替えをさせてもらった。

 余談だが、本来女子は教室で着替えて、男子は専用の更衣室で着替えるもんだが、俺は一度も使ったことはない。

 俺も他の子と同じ様に教室で着替えている。

 時雨曰く、「雪の着替え姿を見せるだけならいいわ。見せるだけなら。逆に1人で更衣室に行かせる訳にはいかないもの。1人にすると他の女の子について行っちゃうでしょ?」とのことで、女の子達に混じって着替えている。

 体育が終わったあと教室で着替える時、どうしてあんなにいい匂いが漂うのか不思議だといつも思っている。


 さて、着替えも終わり体育館に戻ると―――


「……なんか人多くね?」


 バスケ部のコートの外周、二階の通路部分にはギャラリーが集まっていた。

 周りを見渡せばどこもかしこも女の子でいっぱいだ。

 そして、その外周のギャラリーから数人の人物がこちらにやって来た。


「こんにちわ、雪君」

「来たわね、雪」


 紗理奈先輩率いる生徒会のメンバーと紫乃だ。


「こんにちわ、紗理奈先輩。紫乃も何でいるんだ?」

 

「えっ?」


「ん?」


 俺が2人に挨拶を返すと紗理奈先輩は笑顔で固まり、ギギギギと紫乃の方を向いた。


「久遠さん、どういうことか説明して頂けますか? 連絡先はまだしも、名前の呼び捨てで同年代のような会話しているとは聞いてませんけど?」


 紗理奈先輩の後ろからズモモモモモっと黒いオーラが立ち込めているような気がする。

 ちなみに紫乃に連絡先を渡してからオリエンテーションが終わって翌日、朝からニコニコして待っている紗理奈先輩に連絡先を交換して欲しいと言われたので、紗理奈先輩とも交換している。

 時雨も生徒会長なら、色々役に立つからOKと許可してくれた。


「ちょ! 貴方の笑顔で苗字呼びは怖いからやめてくださいまし! ふ、普通に会話していいって言っただけですわ! 音子を助けてもらったお礼に!」


 両手を引き攣った顔の前で広げてバタバタと否定すると、紗理奈先輩はギギギギと俺の方に顔を向けてきた。


「雪君、私も呼び捨てで敬語もいらないからね?」


「えっ、でも「い・ら・な・い・か・ら・ね!」わ、わかった!」


「うんうん♪」


 紗理奈先……紗理奈から出ていた笑顔の圧が鳴りを潜め、普通の笑顔に戻った。


「えっと、それで、この集まりはなんですか?」


「男の子がバスケ部と試合をするって話が広まってね。皆興味津々で騒ぎになりそうだから来たんだよ」

「男の子がバスケなんて絶対雪だと思ったから、応援に来てあげましたわ」


「割とさっき決まったことなのに、もうこんなに集まったのか……」


「男の子がバスケするだけじゃなく、強豪と名高いバスケ部と試合するなんて聞いたら、集まりもしますわよ」

「私は男の子がバスケするなんて聞いたから、絶対雪君だと思って先生たちとの打ち合わせ投げ出してきたよ」


「えぇ? それあとで怒られるんじゃないか?」


「大丈夫だよ。先生たちも投げ出してきてるし」


 紗理奈がそう言って指差したギャラリーの方を見ると、確かに先生の面々がワクワクした顔でこちらを見ていた。

 もちろん、学園長もいる。


 ならいい……のか?


「大淀君」


 声がした方向を見るとバスケ部の先輩がいた。


「ちょうど君のサイズに合うバッシュがあったよ。メンバーは一緒に来た子達でいいのかな?」


「はい」


「試合は第2クォーターまででいいかな? 流石に丸々試合すると他の子が練習出来ないからね」


「はい、それで問題ありません」


「第1クォーターを前半として10分の休憩を挟んだあと第2クォーター後半としよう」


「わかりました」


「うん、それじゃウォーミングアップの時間は必要だろうから15分後試合開始だ」


「わかりました。ありがとうございます!」


 お礼を言うとニコッと微笑んで部員達のところに戻っていった。


★********★

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