第146話 先生! バスケがしたいです…………


 鎖で繋がれ登校すること数回、なんとか説得に説得を重ねて、鎖で登校させられるのは防ぐことが出来た。


 ―――但し、色々と制約はついた。


 一つ―――登校する時に余計な挨拶はしない


 具体的には、知らない女子生徒がおはようと挨拶してきても軽く会釈するだけとなった。

 最初は無視しろと言われたが、流石に失礼だと反論した結果、会釈で返すことになった。


 一つ―――知らない人やクラスメイトとのハグ禁止


 厳しくない? と思ったが発情するからダメと言い渡された。


 一つ―――連絡先の交換は2人以上の許可を貰ってから


 今ある分は許すけど、これ以上は許可制となった。


 一つ―――勝手に女の子と会う約束しない


 勝手に会う約束はNGだそうだ。


 他は追々状況に応じて追加していくそうだ。


 厳しい……この厳しい呪縛をすり抜けて、女の子は俺の所に来て妻になってくれるだろうか?


 いや、まぁ、束縛する分ちゃんと家では3人とも俺が喜ぶことをしてくれるし、いっぱい甘えたり、甘えさせてもらったりもするから、前世みたいな女の子成分が足りないって訳じゃないんだけどね?

 それが代償としてしばらくはこのまま過ごすべきなんだろうか……?


 …………いや、あきらめてはダメだ!


 どうせあと2人は増やす必要があるんだ。

 出来るだけ相手のことを知って、仲良くなって結婚したい!

 向こうが来れないのならこっちが隙を見て交流を増やすしかないじゃないか!


 ……とは言うものの、ここ数日は学校が終わって家でダラダラしながら3人とイチャイチャして過ごしていたのだが……


 体を動かしたい。


 帰ってからは皆が俺にくっつくのでゴロゴロ過ごすことが多く、高校に入ってからの休日も出掛けることはあれど、運動と言うほどでもない。

 そう、ベッドの上で体を動かして汗を流すんじゃなくて、青春的な汗を流したい。


 そんなことを考えた翌日の朝のホームルーム―――


「ということで、部活紹介の資料を配りますので興味がある人は参加してくださいね!」


 七橋先生が10ページ程のプリントを配り終え、部活動の説明をしてくれた。


 部活動は自由参加で、運動部などはいくつか全国に行くほど強豪なんだとか。

 文化部はコンクールで非常にいい成績を残す部もあれば、なんで存在するのか不思議な部活もあると……


「時雨は部活とかしないのか?」

「するわけないじゃない」


「桜は?」

「しませんよ」


「なんだ2人ともしないんだな」


「雪のお世話があるからしないわよ。雪は何かしたい部活でもあるの?」

 

「俺はバスケ部いいなって!」


 先ほど資料を見ていたが、全国常連高と書いてあり、過去には優勝したこともありデカデカと書いてあった。

 全国―――高校3年の時に一度だけ行ったあの舞台。

 叶うならもう一度あそこでバスケがしてみたい。


「バスケ……あぁ、以前やってたって言ってたわね」

「全国まで行ったって言ってたね」


「あぁ、最近運動してないから、体動かしたくてな」


「ふーん、久しぶりに覗いて見る?」

「いいのか?」

「ええ、いいわよ。ボールに触れるかはわからないけど」

「ダメかなー? どうせなら試合もしたいんだが」


「それは流石に無理じゃないかなー? シュートだけでもさせてもらえないか聞いてみようね?」

「んーだとすると、呼んどいた方がいいな」


「「誰を?」」


「愛羅ー!」


「んー? なーにユッキー」


 交渉と言えばコミュ強の愛羅が必須だよな!


「放課後部活動見に行くんだけど、一緒に来てくれないか?」


「りょ!」


「あざまる!」


「気になるのあんの?」


「バスケがしたくてぴえん越えてぱおんなんだわ」


「どんだけしたいのさ!」


「見学ついでに、シュートだけでもいいからさせてもらえないかなって」


「あーね!」


「まぁ、内容によっては入部するのもありだしな! 全国常連高で、過去に優勝したこともあるみたいだし!」


「無理でしょ」

「無理ですよ」

「ユッキー無理っしょ」


 ……3人揃って否定してくるのはひどくないか?


「おいおい、俺の腕を疑ってるのか?」


「ユッキーの腕は知んないけど、女子のバスケチームに男子は入れないっしょ? 普通に考えて」


 …………そうだったああああああああああああ!


「だ、男子のバスケチームとか……?」


「あーしは聞いたことないよ?」


 すがるような目で時雨と桜を見るが―――


「知らないわよ」

「お姉ちゃんも、聞いたことないな〜」


 そうだよな……男子が引きこもってる世界だもんな……


「……愛羅先生。 バスケがしたいです」


「諦めなくてもユッキーの試合は既に終了してるよ?」


 愛羅の言葉がトドメとなり、俺は机に突っ伏した。


「……くぅ~……久しぶりに試合がしたかった」


「ま、まぁ、シュートの練習とか位なら、バスケ部の先輩にさせてもらえるように頼んでみるから! あーしに任せてユッキー!」

「雪が素直に頼めば、軽く遊ぶくらいなら許してくれるわよ」

「最悪、お姉ちゃんが体育館借りてあげるから元気だして?」


 桜だけスケールでかいな……?

 

「……そうだな! 行ってお願いしてみよう!」


 3人に励まされて少しだけ持ち直し、授業へと意識を向けた。


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