第145話 この鎖をはずせええええ!③

 さて、授業が始まり一応? 平穏に進んでいるが、いつもなら休み時間になると誰頭が俺のところに来てお喋りしていたが、今日は両脇を龍と虎が固めているので誰も俺に近付こうとしない。

 ちょっぴり寂しい。


「……話をしよう」


「今日の夕飯の話かしら?」

「違うよ時雨ちゃん。ここは、『そんな装備で大丈夫か』って返さないと」


「一番いいのを頼む! いや、違うから、そういう話じゃねぇから!」


「一番いい手錠と鎖を用意したつもりだけど? 流石に金や銀で出来た物は無理よ」

「だから違うって!」


「神が言ってるんじゃなくて?」

「桜もそのネタから離れろ!」

「お姉ちゃん!」

「わかったから! なぁ、流石に手錠と鎖はやり過ぎじゃないか?」


「なら今後むやみにハグしないと誓えるかしら?」

「どういうタイミングならいいんだ? 今までも朝の挨拶でしかハグはしてないぞ」

「それはダウトよ。入院してた時に看護師の人たちとハグしたらしいじゃない」

「いつの話してんだよ……じゃあ朝の挨拶ならいいか?」

「それが一番ダメよ。毎朝クラスメイトが発情するんだから」

「……わかった。なら、朝の挨拶でハグは今後しない。それでいいか?」


「ダメです!」

「……桜姉は何がダメなんだ」

「さっき会長が雪君のほっぺにチューしたから、ほっぺにチューもお姉ちゃん以外禁止!」

「わかったわかった。クラスメイトとは適切な距離で挨拶を行う。これでいいか?」


「まだよ」

「まだあんのかよ……」

「えぇ、今後勝手にクラスメイトと連絡先交換しないこと」

「なら今後勝手に連絡先捨てるなよ」

「余計な女をこれ以上増やさないで頂戴」

「……仲良くなったら連絡先を交換するってことでいいだろ?」

「私と桜と海が許可したらね」

「どうなったら許可するんだよ」

「ロジカルな問題じゃないわ」

「完全に気分の問題じゃねぇか!」

「様子を見て、大丈夫そうなら許可するってだけよ」

「さいですか……」


「あとは『キーンコーンカーンコーン』授業が始まるわね」


 チャイムが鳴ってしまったので、聞けず仕舞いだったが俺の手錠と鎖をはずすのは相当手順が必要らしい……


 そして相変わらず難しい授業が進み、昼食の時間になった訳だが―――


「ゆ、ユッキー!」


 昼食の時間になった途端、愛羅から呼ばれて愛羅の方を見ると、引き攣った笑顔をした愛羅の後ろに賛美とアリスと清香がいた。


「おぉ、愛羅どうした? 今日は一緒に飯食べるか?」


 愛羅は最初のうちは俺たちと一緒に食べていたが、最近は色んな人一緒に食べることが多く、毎回一緒に食べている訳ではない。


「う、うん! 良かったらこっちで一緒に食べない?」


「ダメよ」

「愛羅ちゃんがこっちに来るならいいですよ?」


 時雨と桜が却下したことで愛羅は苦笑いし、賛美とアリスと清香が肩を落としたが―――


「あー、一緒に食べたいが弁当がないから……」


「雪様、私の弁当をお分けします」

「我が伴侶よ、案ずるでない。我の食事を分けてやろう」

「御主人様、私もお分け致します」


「ありがたいけど、俺の分だけじゃなくて時雨や桜もいるからな。 良かったら明日のちゅ「そこまでよ!」もがっ!?」


 明日の昼食を一緒に食べようと約束したかったが、時雨に口をふさがれてしまった。


「勝手に約束させないわよ」

「雪君、メッ!」


 さすがに横暴だろ……

 

「もがっ……流石に厳しすぎないか? クラスメイトと一緒に食事するだけなんだから」


「食事だけで余計な約束しないと言えるかしら?」

「食事しながら次の約束するのは常套句ですよ?」


「別に次があってもいいだろ? なぁ、愛羅?」


「んえ? あーしに振るの!? ま、まぁ、ユッキーもいっつも同じメンバーで食べるより、他のメンバーと食べたりした方が楽しいんじゃない? それに上級生に聞いたけど、クラスの男の子がガッチリ固められ過ぎてると、生徒会がクラスの男子と交流を持てる場を整えることもあるらしいよ?」


 既に上級生とも交流があるのか……? 流石ハイスペギャル。


「余計なお世話するのね。生徒会って」


「まぁ、ほら、この学校って数少ない男の子が集められる学校なのに、関われなかったら不満も出るっぽいよ。そういうのがあって生徒会に意見書が提出されて何かしら形になるって聞いた!」


 生徒会ってそんなこともしてんのか……

 入ったら男子との仲介役やらされてめんどくさそうだな……


「ってことだから、昼食位みんなと一緒に食べよ、なっ?」


「……週に1回か2回までよ? その分きっちり家でかまってもらうから」


「いつもかまってるつもりなんだがなぁ……」


「工藤さんや三井さんや春夏冬さんの片手間に相手しといてどの口が言うのよ」


「逆だよ逆。時雨達の相手の片手間に3人とチャットしてるんだ」


「ふーん、そういうことにしといてあげる」


「今日の時雨はツンツンだなぁ」


「何よそれ」


「ということで、明日な明日! またあとでBeamで連絡するわ! ほら、行こ行こ!」


 ジト目をする時雨の背中を押しながら、教室を出て学食へ向かう。

 明日はどうするかなー。

 みんなで学食でもいいし、あのホットスナックコーナーもありだよな?

 手作り弁当もありだけど、朝起きて作るの手間だしなぁ……あとで相談するか。


 そんなことを考えながら学食に移動して、いつも通り3人で堪能した。


 昼食を終え教室に戻るといつもならクラスメイトとおしゃべりするか、ちょっとしたゲームをしたりするのだが、今日は朝の件から寄り付かず席に戻っても時雨と桜が傍にいるだけだ。

 帰ってから何をするか時雨と桜に相談していると昼休みもあっという間に過ぎた。


 午後の授業も始まり眠気に耐えながら真面目に授業を受けていると、終わりを迎え放課後になった。


「お、おわった~……」


 ホームルームも終わり、各々帰る準備を始める。


「終わったわね、掃除当番でもないから帰るわよ」

「何か帰りに買う物ありましたっけ?」

「今日は別に……あぁ、ちょっと寄り道するわよ」


「ん? どこか行くところあるのか?」


「えぇ、すぐわかるわよ」


「? わからんけど、わかった」


 そう答えて、俺は自分の鞄を持って3人で教室を後にする。


「「「雪君またねー!」」」


「じゃあな、みんな!」


 手をあげて皆に帰りの挨拶をすると―――


 ガチャン!!


「……what's?」


 振り上げた手には手錠型の鎖が繋がれていた。

 それ朝は見てないけど、他にもあったの?


「ほら、愛想振り撒いてないで帰るわよ」

「お姉ちゃんと一緒に帰りましょうねぇ~」


「帰る時もかよ!?」

「当たり前じゃない」

「そんな当たり前知らねぇよ!」


「雪君、またハンカチで顔隠す?」

「もう犯罪者ムーブはいいよ!」


 そのままズルズルと時雨と桜に力任せで引っ張られ靴箱まで行き、靴に履き替えて校門に向かうと、中学の学生服で黒髪のポニーテールをユラユラと靡かせ、校門の壁に背を預けてつまらなそうに携帯をポチポチしている少女がいた。


「……海?」


 俺が呼びかけると少女はこちらを向いて花のような笑顔を向け―――


「お疲れ様、お兄ちゃん!」

「お疲れ、どうしたんだ?」

「迎えに来たよ!」

「迎え?」

「うん! さっ、行こ!」

「何処に?」

「ホームセンター!」

「……何故?」

「この鎖あんまり可愛くないから、色変えたりした方が可愛く見えるかなって」

「色の問題じゃねぇよ!」

「そうだよね。やっぱり色とかじゃなくてリボンとかのアクセ付けた方がいいかな?」

「いやいや、アクセもいらねぇから!」


「雪、恥ずかしいからあんまり騒がないで頂戴」

「雪君、あんまり騒ぐと目立っちゃうよ?」


「誰のせいだ!」


「今日はお兄ちゃん雌猫に愛想振りまかなかった?」


「帰り際に振り撒いたわ」

「その前に昼食の約束もしようとしたよね?」


「お兄ちゃん溜まってるようだから、帰りに薬局も行こうね」


 海はそれだけ言うと俺の鎖を引っ張って歩き出した。


 せっかく―――せっかく、これから色んな女の子とキャッキャウフフ出来ると思ってたのに!!


「いや、もう十分だから! 話し合おう!」


「お家に帰ってからね」

「お風呂でゆっくりする時にね」

「全部終わってからですね!」


「―――ちょ! 誰か! この鎖をはずしてくれえええええええええ!!」


 俺の叫び声は周りに気付かれていたが、注目の的となっただけで、そのままズルズルとホームセンターと薬局に連れて行かれるのだった。


★********★

ギリギリ3分割!

タイトル回収して終わりっぽく見えますけど、終わりじゃないです。

書きたいことがまだまだあるので、気長にお待ち頂ければ幸いです。

どこかで③も書きたいけどタイミングが……


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