第144話 この鎖をはずせええええ!②
「「「雪君、おは…………」」」
「おはよう、みんな」
いつもはキャーキャー俺の元に駆け寄って来てくれるのに、今日は誰も来ず、静寂な気配が漂っている。
というか前が見えないから皆の顔がわからない。
そのまま問答無用とスタスタと席まで移動して座ると、ようやく俺の頭に掛けてある布が取られた。
遮られていた視界が広がり、周りを見渡すと両側には時雨と桜が立っていて―――
「とうとう鎖でぐるぐる巻きにされてる……」
「ちょ、ちょっと、誰か何とかしなさいよ!」
「このままだと雪君と話できないんだけど!」
「あの背後に鬼を背負ってる坂間さんと神藤さん相手に、誰が話しかけてるのよ……」
となんとかしようとクラスメイトがガヤガヤ騒いでいる。
そうだ、誰かなんとかしてくれ! というか……
「なぁ、鎖か手錠どっちかは外さないか?」
「授業が始まるまでダメよ」
「雪君がして欲しいことは、お姉ちゃんがしてあげるからそのままだよ?」
「鬼かな?」
「恋人よ」
「お姉ちゃんだよ!」
手錠と鎖を外す気が無い2人に絶望していると、クラスの扉が開きいつもの人がやってきた。
「雪君、おはようー……あれ、手錠で繋がれてるって聞いたのに、さらにひどいことになってる……?」
「おはようございます。紗理奈先輩」
「えっとー……なんで雪君は鎖でぐるぐる巻きにされてるの?」
「なんか、愛想振りまくからだとか……紗理奈先輩からもなんとか言ってやってください」
俺がそう言うと、紗理奈先輩は苦笑いしながら時雨と桜を見ると、ついでと言わんばかりに愛羅がやってきた。
……賛美とアリスと清香に押されながら。
「えっとー……なんで雪君は鎖を巻かれてるのかな?」
「雪が暴れるからよ」
「雪君が危険だからです!」
「どう暴れて危険なの? 大人しくしてそうだけど」
「朝は雪が全員とハグして、クラスの女を発情させるからよ」
「発情した女が雪君に何するか、わかりませんから」
「だとしても、流石にやりすぎじゃないかなー?」
だとしてもって、会長も俺がハグしたら女子は発情する認識なのかよ……
「雪を守るのは妻の役目よ」
「お姉ちゃんの役目なのでお構いなく!」
「あー、あのー、ハグ位挨拶なんだからいいんじゃないかなーって……皆言ってるよ」
後ろから指示を受けながら愛羅が困り顔で時雨と愛羅に伝えるが―――
「それでいつも目をハートにして、雪を見ているのを知らないとでも思ってるの?」
「でもそんな状態だと雪君辛いだろうし、雪君にも女の子と触れ合う権利はあるよね?」
「そう思ってましたけど、ほっとくと誰彼構わず妻候補を増やしそうですから、縛り上げてるんです」
「夫の交友関係を管理するのも妻の役目ですよね?」
「ん、ん〜……言いたいことは分かるけどー……」
ちょっと! 先輩押され気味なんだけど!?
「先輩頑張ってください!」
「これが雪君とただの友達とかなら、生徒会として止める権利があるんだけど……実際の妻とお姉さんになるとねー……」
「えぇー……」
紗理奈先輩が思案していると、愛羅(賛美とアリスと清香に盾にされながら)が一歩前に出てきた。
「そ、それでもユッキーはお嫁さん増やさなくちゃいけないよね? 流石にやり過ぎると、ユッキーのお嫁さんになる人居なくなっちゃわない?」
「既に3人いるのよ? 25歳までにあと2人なら雪なら1ヶ月あれば余裕でクリアできるわ」
「いや、出会ってすぐのよく知らない人と結婚なんて出来ないぞ」
「そう? おっぱい大きければだいたいの人はクリアするでしょ」
「胸で選んでないって!」
「まぁ、見つからない時は最悪凪さんと……紅銅さん、もしくは梓って選択肢もあるでしょ?」
「え、えぇ? 嫌な訳じゃないけど、もう少し普通に親睦深めて年が近い方がいいんだけど」
「最悪の場合よ最悪の場合、誰も金だけ持ってるお婆さんと結婚しろとは言わないから」
「そうか……いや、そういう問題じゃなくないか?」
「そうです! 雪様が選んでくれるなら私でもいいですよね?」
「我は前世では雪の伴侶だったのだが? 我も妻になる権利があっても良いのではないか?」
「私は妻でなくても構いませんが、御主人様の傍に御使えさせて頂ければ、何の文句もありません」
愛羅を盾にしていた3人が愛羅の後ろから意見をぶつけてくるが……
「貴方達は妻云々じゃなくて、雪の種を狙ってるだけでしょ? 昨日静かな部屋で3人で、慰め合ってきたんじゃないの? まだ発情してるじゃない。いやらしい」
「んー、これはちょっと頭が冷えるのを待つしかないね。ごめんね雪君、力になれなくて」
紗理奈先輩が申し訳無さそうに諦めた。
「先輩……」
「代わりに―――」
紗理奈先輩はその言葉と同時にスッっと俺の正面に来て、机に乗り出して俺に寄ると―――
チュ♡
俺の頬に紗理奈先輩がキスをしてスッと離れた。
「「「あぁーーーー!?」」」
「奥さん達が怒ってるから、またね雪君」
そういうと紗理奈先輩はささっと教室の入り口まで移動して去っていってしまった。
「明日からはマスクも必要ね」
「そうですね。プロレスで使うような全部隠すタイプにするか、ホラー映画なんかで使われる前面だけ隠すやつにするか」
「挨拶されただけだから! マスクとか蒸れるから勘弁してくれ」
「そうね、マスク着けると雪と判別しにくくなるのもあるわね」
「通気性が良くて、前面だけでも触れなくなるようなヤツを探します!」
「いらないから!「はーい! 朝のホームルームを始めますよー」」
そんなやり取りとしていると七橋先生がやってきた。
「はい、皆さんおはようござ……大淀君どうしたの?」
「今取りますので気にしないでください」
時雨がそう言うとテキパキと時雨と桜の手によって手錠と鎖がはずされていく。
そして、時雨と桜は外し終わると何食わぬ顔で自分の席に戻っていった。
「……え~、と~……はい! それではホームルームを始めますねー」
七橋先生は関わるべきではないと判断してそのままホームルームを始めた。
「一つ報告がありまして、大淀桜さんが雪君の妻になったと報告と申請がありましたので、身近で世話ができるように席を交代してください」
先週桜が七橋先生に報告と何かの申請をしていたが、席の交代なんかも含まれていたのか。
七橋先生がそう言うと桜はニコニコで俺の隣に来て、元々隣にいた子は憎しみの顔で桜を睨みながら桜の席に移動していった。
「よろしくね、雪君♪」
「あ、あぁ」
席に移動してからも元々隣にいた子は桜を睨んでいるが、桜はガン無視である。
「はい、では本日も一日頑張りましょう!」
そして、次の授業が始まる5分休みでさえも、時雨と桜は椅子を俺の隣にくっつけ、べったりと俺に引っ付いてくる。
その様子を見てクラスの子達は再度相談を始めるのだった。
★********★
2分割で終わると思ったか!(私は終わると思ってた。
応援、フォロー、星を付けて頂き誠にありがとうございます!
創作意欲に繋がるので応援、星を何卒・・・!
コメントもお待ちしております!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます