第143話 この鎖をはずせええええ!①
ユサユサと体を揺らされて、夢の中に沈んでいた意識が少しずつ浮上してくる。
「お兄ちゃん、朝だよー」
「雪、朝よ」
「雪君、おはよう♪」
「……ん、おはよう」
なぜかいつもより重く感じる体を起こしながら、三人を見るとツヤツヤした顔でこちらを見ていた。
……昨日何したんだっけ?
「ほら、お兄ちゃん! 朝のトレーニング!」
ぼやーっとした頭のまま海に手を引かれ、両サイドには時雨と桜が寄り添い、階段を降りて洗面所に向かい顔を洗う。
シャキッとしたあとは軽くトレーニングを行い、皆でささっとシャワーを浴びたあとは母さんと凪さんが作ってくれた朝食を皆で食べる。
ここ最近のいつもの日常だ。
……でもなぜだろうか?
何かを忘れているような……?
「どうしたのお兄ちゃん?」
そんな考え事をしていたらボーっとして箸が止まっていたらしい。
「あ、あぁ、何か忘れてるような気がしてな?」
「ふーん? 思い出せないなら大した事じゃないんだよきっと」
「それもそうか」
霞がかった記憶を掘り起こすのをやめ、朝食を済ませて着替える。
今日からまた学校だ。
前世ならそんなに楽しみでなかった学校も、行けば可愛い女の子達にチヤホヤされるんだから、学業には正直ついていけてないが、悪くはない。
「気を付けてね? いってらっしゃい!」
「「「「行ってきます!」」」」
母さんと凪さんに見送られ、海は別方向に歩き出し、俺と時雨と桜は学校へ向かう。
今日も通学中すれ違う人達に見られるが、慣れたものだ。
そして、通学しているとけっこうな頻度で合流する―――
「3人ともオッハー!」
「おはよう、愛羅!」
「おはよう」
「愛羅ちゃん、おはよう!」
愛羅も合流して他愛のない話をしながら校門に近づくと―――
「そろそろ必要ね。桜?」
「はーい♪」
時雨が俺の両手を取り、前に突き出させると―――――
ガチャン!!
俺の両腕は手錠で繋がれた。
「……あっ」
「えっ?」
……思い出したあああああああああああああ!!
「おーい!? なんでだよ!? なんで昨日の手錠持ってきてんだ!?」
「えっ? えっ? なんで手錠? ユッキー何したの?」
「いや! 俺何もしてねぇよ!」
「この辺から手錠しとかないと愛想振り撒くでしょ?」
「雪君がすぐ女の子に愛想バラ撒いちゃうから!」
「普通に挨拶を返してるだけだろ!?」
「だからよ。雪が笑顔で挨拶を返すだけで、その辺の女は勘違いして発情するのよ」
「しねぇだろ!?」
「雪君、我儘はメッ! ですよ?」
「いや、我儘じゃないよね!? そもそもこんな姿見られたら周りに何て言うんだ!?」
「あっ、じゃあ、こうしてあげるね!」
桜はそう言ってポケットから大きめのハンカチを取り出し、俺の頭に被せて顔を見えないようにした。
「ブフゥ! アハハハハハ! ユッキー完全にテレビで見る捕まった犯罪者じゃん!!」
「いやいやいや!? こんな格好、余計に人目を集めるだろ!?」
「人目を集めるだけならいいわよ。集めるだけなら」
「いやいやいや! 俺が良くねぇよ!?」
「こんな所で騒いでたら人目を集めますよ?」
「お前達のせいなんだが!?」
「ほら、雪。人目が集まり始めてるから行くわよ」
「この格好で!? 前がよく見えないんだが!?」
「私が手を引くから大丈夫よ」
「お姉ちゃんも、手を繋ぐから安心して?」
「ゆ、ユッキー、頑張って」
「いや、助けろよ愛羅!」
「あーしには無理! ちゃんと面会には行ってあげるから!」
「勝手に留置所に連れて行くな!」
「テレビ映ったらどうしよ? やっぱここは定番の普段は大人しい子だったんですがって答えるべきか、いつかやると思ってましたって言うべき?」
「そんな無駄なことに頭使うんじゃなくて、この状況を打開する案を考えてくれよハイスペシャル!」
「いやー、あーしの天才的な頭脳を持ってしても、ユッキーを助ける術は無いかなー……」
「おーい! それだと、ただのピュアピュアギャルになっちまうぞ!」
「ピュアピュア言うな!」
「もういいから、漫才してないで行くわよ」
「えっ、あっ、ちょ! まじで行くのか!?」
「学校に遅れる訳には行かないでしょ?」
「そういう問題じゃ「ハイハイ」話を聞けよ!?」
俺の抵抗は虚しく、時雨と桜に手を引かれて歩いていく。
学校の鞄は愛羅がせめて鞄だけ持ってあげると言って預かってくれている。
チラっと見える周りの風景で学校に近づいているのが分かるが―――
ガヤガヤガヤ……
周りが騒がしい気がするが、布で頭が覆われていて、よく聞こえない。
布をズラそうと頭を振ると時雨か桜が掛け直してくる。
そのまま校門を過ぎ、靴箱に着くと桜と時雨が俺の上履きに履き替えさせてくれた。
そして、そのままクラスへ行くかと思えば――――
「……何をしてるので?」
俺の手と体を何か鉄のような物で巻き付けてくる。
「手と体を鎖で巻き付けとかないと、誰かが雪に抱き着いて、抱きしめ返すでしょ?」
「雪君、痛くない? 出来るだけ痛くないようにするから!」
「……強く生きてユッキー」
「いやいやいや! 流石にやりすぎだろ!」
「普段雪がやり過ぎているって自覚したかしら?」
「そんな自覚ねぇよ!」
「雪君、我儘ばっかり言ってると、こわ~いお化けが来ちゃうよ?」
「ちょいちょい俺のことを小さな子供扱いしてるよね? ほぼ同い年のはずなんだが?」
「あれ〜? 合宿の時は5歳って言ってたよね? 帰ってお姉ちゃんのミルクのみたくないのかな〜?」
「ん? サクサクのミルクって何? 手作りのミルクなの?」
「ピュアラ、気にするな」
「絶対調べてユッキーに実験台として飲ませるから」
「知った時その言葉思い出せよ?」
「もう! 愛羅と喋ると漫才にしかならないんだから、せめて教室でして頂戴!」
ぐるぐるに巻きつけられた鎖で俺は下半身しか動かすことができず、そのまま連行されていく。
そのまま、教室に着くと扉が開けられ、中に入って行くと、周りからはいつもの声が―――
★********★
またお二人からギフトを送って頂きました! 送って頂き、ありがとうございます!
励みになります!
この展開を五、六話位の頃から考えてました。
いやー……だいぶ遠回りしましたね(遠い目
長くなったので分割します。
次話もすぐ公開されるはずです。
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