第137話 クラスメイトの作戦会議


 4人で学校へ向かい、教室に入るといつもの元気な声が聞こえてくる。


「「「雪君おはよーー!!」」」


「おはよう!」


 クラスの子たちが俺に挨拶をしながら、我先にとクラスの子たちが集まってきくる。

 いつもの流れだとみんなとハグをするので時雨が俺の横に並んで、余計なことはさせないと目を光らせるのだが……今回は俺の両脇に時雨と桜が並んだ。


「あれ、神藤さんおはよう! もう治ったの?」

「愛羅さんが連絡取れないって言ってたけど大丈夫だったんだ?」

「神藤さんそこにいるってことはもう朝のハグしてもらった感じ?」


「おはようございます。怪我がある程度よくなったので、今日からまた登校します! あと私の雪君に粗相する子がいないか今後チェックしますね?」


「私のって……神藤さんもう既成事実でも作ったの?」

「実は休みの間に雪君と仲深めてた?」

「…………キス以上してきた?」


「ふふふ、あとでわかりますよ」


 そんなやりとりが行われた後に、俺は皆とおはようのハグをしていく。

 時折俺の尻を触ろうとする人は時雨や桜に腕を抓られたりしている。

 そして、今ではよく見るこの人もいる。


「おはよう、雪君!」


「おはようございます。紗理奈先輩」


 紗理奈先輩は毎日ではないが、よく朝教室に来てクラスの皆と一緒にハグをされに来る。

 いつも通りハグをしたあとはたまに―――


「雪君! 生徒会に入らない? 雪君のメリット考えてきたんだけど」


「今日はどんなメリットですか?」


 そう、1週間に1回位のペースで生徒会への勧誘をしてくる。

 入ることへのメリットを提示するのだが……


「うん、平日は生徒会の皆でお昼ご飯を作って、雪君に食べさせてあげるのと休みの日に雪君のお家に行って、炊事、洗濯、掃除をするって言うのはどうかな?」


「それは―――」


「不要よ」

「いりませんね」


 俺が回答する前に、時雨と桜が返答した。


「雪君いつも学食なんだよね? お金かかるし、学食に行くと色んな女の子からジロジロ見られるよ? それに休日は生徒会でお世話するから時雨さんも楽になるよ?」


「昼食で雪のお金の心配はしてないわ。なんならホットスナックを色々買って皆で食べたりしてるし、学食で雪を見るだけなら何の問題もないわ。私も傍にいるから、私と雪が夫婦と認識してもらえるのもあるわね。雪のお世話は私の義務であり、使命であり、生き甲斐生だから、余計なお世話よ」

「私もお姉ちゃんとして今後雪君のお世話するので、休日に雪君の家に来られるのは困ります!」


「うーん……ダメかー。じゃあ雪君、またメリット考えてくるね!」


「えぇ、また!」


 紗理奈先輩はダメだと分かると教室から出ていってしまった。

 まぁ、別の教室どころか違う学年だからのんびりするのも難しいか。


 そして皆との挨拶も終わり、席に着いて待っていると七橋先生が教室に入ってきた。


「おはようございます、皆さん。朝のホームルームの時間ですが……えー、神藤さんからお話があるようでして……神藤さんどうぞ」


「はい!」


 七橋先生は桜の状況を聞いており、引き攣った顔をしながら桜を呼び、桜はニコニコとしながら教壇の前に移動した。


「皆さん、おはようございます。怪我がある程度回復したので、今日からまた登校しますが、一つお知らせがあります。実は男性保護省の姉妹プログラムで、雪君のお姉ちゃんになりました! なので神藤桜改め、大淀桜になりましたのでよろしくお願いしますね?」


「「「…………えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」


 桜の衝撃的な発言にクラスメイトたちが驚きの声をあげるが―――


「あとお姉ちゃんであることと同時に、雪君と恋人関係でもあり、第三夫人にもなりましたので、今後雪君に用がある場合は私にも声をかけてくださいね?」


「「「……………………」」」


 桜の次の発言で、最初に湧き上がった声は空気が凍りついたように静まり返った。誰もが無意識に息を止め、部屋全体が驚愕に包まれ、その重い空気が視覚的に感じられるほどだ。

 七橋先生もそれは聞いていないとばかりにクラスメイトと同じ表情をしている。


「あぁ、私も大淀になりましたが、雪君と被るので今まで通り神藤でも桜でも好きな方で呼んで頂いてけっこうですので! 以上です!」


 桜が言いたいことは言って満足したのか満面の笑みで自分の席に戻っていった。

 この空気がどうなるかと見物していたが、周りの動きは立ち直りから意外と早かった。

 我に帰ったクラスメイトは近くの子と何やら会話を始めるが、聞こえてくる大きな声としては―――


「神藤さんが第三夫人!?」

「今まで自称だったのに、何で合宿で怪我して戻ってきたらガチ姉になってるの!? 姉妹プログラムってそんな簡単な物じゃなかったよね!?」

「というか恋人って何!? 時雨さんが恋人じゃなかったの!?」


 と、なんでそんなことになってるのか理解が出来ず大声で話す子もいるが、一部では真剣な表情で話をしている者もいる。

 席が遠い子は何を話しているかわからないが、時雨とは逆の隣の席の子も話をしているので、それは俺の耳に入ってきた。


「神藤さんに抜け駆けされたけど、まだ枠はあるわよね?」

「あるはず。ただ他に増えたとは聞いてないけど、桃園さんとか怪しいんじゃない?」

「桃園さんは結婚はいいかなって言ってたわよ」

「えぇ……? 何それ? 枯れてるの?」

「本人が枯れてるなら、それはそれでライバルが減るからいいのよ。桃園さん雪君と気軽に話をしてるから、桃園さん経由で仲良くなってそこから雪君と親密になるルートも捨てちゃダメよ」

「わかってる。それより、神藤さんはどうするの?」

「ぶっちゃけ、坂間さんよりは神藤さんの方が話通じるわよね?」

「それはそう、坂間さん雪君絡むとガッチリガードするから」

「なら神藤さん経由の道も探りましょう」

「だね。あとで共有しとく」

「よろしく。私は神藤さんに色々アタックしてみるわ」


 ……そんな回りくどいことせず、隣にいるんだから普通に話しかけて親睦深めればいいのでは?


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