第132話 男性保護省からの通達
それは土曜日の晩御飯を食べている時に唐突に告げられた。
「雪、男性保護省からの通達で明日新しい姉が家に来ることになったわ」
「「「はっ?」」」
俺と時雨と海は声を揃えて発声した。
母さんたちも休みなので俺の一家、時雨一家、海一家揃っての晩御飯を食べている時に母さんが、急に変なことを言い始めた。
「あら、とうとう雪君にお姉さんが出来るのね」
「これで海にも姉が出来るわね」
干菜さんと凪さんはそんな呑気なことを言っているが―――
「いやいやいやいやいや、急すぎるでしょ!?」
「……場合によっては雪に姉が出来るとは思ってたけど」
「お兄ちゃんにお姉ちゃんいらないんじゃないかな? お兄ちゃん断ろう?」
「待て待て、なんの連絡もなく急に出来るものなのか? というか以前姉が欲しいって海言ってなかったか?」
「記憶にございません」
……気が変わったか。
「なんで雪に姉が出来たのかしら? 何かしら理由があって出来ると思うんだけど?」
「あれか? この間の遭難した件で傍にもう一人置いとこうてきな?」
「どうかしら? 女性に襲われたとかなら分かるけど、あれは雪が1人で暴走した結果だから」
「じゃあ、少し前に女性3人に襲われた件か?」
「だとしても、もう少し前に連絡あったりすると思うわよ」
「んー……まぁ、いいか」
「よくはないわよ」
「よくないよ、お兄ちゃん」
「つってもどうしようにもないだろ?」
「はっきりいりませんって言いなさいな」
「そうだよ。私と時雨姉がいるから不要ですって返品しよ?」
「なんで急に決まったか知らないけど、一旦会ってからでもいいんじゃないか?」
「なんでそんなに前向きなの? 私と時雨姉じゃ不満ってこと?」
「いや、そういうのじゃないよ! 男性保護省が決めたことだし、仕方ないんじゃないか? まぁ、でも……」
「でも?」
「俺の中で、姉枠は桜になっちまったから、桜が何て言うか……」
「なんで雌猫桜が出てくんのさ」
「……桜と何かあったの?」
「ん、あー、すまん言ってなかったわ」
「何を?」
「桜が恋人になった」
「「……はぁーーー!?」」
「あらあら3人目も決まったのね」
「桜ちゃんってこの間の子よね?」
「よかったわね、雪さん!」
海と時雨、母さん、干菜さん、凪さんがそれぞれ反応を示した。
「聞いてないんだけどお兄ちゃん!」
「姉ならともかく、なんで妻じゃなくて恋人にしてるのよ!?」
「妻にもするつもりだぞ」
「だからなんで雌猫桜なのさ!?」
「そりゃ可愛いし、頭良いし、運動神経いいし、スタイル抜群だし……まぁ、弱ってるところとかも見て守りたいなと思ってな?」
「はぁー……なんで勝手に決めちゃうかなー? まだ審査してないよ?」
「審査ってなんだよ審査って」
「第一にお兄ちゃんの為に馬車馬の様に働く気はあるか」
「頼むからブラックなところで働くのはやめてくれ……心も体もボロボロになっていく妻の姿を俺は見たくないぞ……」
「第二に私たちとも仲良くが出来るか」
「この間王様ゲームで仲良くしてたじゃないか?」
「第三にお兄ちゃんと合体しなくてもいいか」
「その審査、海と時雨も通れないよね?」
「第四に……お兄ちゃんを大切にできるか」
「……俺が言うのもなんだが、桜なら大丈夫だろ。もちろん俺も皆のこと大切にするぞ」
「お兄ちゃんが答えても意味ないよ! ちゃんと雌猫桜から聞かないと!」
「でも最近桜と連絡取れないのよね」
「それな。だからずっと心配してるんだ」
今頃何やってるんだか……月曜日先生に家聞いて行ってみるべきだろうか?
「はいはい! 桜ちゃんのことはまた今度来た時に聞きましょ? それより明日はお姉ちゃんが出来るんだからパーティしないと!」
「うふふ、秋さん私も手伝うわ。久しぶりにお料理張り切っちゃうわよ」
「私もお手伝いします。海? ちゃんと新しく出来るお姉ちゃんとも仲良くするのよ? 貴方も同じ立場なんだから」
母さん、干菜さん、凪さんが話を切り替えて、明日のことを話始めた。
姉か……どんな人だろうか?
俺もそうだが、海と時雨と仲良くやってくれればいいけど……
**********
そして次の日――――
朝からバタバタ準備をしている。
台所には母さん達が立って料理をしているので、俺と海と時雨は玄関や、廊下、リビングに新しい姉の部屋を掃除している。
お昼に来るらしいので、大忙しだ。
そして掃除が終わった俺たちはシャワーを浴びて汗を流し、リビングで待つことにした。
その頃には料理も出来上がり、母さん達も一緒にリビングでまったりしている。
「どんな子が来るかしらね? 海みたいにいい子ならいいけど」
「海ちゃんみたいないい子、そうそういないじゃないかしら?」
「ふふ、海よく頑張ってるわね」
「もちろん! お兄ちゃんの妻になるんだからね!」
母さんと干菜さんと凪さんが海を褒めて、海は自信満々に胸を張っている。
「俺としては皆と仲良くしてくれるならそれでいいかな」
「お兄ちゃん余計なことしないでよ?」
「なんだよ余計なことって」
「相手が挨拶してもしゃべらないで?」
「なんでだよ!? 俺の姉になる人だぞ!」
「お昼ごはん食べてもらったら、男性保護省に返品するから大丈夫だよ」
「まだ言ってのかよ……なんで追い返そうとするんだ?」
海は不満そうにしながら俯き―――
「……お兄ちゃんとイチャイチャする時間が減りそうじゃん」
「……姉が出来ても、海との時間は大切にする。平日の昼間は時雨と新しい姉が一緒だから、夜は海を優先するようにするからさ?」
「言質取ったからね?」
「ちょっと雪、平日は授業でそんなに触れ合えないんだから、せめて時間制にして頂戴な。私も相手してもらわないと嫌よ?」
「わかったわかった! なんかいい感じに調整するから! というか、新しい姉とそんなすぐに仲良くなれるかわからないだろ?」
「出会って初日にイチャイチャするに夜のお兄ちゃんタイムをベット」
「出会って数時間……いえ、1時間後に雪との時間をベットよ」
「なんで急に賭け事始まってるんだよ……」
そんなくだらない話をしていると玄関からピンポーンとチャイムが鳴った。
「はーい! 私が会ってくるから皆は待ってて」
母さんが玄関に向かった。
母さんが迎えに行き数分、俺は緊張しながら待っていると母さんが戻ってきたので、俺たちは立ち上がり迎える用意をした。
「さぁ、こっちよ。皆、新しいお姉ちゃんよ!」
母さんがそう言うと、廊下の影から金色の物体がすごい速さで俺に抱きついてきて、俺の唇に唇を重ねてきた。
「「はっ?」」
俺が驚いていると、キスをした人物が唇を離し、俺に挨拶をしてきた。
「今日からお姉ちゃんになる、桜です! よろしくね?」
「……えっ?」
「……なんで桜がいるのよ?」
「雌猫ーーー!!」
俺の新しい姉は桜だったようだ……
賭けは出会って0秒でイチャイチャするが正解だった。
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