第124話 神藤 桜②


「どいてええええええええええええ!!!」


 通行人の一人が気付いて慌てて受け止める体勢になりましたが―――

 受け止めきれず、そのまま下敷きになってしまいました……


「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」


 私は慌てて、下敷きにしてしまった女の子を見ました。


「あ、あぁ、なんとか大丈夫だ」


「よ、よかった!」


 本当によかった……危うく殺人者になるところでした……


「な、なんでビルから飛び降りてきたの?」


 ―――そうでした!!


「あぁ、そうだ! 早く逃げないと! どこかへ!」


 追い付かれちゃう!


「くっ……急いで逃げよう! 時雨、愛羅! ゲーセンにダッシュだ!」


「えぇ!」

「りょ!」


 それから私達は四人で街中を逃げる様に駆け回り―――

 ゲームセンターの中に逃げ込みました。


「「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」」」


 全力で走ってここまで来たので息が……


「ふぅ……ちょっと遠回りしながら来たから撒けたと思うけど……」

「はぁ、はぁ、はぁ……愛羅って体力あるんだな……」

「まぁね! 毎日ランニングしてるから!」

「ちょ……ちょっと息を整えましょう……」


「そ……そうですわね……」


 近くにベンチがあったのでそこに座りました。

 ここまで来たら流石に撒けたでしょうか……

 ポケットで携帯が震えているので、撒けたのでしょうね。

 そんなことを考えていると、私を受け止めた女の子がスポーツドリンクを買ってきてくれました。


「ありがとう雪」

「お! ユッキーあざまし!」


「ありがとうございます」


 ゴクゴクゴク……ふぅ……疲れた体にスポーツドリンクは生き返りますね。


「はぁー……なんとか逃げ切ったかな? それで、何があったんだ、逃げないとって言ってたけど? あんた誘拐でもされたのか?」


「? いいえ?」


 何故誘拐されてることに???


「えっ、じゃあ、なんでビルから飛び降りて逃げようとしたの?」


「お稽古が嫌になって逃げだしましたの」


「「「…………」」」


「せっかく学校がない休み期間なのにお稽古ばかりでひどいと思いませんか!? わたくしだって遊びたいんですのよ!?」


 3人はあきれた顔をしていますが……私は悪くないですよね?

 そこから私を受け止めた人が自己紹介をしてくれますが……


「ところで……貴方はもしかして、男性ですか?」


「あー、そうだよ」


 驚きました。

 男性は道中、車で移動すると聞いていたのですが……女装して街中を歩く人もいるんですね……

 今後外を出歩く時は、もっとよく見ないと!


 それにしても、大淀さんは今まで会った男性とは違いますね。

 ちゃんとお話し出来るし、周りの子とも仲良さそうに……


「そんなことより、神藤さんはこれからどうするんだ?」


「……皆さんはどうなさるのですか?」


「あーしらはこのゲーセンが目的地だから、ここで遊んでいくよん!」


「……これも何かの御縁ですのでわたくしも混ぜて頂けませんか?」


 逃げて来たのですから、遊びませんと!

 

 そのまま、四人でエアホッケーをすることになりました。

 テレビで見たことはありますが、やったことはありません。

 ちゃんと出来るでしょうか?

 

 じゃんけんでチーム分けをした結果、大淀さんと同じチームになりました。

 罰ゲームありのエアホッケーですか……楽しみです♪


 序盤はリードしましたが、すぐに返されてしまいました。

 時雨さんはお強いですし、愛羅さんもいい動きしていますね。


 大淀さんが少し、あきらめ顔をしています……

 まだやり始めたばかり、勝負はここからですよ!


「頑張りましょう! 大淀さん! 私も頑張りますから!」


 私は元気づける為に、大淀さんを応援しました。


「ははっ! なんか年上のお姉さんっぽいな!」


 彼の笑顔が私の中で、あの漫画の弟君とダブって見えました。


「……お姉さんっぽいですか?」


「あぁ、今の仕草が可愛らしくて、弟の為に頑張る、頼りがいのあるお姉さんみたいな感じがした」


 私が……お姉さん……私が……お姉ちゃん……!

 

 私の中で大淀さんの存在が大きくなるのを感じました。


「お姉ちゃん」


「ん?」


「お姉ちゃんって呼んで下さい!」


「「「はい?」」」


 私が大淀さんの……うんん、雪君のお姉ちゃんになるのです!


 そのあとのエアホッケーでは、お姉ちゃんとしていい所を魅せないといけません。


 頑張りました!


 そのあとのゲームも勝利して、雪君の連絡先もゲット……大満足です!


 久しぶりに遊ぶことも出来ましたし、いい一日でした。

 さて、ずっと震えている携帯に出ますか……


 結果的に言えば、それほど怒られませんでした。

 お母様からもちょっとお小言があっただけで、休みたい時はちゃんと言うように言われてしまいました。

 そうですね、相談することは大事ですよね……

 最近では色々な場所に出向いて見聞を広めているお姉様達もやってきて、心配してくれました。


 そして、あの日から毎日少しだけ雪君や愛羅ちゃんとBeamでお話することできて、一日の楽しみになりました。

 雪君からは時雨ちゃんや海ちゃんと仲良くしている写真が送られてきます。

 素直に羨ましいです。

 時雨ちゃんや愛羅ちゃんに話を聞くと、高校は同じ学校みたいなので、今後のつまらなかった平日が楽しみになりました。


 高校入学前にまた雪君と会えたのは嬉しい誤算です♪


★********★

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