第122話 合宿最後のレクリエーション

 食事も終わったあと、コテージに戻り風呂に入ったあと、昨夜はこのまま自由時間だったが、今日は合宿最後のレクリエーションがある。

 内容は肝試しらしい。

 普通夏だと思うのだが……まぁ、いいか。

 懐中電灯を持って、コテージを出て、総合施設の横を通り過ぎようとした時―――


「悪いけど、少しだけ待ってて貰えるかしら?」


「おう、忘れ物か?」


「そんなところよ」


 そういうと時雨は一人で総合施設の中に入って……すぐに出てきた。


「雪、持っておいて」


 時雨から受け取り見てみると……


「ん? 施設のパンフレット?」


 この施設の紹介がしてあるパンフレットだった。


「えぇ」


「ふーん?」


 俺はパンフレットを開き、中を見てみるが、各施設の案内やどこに何があるかがわかるMAPの絵が書かれているだけのパンフレットだった。

 料金なども書いてあるので、元々ここは一般的に営業もしているのだろう。

 で? なんでパンフレット?


「これを肝試しで使うのか?」


「さぁ?」


「勘か?」


「そうね」


 ……よくわからんが、とりあえず持っていくことにしよう。


 時雨からパンフレットを受け取った後は、まっすぐ肝試しの会場に向かった。

 既にクラスの皆は揃っているようだ。


「はーい! それでは夜の肝試しを行います。矢印の看板に従って進んで下さい。けして道を外れたらいけませんよ? 先に進んで祠が見えたら、近くに札が置いてありますので、それを持って帰ってきてください」


 七橋先生がそう宣言すると、クラスの子が手をあげて質問をした。


「先生、一人ずつ行くんですか?」

 

「いいえ、ペアを組んで頂きますので皆さん自由に―――」


 七橋先生がそう言うと一斉にみんな俺のことを見てきたが、正面から時雨が抱き着いてくる。


「雪は私とよ。そうよね? 雪」


「まぁ、そうだな」


 クラスの子達が舌打ちしたり、忌々しい目で時雨を見ているが、時雨はどこ吹く風状態だ。

 たまには他の子とも思いはするが、今日は時雨の言うこと聞かないといけないし、何よりこういうの時雨は苦手だからな。

 傍に居てやりたい。

 無理だと察した子たちは班の中で、それぞれペアを組み始めた。


「雪君と行きたかったなー」

「いやー、あのシグシグ剥がすのは無理だと思うよ?」


「悪いな、時雨は怖がりだから、傍に居てやりたくてな」


「誰が怖がりよ。適当なこと言うならその口塞ぐわよ。私の口で」


「いつも塞いでるだろ」


「時雨ちゃん怖がりなんだ?」

「へぇー? シグシグにも怖い物あったんだね」


「違うって言ってるわよね? その耳は飾りかしら?」


「そういうことにしておいてあげますね。 お姉ちゃんですから!」

「シグシグにも可愛いところあったんだねー」


「雪、貴方のせいで誤解されたから、ちゃんと責任取ってもらうからね」


「ハイハイ」


 時雨の問いかけにぞんざいに返答すると、時雨が俺の両頬が引っ張ってきた。

 本人を見ると、頬を膨らませ、上目遣いで俺のことを睨んできている。

 あざと可愛いな……こういう表情もするのか。


「ペアはできましたか? それでは順番に並んでもらって―――」


 七橋先生が列整理を行い、最初のペアが動き始めた。

 森の中に入る道は三方向あり、それぞれ別の道のようだ。

 その道ごとに生徒が並んで待っている為、それほど待つことはないだろう。

 俺達は今回二番目なので五分ほど待ってから出発した。

 夜の森の中を懐中電灯で照らしながら時雨と手を繋いで歩いていく。


「こうやって学校に行く以外で時雨と二人っきりで歩くのって初めてだな?」


「そうね。どうせ二人っきりなら、街中とかでちゃんとデートしたかったんだけど」


「夜の散歩もいいじゃないか」


「こんな森の中なんて、雰囲気も何もないじゃない」


「意外と気にするのな?」


「それはそうよ。好きな人と二人っきりで歩けるのは嬉しいけど、楽しめないじゃない」


「怖いから?」


「怖くないわよ。いい加減しつこいんじゃないかしら? 今日寝たくないってことね?」


「おーけー、俺が悪かった。謝るからちゃんと寝かせてくれ」


「ふん……」


 時雨は唇を尖らせ、如何にも不機嫌ですとアピールしている。


「はは、時雨は可愛いな」


「唐突に何よ、そんなんじゃ機嫌治らないわよ」


 せっかくの二人っきりだ。

 いつまでも不貞腐れさせる訳にはいかない。

 俺は立ち止まり、時雨を抱き寄せて、時雨の唇に俺の唇を重ねた。


「んっ―――」


 俺は時雨の唇を啄むようにキスをすると、時雨の方から俺の口の中に舌を入れてきた。


「んんっ……んっ……」


 時雨はテンションが上ってきたか、強く俺を抱きしめ返し、俺の口の中を蹂躙し始めるが、俺はゆっくりと時雨から顔を離した。


「愛してるぞ、時雨」


「……雪、ベッドに行きましょう?」


「こんな森の中にあるわけないだろ」


「じゃあ、ちょっとこの道から外れましょ」


「外でするのは上級者すぎるだろ……コテージに戻ったら相手してやるから、な?」


「……今日は3回ね」


「遅くならないようにな」


 そう答えると時雨は俺を抱きしめるのをやめ、腕に抱きついてきた。

 時雨の機嫌も治ったのでそのまま道を進んでいると、祠が見えてきた。

 札がおいてあったのでそれを取り、帰り道を進んでいく。

 来た道を戻るのではなく、帰りの道があるようだ。

 帰りの道を進んでいくが、特に何事も無く、無事に帰ってくることが出来た。

 そのままクラスメイト達の所に戻るが……思った以上にクラスメイトが残っているな? 

 そして施設の人と七橋先生が何かを話しているようなので、近づいてみた。


「ですので、直ぐに中止してバンガローに戻って下さい。私は森に入った子を連れ戻して来ますので」


「わかりました。ご報告ありがとうございます」


 ちょうど話が終わったのか、施設の人は森の中に走っていた。


「先生、何かあったんですか?」


「よかった。大淀君は無事ね。実は夕方位に森の中で熊を見かけたらしくて、職員の人が確認したらしいんだけど、見つからなく……今日私達が肝試しすることを忘れてたみたいだから、さっき伝えてくれたのよ。見当たらなかったらしいから多分大丈夫だと思うけど、念の為中止しましょう」


「そうなんですね」


「ちなみに大淀君達は何か見かけなかった?」


「特には」


「そうですか。それじゃ「せんせーーーい!」」


 大声で走りながら、愛羅が肝試しの道を逆走してきた。

 その顔には汗が浮かび、焦燥した様子だ。


「桃園さんどうしました?」


「ハァ、ハァ、ハァ……く、熊が!?」


「!? 居たんですか!? 怪我はありませんか!?」


「あ、あーしはないけど、サクサクが! 熊に追われて―――」


 俺はその言葉を聞いて、愛羅が来た道を走り出した。


★********★

遅くなってすみません。

次話は内容は決まってますが、じっくり書きたいので、少々お待ち下さい。


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