第120話 レクリエーション

 昼休憩も終わり、コテージに帰って体操服に着替えて、総合施設の隣にある広場に移動した。

 クラスの子たちも続々と集まり始めている。

 全員揃った所で先生が説明を始めた。


「それでは皆さん! レクリエーションの時間です! ドッチボールをしますので、半分に分かれます。出席番号の偶数番号は右側、奇数は左側に分かれて下さい」


 ドッチボールね。昔、高校の入学した時もあったなー。あの時はバスケだったけど。

 俺の番号は偶数なので右側に移動した。

 俺と同じ班になったのは―――


「お姉ちゃんが守ってあげるからね!」

「お兄様、頑張りましょう!」

「おぉ、我が伴侶よ! 再び戦場で共に戦うことになろうとはな!」

「あら、雪、同じチームのようですわね? 勝利を目指しますわよ!」

 

 桜と俺によく話しかける子たち数人が一緒だ。

 

「くっ……雪、愛想振りまかないで頂戴ね」

「ユッキー、勝負だ!」


 時雨と愛羅は別チームになった。

 各自準備体操を行い、それぞれのチームがコート内に入り、数名が外野に向かう。

 そして、中央に七橋先生がやってきて、最初のボールを決める……七橋先生が上空にボールを上げるので、そのボールを奪い合う……バスケで言うジャンプボールを行う選手が中央に向かう。

 俺のチームからは俺が立候補して、俺が前に出た。

 相手チームからは―――


「にしし、いきなり勝負だね、ユッキー!」


 愛羅が前に出てきた。


「はは、俺に勝てるかな?」


「へぇー? ユッキー自信あるんだ?」


「まぁな」


 前世でバスケをやっていた頃、身長は他の部員に比べれば平均並みだが、ジャンプ力の高さはピカイチでよくジャンプボールをしていたものだ。

 俺と愛羅が位置に付き、七橋先生が笛を鳴らしてボールを上に上げた。


 「「っ―――!」」


 俺は久しぶりに全力でジャンプをする。

 普段から運動はしているおかげか、愛羅より先にボールに触れ、自コート側にボールを弾くことたできた。


「しゃー!」

「ユッキーやばっ!」


 地面に着地すると同時に愛羅はバックステップで後ろに下がっていった。

 俺が弾いたボールは同じチームの子が取り、すぐに相手にボールを投げる。

 そこから一人、また一人と相手も味方も脱落していく中、俺は生き残っていた。

 生き残っていたというか―――


「なんか俺、狙われなくね?」


「雪君に当てたら、外野で自由に出来るからじゃないかな?」


 桜に言われて外野の方に耳を傾けると…………


「早く雪君に当てて!」

「そうよ! 坂間さんが相手チームにいる今がチャンスなんだから!」

「雪君とおしゃべりしたり、お触りしたいのに!」


 ……なるほどな。


 俺はボールが行き交うのを眺めていると徐々に人がコートから減っていき、決着の時がきたようだ。

 俺のコートには俺だけしか残っておらず、相手のコートには―――


「雪、大人しく投降しなさい」

「にしし、ユッキーだけになっちゃったね?」

 

 時雨と愛羅が残っている。

 そしてボールは、今始めて俺の手元にきた。


「最後の一人だからって投降するわけないだろ。むしろ愛羅と勝負したいし、時雨が投降してくれよ」


「いやよ、メリットがないじゃない」


「夜寝る前まで時雨が俺のことを好きにするっていうのはどうだ?」


「乗ったわ」


「ちょっとシグシグ! 何買収されてるのさ!」


「外では他の雌犬が邪魔するし、部屋にいたら桜が邪魔するんですもの。それを雪が断って私を優先するというなら選択肢は一つよ」


 そう言って時雨が近づいてきたので、俺は優しくボールを投げて時雨に当てると時雨は外野に歩いていった。

 もちろん外野ではブーイングが起こっている。


「ちょっと坂間さん! 何してるんですか!」

「雪君を外野に出さないと何もできないじゃないですか!」

「絶対雪君と何か交渉したでしょ!? 公私混同はんたーい!」


「負け犬がワンワン鳴いてるわね。発情期かしら? いやらしい」


 時雨は外野のブーイングを一蹴して堂々と立っている。


「さて、勝負だな? ピュアラ」


「ピュアラって言うな! 絶倫の民!」


「だーれが絶倫の民だ! というかなんで知ってるんだよ。まさか読んだのか?」


「ふふん! あーしもウミウミからタイトル聞いて、友人から貸してもらって読んだよ! これであーしもピュアラ卒業だし!」


「知識だけ無駄につけても、現場で何もできないんじゃ意味ないぞ? ムッツリピュアラ」


「誰がムッツリだ!」


 愛羅の頭に血を上らせたので俺は問答無用で愛羅にボールを投げるが、愛羅はボールを受け止めた。


「っう……ユッキーいいボール投げるじゃん!」


「さすがハイスペムッツリピュアピュアギャルだな」


「どんどん呼び名を伸ばすな!!」


 怒りに任せて投げたボールを俺は受け止める。直ぐ様愛羅にボールを投げ返すようにするが……俺は愛羅の横に向かって投げた。


「はっ? どこに―――ちょ!?」


 俺は外野で待っている子にボールを投げたのだ。

 愛羅は飛んできたボールを避けるが、驚いて体勢が崩れてしまい、地面に尻をつけてしまった。


「仕留め損ないましたわ。けど、次は避けられるかしら?」


 クラスの子の発言に愛羅が慌ててボールを目で追うと、既に桜が投げるモーションに入っていた。


「愛羅ちゃん! メッ!」

「くっ!」


 急いでその場を動いたが―――


 バン!

 桜が投げたボールは愛羅の足に当たり、七橋先生の笛が音を鳴らした。


「そこまで! 勝者偶数チーム!」


 イエーーイ!


 俺と同じチームだった人たちが外野で喜んでいる。


「ちょっとユッキー! 一騎打ちじゃなかったの!?」


「いつから一騎打ちになったんだ? 勝負しただけだろ? ボールを奪い合うのとボールを投げ合うので、俺の一勝一分だな?」


「はぁぁぁ!? ちゃんと勝負しろし!」


「なんで負けたか、明日まで考えとくんだな!」


「アホー!!」


 プンプン怒っている愛羅に勢いよく背中を叩かれた。


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