記念SS 遊園地に遊びにきた!④
俺達は病院内に入り、辺りを見渡した。
「けっこう暗いね」
「そうだな」
病院内は明かりは最小限とばかりにいい感じの薄暗さを保っている。
廊下の方を見ると非常灯が光っている為、足元はよく見えそうだ。
演出の為か、エアコンが効いており、少し肌寒く感じる。
「何人かあそこ人いるけど、なんだろうね?」
「ん? 入院患者っぽい服着てるし、お客さんとかじゃなさそうだな」
入院患者っぽい人達は下を向いているので顔は見えない。
「そ、総合受付は正面のようね? 早く行きましょう?」
「うーん、それだとつまんないからちょっと聞いてみようか?」
「はっ?」
そう言って海は、下を向いている患者の元へと歩いていく。
もちろん、時雨は手を繋いでいるので海に引っ張られる形でついていく。
俺も時雨と手を繋いでいるのでおのずとついていくことになるのだが……
「すみませーん、総合受付ってどっちかわかりますかー?」
「なんで話しかけてるのよ!?」
まさかの海が話しかける行為に時雨が驚いているが、話しかけてもこういうのって反応しないんじゃないか?
と思っていたが……入院患者の一人がゆっくりと顔をあげた。
「ひぃぃ!?」
入院患者の顔は目と鼻がなく、平らな顔をしていた。
「のっぺらぼうだったな」
「だねー」
そして、のっぺらぼうは総合受付があるであろう方を指さした。
「すいません、ありがとうございましたー」
「バイバイのっぺらさーん」
俺と海は時雨を引っ張りながら指差された方へと歩きだす。
「ちゃんとあんな感じにいる人もお化け役になってるんだね」
「そうだなー。ちゃんと反応を示したのは意外だったな」
「やっぱり話しかける人もいるんじゃない?」
「だろうな」
「……時雨姉、もうちょっと自分で歩けない?」
時雨の方を見ると既に顔が引き攣っており、帰りたそうにしているが、もう遅い……
「時雨、もうあきらめろ。ここまで来たなら前に進むしかないんだ」
「あ、あ、あ、歩いてるわよ! ちょっと足が痺れただけよ!」
もはや、ツッコむまい……
そして俺達は案内板通りに総合受付に向かうが、道中人はいない。いや、人っていうかお化けっていうかあれだが。
道中の扉はどこもしまっているが、通路は血糊でべっとりだし、扉の向こうから呻き声が聞こえてくる。
「あーあーあーあーあーあーあーあー!」
時雨は聞こえないようにする為、ずっとあーあー言っている……
そして、歩いていると総合受付にたどり着いたが、そこには最初の受付のお姉さんのように
血まみれのナース服を着た人がいた。
「……入院希望者の方ですね? 本日はどのコースをご希望でしょうか……?」
看護師が一枚のメニュー表を俺達に渡してきた。えっと何々……
『①人体魔改造コース 貴方の体を理想的な姿に作り変えます。 ②集中治療コース 貴方の体の悪い部分を集中的に治療致します。 ③廃人コース 貴方の体を頂きます。』
③だけおかしいだろ……
「これって難易度的なやつなの? それともコースによって演出が変わるの?」
「……ご希望のコースによって治療方法が変わります」
「ってことは演出が変わるってことじゃないか?」
「ふーん? どれにする?」
「すみません、入り口で巨乳好きならいいものが見れるって聞いたんですが、どのコースがおすすめですか?」
「ふふふ……断然①です……」
「①にしようぜ」
「……お兄ちゃんさぁ?」
「受付であんなこと言われたんだから期待しちゃうだろ?」
「はぁ……別にいいけど、お願いだからホイホイついて行くのだけはやめてね?」
「わかってるって!」
「……では、人体魔改造コースをご希望なので2階の210号室へ向かって下さい。二階へはエレベーターか、右にある階段をお使い下さい。」
「わかりました」
「どっちでいく?」
「雰囲気楽しみたいし、階段でいこうぜ」
「おっけー! 時雨姉いくよー」
「あ、あの……トイレに行きたいんですが……どこですか?」
「「…………」」
「……ふふふ、左へ行くとありますよ」
「ちゃんと使えるの?」
「……えぇ、もちろん。よくあることですから」
こういうパターンも想定してるとはやるじゃないか。
「でもどうせ、何か仕込んでるんでしょ? 時雨姉大丈夫そ? 一緒に入ってあげるけど」
「……私、替えの服なんて持ってきてないんだけど……」
「……すみません、トイレだけは勘弁してあげてくれませんか? 流石にこのあとノーパンは可哀想なので……」
「……ふふふ、連絡しておきます」
臨機応変の神対応だな……
「じゃあトイレ行こうか」
「そうだな」
「え、えぇ行きましょう」
そして俺達は左へ進み、目的地のトイレを発見した。
「念のため私ついていくから、お兄ちゃんはここで待ってて」
「おう」
そう言うと海と時雨はトイレの中へ入っていった。
暇なので周りをキョロキョロしていると、俺の横にある扉が急に開いた。
俺は思わず横を見ると、中から人が出てきた。
白いシャツに赤いスカートのおかっぱ頭の女の子だった。
「……花子さんか? なんでそこから出てくるんだよ」
「トイレ追い出されちゃったから……」
「……すぅー、大変申し訳ございません……」
「……お兄さん代わりに遊んで?」
「おう、何するんだ?」
「おままごとと、なわとび、どっちがいい?」
……あれ、なんだっけこれ? 昔ネットで調べて見たことがあるな。えっとー……
「あー……なんだっけかなぁ、おままごとだと包丁で刺されて、なわとびだと首をつられるんだっけ?」
「違うよ?」
「あれ? 違ったか」
「おままごとだと、私と夫婦になって一生私とトイレで暮らすの。なわとびだと、お兄さんが私を縄で縛って好き勝手するの」
……別の意味でホラーだったわ。
「それ、相手が男じゃないと成立しないよね?」
「うん、男性限定だよ」
「……抱きしめてあげるから、それでチャラにしない?」
「……!? い、いいよ?」
許可を貰ったので俺は花子さんを抱きしめてあげることにした。
「はわぁぁー……!」
花子さんは今にも成仏しそうな恍惚な顔をしている。
この世界の除霊方法はこれが正解だったのか。
「お兄ちゃんおまた……何してるの?」
「あー、責任取ってた」
「責任?」
「花子さんがトイレ追い出されたから、遊んでくれってさ」
「それ遊ぶじゃなくて、抱きしめてるよね?」
「あぁ、こうしないと俺は、花子さんと一生トイレで過ごすか、花子さんを縄で縛らないといけなかった」
「……意味がわからないけど、もう十分でしょ!」
海にそう言われたので、俺は花子さんを解放してあげた。
「はわぁー……今日はもうお家帰る……」
それだけ言い残すと花子さんはトイレの中に入っていった。
「幽霊って抱きしめると除霊できるんだな?」
「そんな訳ないでしょー? ほら、210号室に行こう?」
「おう。時雨は大丈夫か?」
「私はずっと平気よ?」
「……ならいいか」
時雨が大丈夫と言ってるので、俺達は2階を目指し、階段へ向かった。
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