記念SS 遊園地に遊びにきた!③


 さて、いよいよ俺達は件のお化け屋敷までやってきたわけだが……

 

「ほえぇー……けっこう雰囲気出てるね」


「だな。何でもマジもんの廃病院を使ってるらしいからな」


「そうなんだ。通りで凝ってると思ったよ」


 おばけ屋敷の入り口ではスタッフが血まみれのナース服を着て待っている。

 

「時雨、既に大丈夫じゃ無さそうな顔してるが、一応聞くな? 大丈夫か?」


「……へ、平気よ。中に入りましょう。アータノシミダナー」


「時雨姉叫んでもいいけど、ビビッて走り回らないでね? 危ないから」


「走り回らないわよ! 子供と一緒にしないで頂戴!」


「走り回らないように手握っとくか?」


「……別に走り回らないけど!? 雪が怖いなら握っといてあげるわよ!」


 そして時雨は俺の返事を待たずに絶対離さない意思として恋人繋ぎをする。

 

「あ、お兄ちゃん私も握りたい!」


「おう、もちろんだ」


 海の場合は単純に手を握りたいだけだろう。

 だって握ってる握力が違うもん。


「ふふ、海も手を握りたいだなんて怖いのね? 雪なんか2人に握ってもらってよっぽど怖いのね!」


「「……ソウダネー」」


「さ、さぁ行きましょう! お化けなんて怖くないわ」


 そうして俺達は、とりあえず受付に来たわけだが……


「入院ご希望の方ですか……?」


「はーい! そうでーす!」


「では……内容を読んでこちらにサインをお願いします……」


 渡された紙にサインをする為、内容を読む―――


『当院内で起こった出来事に病院側は責任を持ちません。当院内では何があっても患者、看護師、医師への暴行はおやめください。また、行方不明になっても、捜索されることはありません。死体で発見された場合、責任を持って当医院で使用させて頂きます。』

 

「へぇー、凝ってるなぁー」


「だねー。行方不明になってまだ見つかってない人いるのかなー?」


「ひっひっひ、いますよー。何人も……大切に使わせて頂いております……」


「いや、見つけてるじゃねぇか」


「何に使われるんだろ? 人体実験?」


「ひっひっひ、それはもう……体のパーツを継ぎ接ぎして理想の体を……ひっひっひ」


「合成されるのか。理想の体ねぇ?」


「お兄ちゃんがこの病院の人だったら、みんな巨乳になりそうだね。それどころか爆乳になってるかも」


「……地味に想像できるから否定できないわ」


「……お兄さんは巨乳がお好きで?」


「大好きです」


「……ひっひっひ! ならきっといいもの見れますよ……」


「まじで!?」


「この病院別の意味で恐怖が沸いてきた……お兄ちゃんがおっぱいお化けに攫われる……」


「巨乳の美女とか美少女に誘われたら、ついて行くのは男の性なんだよなぁ」


「帰ったらいっぱい揉んだり吸ったりしていいから、ついて行かないでね?」


「善処はする」


「もう……! じゃあ、さっさと書いて入っちゃおうか」


「そうだな」


 俺と海はサラサラとサインをして受付のお姉さんに渡した。


「じゃあいくかー」


「そうだねー……時雨姉は……」


 時雨を見ると青ざめた顔をして固まっていた。


「しぐれー? 生きてるかー? まだ外だぞー?」


「時雨姉、まだ早いよ。中に入ってからその顔になりなよ」


「だ、だって……行方不明になったら捜索されないし、死体で使われるって……」


「「…………」」


「ほ、本当にいくの!? 人体実験に使われるのよ!?」


「時雨ってたまにアホになるよな」


「うん、たまにポンコツになるね」


「なんでよ!?」


「やっぱ怖いならここで待っとくか? 俺と海はサインしちゃったし中に行ってくるけど」


「私を置いて行くつもり!? 私が行方不明になってもいいの!?」


「いや、中に入らなければ問題ないだろ」


「時雨姉って怖いとIQ3位になるんだね」


「怖くないって言ってるでしょ! 私だけおいて行くなんてやめてよね!」


 そう言って時雨はサインをしてしまった。

 

「あぁーあ……引き返す最後のチャンスだったのに」


「時雨姉、私も握っておいてあげるから」


「えぇ! 大丈夫、大丈夫よ!」


「ひっひっひ! それでは3名様入院ですね? ではご説明させて頂きます」


 そして、ナースのお姉さんから説明が行われた。

 何でも俺達は最初に総合受付に行き、入院する病室を聞く必要があるらしい。

 そのあとは病室で担当の看護師が居るはずだから、そこで説明を受けるそうだ。

 

 俺達は説明を受けたので病院に入る為、入り口までやってきた。

 

「ふーん? 総合受付に行って、病室行って、看護師から説明受けるんだね。絶対看護師なんかしてくるじゃん」


「それなー。そのまま襲われるか、そこから病院脱出するように説明受けるかだな」


「病室行くまでにどんなどっきりしてくるか楽しみだねー!」


「逆に不安を煽る為に無いんじゃないか? 看護師の説明受けてから本番的な」


「あぁー! ありえそう!」


「な、なんであんた達はそんな平気なのよ……」


「俺はけっこうホラー好きな方だからな」


「私も別に信じてないし」


「……そ、そんなものなのね」


「今からでも入院やめとくか? 怖いんだろ?」


「べべべべ、別に怖くないわよ! 何度言わせるのよ!」


「逆に何度確認させるんだよ……」


「まぁ、いつまで経っても中に入れないしさっさと中に行こうか」


「そうだな。ほら、時雨手繋いでやるからいくぞ」


「そ、そうね! タノシミネー!」


 時雨の強がりを無視して、俺達は病院内に入って行く。

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