第110話 作るのはみんな大好き定番のあれ


 三人で話しながら、第一炊飯場に着くとまだ時間に余裕がある為、クラスの子がチラホラいるだけだった。


「そういや、今更なんだが、他のクラスの奴とかいないのか?」


「他のクラスの子は別の場所だよ。全クラスが同じ場所に集まっちゃうと流石に狭いからね」


「そうだったのか。なら、クラスの子を覚えやすいな。正直まだクラスの子がうろ覚えだからちょうど良かったよ」


「必要ないわ」

「別に覚えなくていいと思うよ?」


「……俺は友達を作りたいから頑張って覚えるぞ?」


「友人じゃなくて妻にしそうなんですもの」

「雪君、クラスの子全員と結婚も十分多いからね?」


「友達って言ってるよね!? 友=妻じゃないから!」


「雪様!」

「御主人様!」

「おぉ、我が伴侶よ! 既に現世に降臨していたか!」


 クラスの子が何人か俺の元に集まってきた。


「雪様、あとで私の班の料理も味見して頂けませんか?」

「おう! 俺も作るから、少し交換しないか?」

「! 雪様はお料理されるのですか!?」

「多少な? 家で晩御飯作ったりしてるけど、そんなに美味いわけじゃないぞ」

「ぜひ交換してください! 私の処女もあげますので!」

「わか「「アウトー!」」」


 スパーン!


 時雨にハリセンで叩かれ、桜は俺の腕を掴み、桜の方に引き寄せられた。


「作った晩御飯ならギリギリのギリギリで見逃したけど、もう妻にしようとしてるじゃない」

「雪君、あとで相手してあげるから、メッ! ですよ?」


 そのままクラスメイトと時雨が口論を始め、俺の傍にメイド服を着た子が寄ってきた。


「御主人様、なぜ桃園様を背負われているのですか?」


「なかなか起きてくれなくてな……? というか、ガチのメイド服に着替えてるのか」


 いつも俺のメイドを志望している子がちゃんとロングスカートタイプのメイド服を着て来ている。


「えぇ、ここでは自由ですので、正装に着替えさせて頂きました。桃園様のことは、承知しました。わたくしめにお任せ下さい」


 そう言うとメイドさんは愛羅に近寄り、愛羅の鼻と口を手で塞いだ。


「……―――? ―――!? 〜~〜~!? ぶはぁ!? なにすんのさ!?」


「おはようございます、桃園様。御主人様に苦労を背負わせるのは看破出来ませんので」


「ん? なんであーし、ユッキーに背負われてるの? というか、外じゃん!?」


「おはよう、愛羅。起きないから背負ってきたんだよ。靴は時雨が持ってるから受け取ってくれ」


「そうなんだ! あんがとユッキー! あーし、一回寝ると途中で起きにくいんだよね! がっつり寝た時はスッと起きれるんだけど! ちょっと靴もらってくる!」


 そう言うと、愛羅は俺の背中から降りて、時雨の方にむかっていった。


「助かったよ。ありがとな!」

「これしきの事何の問題もございません。それより、よろしければ私にも後ほど御主人様が作られた料理を、分けて頂けないでしょうか?」

「お安い御用だ!」

「ふふ、楽しみにさせて頂きます」


 それだけ言うとメイドの子は下がって行き、代わりに魔に魅入られた者がやってきた。


「我が魂の片割れよ。見るがいい、既に今宵の晩餐の食材が置いてあるぞ!」


 魔に魅入られた者が指を差した方向を見ると確かに食材が置かれていた。


「誠か! ジャガイモ、人参、玉ねぎ、カレールー……ということは班ごとに暗黒のスパイスが渦巻く、魔力が凝縮された黄金のスープを作るのか」


「うむ、永遠の白き輝きを放つ神聖なる粒も置かれてることから、銀の器で神聖なる粒を精錬し、一緒に食すのであろう」


「なるほどな。我の腹を黄金のスープと神聖なる粒で満たし、動けなくしてやろうという算段か」


「そのようだな」


「ねぇねぇ、何の話してるの? お姉ちゃんまったくわからなかったよ?」


「ふっ、桜には荷が重いようだな」

「しかり。神藤さんとは言え、我らの対話に入るにはまだ早いようだな」


「カレーが楽しみってこと?」


「外界の者の言い方をするならそうだな!」

「うむ、我らの言葉を汝らの言葉で通訳するならそうなる」


「雪君って中二病もいけるんだね?」


 桜が呆れた目で俺のことを見ている。


「男は大きくなっても幼き日のことを、思い出すものだ」


「そっかー……」


「あー……時に、我が伴侶よ? 我も汝が作った……」


「分かっているさ、我が同胞はらからよ。汝も我が生み出した物を食べたいのであろう? 共に共有しようではないか」


「流石我が魂の伴侶! 我の心は汝に通じているのだな。ならば今宵、汝の元に参り、古の契を「はい、アウトー」」


 桜が俺の前に立ちふさがり、魔に魅入られた者をブロックした。


「今日の夜はお姉ちゃんが雪君と過ごすから認められません!」


「くっ……今生の敵はまた強大だな……我が伴侶よ! 必ず汝を迎えに行くから待っていてくれ!」


 そんな捨て台詞の残して魔に魅入られた者は同じ班の子の元へ帰っていった。


 そして、いい時間になったからか、クラスの子が続々と第一炊飯場に集まり始めた。


★********★

お ま た せ しました!

今後定期的にストック貯めるためにお休み頂くかもしれませんが、ユルシテ!

あとストック無くなるので毎日ではなく、2日に一回にします……


レビューを書いて頂きました! ありがとうございます!


応援、フォロー、星を付けて頂き誠にありがとうございます!

創作意欲に繋がるので応援、星を何卒・・・!

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