第108話 ピュアラ

 昼食を終え、俺達は再度歩き始めた。

 多少回復はしたものの、足は既にパンパンだ。


「あー……今日はゆっくり風呂入りたいわ」


「そうね。よく筋肉をほぐしておかないと、明日に響くわ」


「お姉ちゃんが夜マッサージしてあげるからね?」


「みんなでマッサージとかどう!? 一人を三人でマッサージすれば、直ぐに終わるし、みんなハッピーだよ!」


「はは、そうだな。愛羅の言う通り、みんなでマッサージしようぜ」


 そんな話をしながら、気を紛らわせ、歩みを進める。

 しばらく歩いているとやがて、建物が見え始めた。


「あれが泊まる場所か?」


「どうかしらね? それなりに大きな建物だけど」


 そのまま道なりに進むと大きめの建物が見えてきた。

 そこには施設の職員らしき女性が待っている。


「桜花七情学園の一年C組です。今日から三日間お世話になります」


 七橋先生が施設の職員の人に、挨拶をする。


「ようこそおいでくださいました。私は当施設の管理人です。わからないことが御座いましたら、どうぞお気軽にお尋ね下さい。明日からこちらの本館を使われてますので、場所を覚えておいてください。皆様が宿泊される施設はこちらの案内板にあるこの辺りの施設の『A〜I』の建物をご利用ください。男性の方が宿泊される施設はこちらの『AAA』にお泊りください。道に迷わないように各所に案内板を設置しておりますので迷った場合は案内板を探して、見て頂ければ現在位置が把握できます」


「ご丁寧ありがとうございます。それでは各班、『I』は先生が使用しますので、『A〜H』の好きな施設を選んで、今から二時間後、第一炊飯場に集合です」


「「「はい!」」」


 少し休憩してから晩御飯って感じだな。

 A〜Iは同じところにあるみたいなので、俺の班以外の全員がそちらに向かい始めた。


「んで? 『AAA』ってどこよ?」


 俺は案内板のMAPを覗き込みAAAを探すが……


「雪、その家みたいよ」


 時雨にお呼ばれ時雨が指さした方向には―――大きめの木造の一軒家が建っている。

 本館の隣かよ。近くで楽だけど、他の子達とはちょっと遠いな……

 俺達は家に近づき、扉を開いた。

 中は広々としていて、普通の家のようだ。

 リビングにキッチンも玄関から見える。

 玄関で靴を脱ぎ、リビングへ向かうとTVまでついている。


「すげぇな。普通に家じゃん」


「エアコンまで付いてるし、冷蔵庫は……食材入ってるわよ? 完全に別荘ね」

「ふふふ、合宿じゃなくて、普通に家族で来たいね、雪君」

「最高の3日間じゃん! ユッキーと同じ班でよかった!」


 時雨は台所を見て、桜はリビングのソファーに座り、愛羅は荷物を置いて家の探索に行ってしまった。

 俺はどうするかな……ベッドで横になりたいけど、さすがにこのままの状態で横になるとベッドが汚くなるよな? 二時間もあるんだし、軽くシャワーでも浴びるか。

 風呂とかも多分あるんだよな? 


「時雨、汗かいたから風呂場探して、シャワーあびてくるわ」


「いいわね、私も行くわ」

「お姉ちゃんも一緒に浴びる!」

「なんで桜も来るのよ!」

「お姉ちゃんも、汗流したいし、雪君を綺麗にしてあげたいから!」

「それは私の役目よ!」


「軽く汗流すだけだから大して洗うわけじゃないぞ? しっかり体を洗うのは夜にするから」


「お姉ちゃんが洗いたいの! 雪君は素直に洗われて!」


「わかったよ。軽くでいいからな?」


「ちょっと雪!」


 時雨が不満そうに俺の腕に抱きついてくる。


「別にいいだろ? ほら、時雨も軽く洗ってやるから」


 俺は問答無用で時雨の背中と膝に腕を回し、お姫様抱っこしてお風呂場を探し始めた。その後ろからニコニコ顔の桜が付いてくる。

 廊下の方に行くと、扉が開き、中から愛羅が出てくる。


「あっ! ユッキー! ここがお風呂で隣がトイレだったよ!」


「おぉ、そうか。軽く俺と時雨と桜でシャワー浴びるけど、愛羅はくるか?」


「う、うえぇぇ!? 3人で入るの!?」


「あぁ、桜が俺を洗いたいって言うからな」


「そ、そうなんだ? あ、あーしは……」


「まぁ、無理に一緒に入る必要はないから、先に入らせてもらうけど、俺達のあとに入ってもいいしな。汗流せるなら、愛羅も流したいだろ?」


「それは……そうだけど……」


「ん?」


「なんか、あーしだけ一緒に入らないのも、ちょっと寂しいっていうか……」


 一緒に入りたいけど、恥ずかしいって言うのが葛藤してる感じかな?


「なら、愛羅も一緒に入ろうぜ? みんなで入ったほうが楽しいだろ?」


「う、うーん……」


「ちょっと雪、愛羅まで巻き込まないで頂戴な」

「そうですよ、雪君。ピュアピュアな愛羅ちゃんに一緒にお風呂はまだ早いです」


 桜の発言に悩んでいた愛羅は固まった。


「ピュアピュアだけど、寂しいって思ってるなら誘わないと可愛そうだろ?」


「ピュアピュアな愛羅にそんな度胸ないんだから、誘うだけ無駄よ」

「誘われて断るのも勇気が必要なんですから、ここはそっとしておくのが正解です。ピュアピュアな愛羅ちゃんはあとで入るでしょうから」


 ふむ……どうするのが正解なんだろうか?


「……うがぁぁぁ! あーしも入るよ! あーしだって成長してるし!」


「別にピュアピュアのまんまでもいいんだぞ? ピュアラ」


「ピュアラって何さ!? あーし愛羅なんだけど!?」


「ほら、ピュアラをいじめないの。雪降ろして頂戴、ついでに着替えるから」

「お姉ちゃんも着替え準備しますが、ピュアラちゃんはどうしますか?」


「ピュアラって言うなぁぁぁぁぁぁ!!」


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