第107話 合宿場へ向かう道中


 俺達はバスから降りると、七橋先生からの話が始まった。

 

「はい、それでは合宿場まで、ここから歩いて向かいます。向かいますが……大淀君?」


「? なんですか?」


「一応、聞くけど……男の子は専用の車が準備してあるけど……乗りますか?」


 七橋先生が指さした方向を見ると一台の黒塗りの高そうな車が止まっていた。

 ……まぁ、俺は決まってるな。


「いえ、俺もみんなと一緒に歩きます。みんなと居たいですから」


「わかりました。では、向かいましょうか」


 そして、クラス揃って移動を開始する。

 舗装はされているが、周りは木しか見えず、ただただモクモクと歩いていく。

 最初の内は皆それぞれ、お喋りしながら歩いていたが、次第に口数も減ってきた。


「……毎朝筋トレして、学校にも歩いて通っているけど、きついもんはきついな」


「……そうね。それなりの距離歩いて、皆黙ってしまってるもの。一人を除いて……」


 時雨はチラっと黙ってない人物を眺めた。


「けっこう距離あるね! 大丈夫? ちゃんと水分補給してる?」

「しんどくなってきたけど、きっとそろそろ休憩だから頑張ろ!」

「あっはは! 思った以上にきついね! 多分あとちょいで休憩だからそれまで頑張ろ!」


 愛羅が色んな子を励まし回っている。

 さすがハイスペギャル、体力はんぱねぇな。


「雪君もそろそろ疲れてきた?」


 横には俺の様子を心配して、桜がやってきた。


「あぁ、それなりに体力がある方だと思っていたが、まだまだだな。そういう桜はまだ大丈夫そうだな?」


「ふふふ、優等生ですから! お家で運動もそれなりにしているんですよ?」


「さすがだな」


「そんな雪君にはこれをあげますね! はい、あーん?」


「? あーん……あぁ、飴か」


「はい! 疲れたときには甘い物が一番ですからね!」


「はは、そうだな。ありがとう」


「ユッキー! 大丈夫そう!?」


 愛羅も皆に話しかけ終わったのか、こちらにやってきた。


「それなりにしんどいけど、他の子よりは多少余裕がある感じだな」


「おぉー! ユッキーも体力あるね! バテバテの子もいるのに!」


「これでも運動はしてる方だし、桜から飴貰ったから少しだけ回復したってだけだよ。愛羅は元気だな?」


「にしし! 体力はあると思ってるからね!」


「さすがだな、ハイスペギャル」


「ハイスペックだとは思ってないけど、初日だしテンションは高いよ! じゃ、また他の子見てくるね!」


 それだけ言うと、愛羅はまた他の子のところへ行ってしまった。


「あの元気が俺にも欲しいよ」


「雪はもう少し落ち着きを持ってもらいたいんだけど……」


 そんな会話をしながら、歩いていると、休憩する為の広場みたいな場所に到着し、七橋先生が昼休憩の合図を出したので、時雨がビニールシートを広げ、俺と時雨と桜がそこに座り……


「あーしも混ぜてー!」


 愛羅も合流した。

 

「ふぅー……あとどれくらいかかるんだ?」


「しおり読んでないの? ここで7割位だからあと少しあるわよ」


「まじかよ……とりあえず、飯食べて休憩したいわ」


「そうね、そうしましょう」


 俺達はお弁当と取り出し、食事の準備を始めるが……


「……ヤバ」


 愛羅が絶望した顔をしている。


「? どうしたんだ?」


「お弁当忘れた……」


 それは……つらいな……


「そ、そうか。なら俺のやつを半分やるよ」


「! いいの!?」


「あぁ、さすがに、何も食べないときついだろ」


「あんがとユッキー!」


「愛羅ちゃん、私のもいいですよ?」

「私の分も少し分けてあげるわ」


 桜と時雨も分けてくれるようなので、俺の弁当の蓋を皿代わりにして……いや、予備の箸とかねぇわ。

 食べさせるしかないか。


「ほれ、愛羅、あーん?」


「えっ?」


「ん?」


「あ、あーんなの?」


「予備の箸とかないからな、さすがに手掴みじゃいやだろ?」


「そ、それはそーだけど……」


「あーんぐらい今更だろ? ほれ、あーん?」


「あ、あーん」


 少し恥ずかしがりながら、愛羅は食べている。


「お、美味しいです……」


「それは良かったよ。俺と海と時雨の合作だからな」


 そう、今日はお弁当が必要とわかっていたので、早起きして俺と海と時雨の三人で作ったのだ。

 だから俺と時雨の弁当の中身は同じだ。


「ほら、次だ、あー「「「雪君!!!」」」ん?」


 俺と愛羅の様子を見ていた、他の女子が集まりだして……


「雪君、私ともお弁当のおかず交換しよ?」

「雪様、私はあーんをして差し上げたいのですが……?」

「お兄様、食べさせ合いっ子しましょう?」

「我が伴侶よ。汝が手づから作った物を食べさせてくれないだろうか? 我も汝の為に作った物があるので……」

「ご主人様、メイドの手料理をどうぞ味わってください」

「雪、一緒に食べましょう? ほら、あーん?」


「発情した雌犬が群がってきたわ……」

「お姉ちゃんがすべて検問します。問題のある方はお帰り願うので、そのつもりで」


「普通に絡ませて欲しいんだがなぁ……?」


「ごめんね、ユッキー……」


 そのあと、なんだかんだみんなの相手をする俺だった……


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