第105話 オリエンテーション初日


「お兄ちゃん、夜にはちゃんと連絡してね? しなかったら、許さないから!」


「わかってるって! ちゃんと電話するようにするから安心しろ!」


 海は俺に抱きついてくると、そのまま長めのキスをしてきた。


「ん……早く帰ってきてね?」


「あぁ、わかってるよ。帰ってきたら、いっぱいかまってやるからな?」


「うん!」


 朝、玄関で海と別れを済ませて、時雨とともに学校へ向かう。

 昨日寝る前にバタバタと準備して、ちょっと大きめの鞄を持ってきている。

 二人して大きな鞄を持って、登校していたが途中で黒い車が横に止まった。

 桜かな? と思ったが……


「ごきげんよう、雪」


 桜と同じように、黒塗りの高級そうな車から出てきたのは、微笑みを浮かべた紫乃だった。


「おはよう、紫乃」


「ちょっと雪? いつの間に新しい女の子の知り合い作ったのよ?」


「この間の土曜日に、海と一緒に迷子を見つけてな? その時の保護者が紫乃だったんだよ」


「ふふ、その子が時雨さんかしら? 初めまして、紗理奈の友人の久遠紫乃よ。よろしくお願いしますわ」


「……生徒会長の? 坂間時雨です。雪の第二夫人です」


「ふふ、雪の恋人なんでしょ?」


「……はい、そうです」


「ふふふ、海ちゃんと違って時雨さんは冷静そうね?」


「あの、紫乃、悪いけど、そろそろ行かないと……」


「あぁ、そうですわね。荷物大変でしょうから送って差し上げますわ」


「いいんですか?」


「えぇ、かまわなくてよ。さぁ、こちらに」


 紫乃が車の扉を開けて、俺達に入るように促してくる。

 せっかくお誘い頂いたからお言葉に甘えることにした。

 時雨を先に入らせ、俺は真ん中に座るように入り、隣に紫乃が座る。


「出して頂戴」


 紫乃が合図すると、車が走り出した。


「ありがとう、紫乃。助かったよ」


「これぐらい何の問題もありませんわ。それより、今日からオリエンテーションですの?」


「あぁ、そうだよ」


「へぇー、確か男の子はロッジになるはずだけど、そこに時雨さんと一緒に過ごすのかしら?」


「いえ、コテージで班全員で過ごします」


「……わざわざコテージにしましたの?」


「理事長の計らいで、コテージになりました」


「……年上がお好きなのかしら?」


「……狙われているんです。妻の座を」


「……そ、そうですのね。さすがというかなんというか……それで、一緒に泊まるということは、班は全員身内で固めてますの?」


「身内というか友人ですね」


「ふふふ、そう。なら夜は楽しめるのではなくて?」


「まぁ、適当にトランプしたりできるようには道具持ってきてますね」


「トランプですか、TVゲームとかではないのですね? 普通の男の子はゲームを持っていくと聞きますが」


「そんな重い物持っていきませんよ。遊びに行くわけでもないんですから。普通に皆と親交を深めたいですし……そういえば、夜は他の班に遊びに行ったり、他の班が遊びに来たりとかってあるんですかね?」


「夜は門限付きですが、出来ますわよ。まさか、遊びに行くつもり?」


「まぁ、仲良くなったら、行ったり来てもらったりもありかなって」


 そう考えたら色んな女の子と、夜はおしゃべりしたり遊んだりできるのか……楽しみだな!

 けれどそれは時雨が認めないようだ。


「私達でブロックするから雪が行くことも、他の人が来ることもないから諦めなさいな」


「なんでだよ。友人作らせてくれよ」


「友人という名の妻を増やしそうだからよ」


「ただの友人だよ!」


「雪がしゃべると愛想振りまいて、妻にしようとするんですもの。ボールギャグ付けて、手錠で繋いだ状態なら……ダメね。それでも抱きしめたりしそうだわ。鎖でグルグル巻き状態でなら会ってもいいわよ?」


「ドン引きされるわ!」


「うふふふふ、時雨さんは冷静だけど、束縛するタイプなのね?」


「……雪が心配だから拘束するだけです」


「ふふ、そうですわね。他の男と大分違いますからね」


 そんな会話をしていると、校門まで近づいてきた。


「ここでいいわ」


 紫乃が言うと、車は止まり、ドアが開いた。

 俺達が車を降りるとそのまま車は去っていく。


「ありがとう、紫乃。助かったよ」


「いいんですのよ。朝から笑わせてもらいましたから。それじゃ、雪。ごきげんよう」


 紫乃は俺に挨拶するとそのまま校舎の方へ向かっていった。

 俺と時雨もそのまま教室の方へ向かい、みんなに挨拶を済ませて、席についた。

 時雨や桜や愛羅と喋っていると、七橋先生が教室に入ってきて、朝のホームルームが始まった。


「皆さん、おはようございます! それではバスに乗りますので、準備をしてください」


「雪、隣は私が座るからね?」 

「雪君、お姉ちゃんが隣に座るから眠たくなったら膝枕してあげるね?」

「あーしはユッキーの近くの席にいるから、バスって時間掛かるらしいし、一緒にお菓子食べようね!」


 俺の席の近くは身内で固められるようだ。


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