第104話 合宿前夜


 時雨と干菜さんとイチャイチャしたあと、三人でリビングに向かうと……


「おはよう、お兄ちゃん。今日の夜は私の番だからね?」


「わかってるって。凪さんとはよかったのか?」


「うん、お兄ちゃんが居ない間、ママと寝るから! それから今日はママのお引越しするから、お母さんとママと一緒に出かけるね?」


「俺も手伝おうか? 重い物もあるだろ」


「いいの!」


「あぁ」


「なら、私も行くわ。人手は多い方がいいでしょう?」

「そうね、人手は多い方がいいでしょうし、車も多い方がいいから、私も行くわね」


「ありがとう時雨姉! 干菜さん!」


 そんな話しの流れになり、母さんと干菜さんが車で凪さんの家に向かった。

 着いてみれば、本当に小さい年季の入ったアパートだ。

 凪さんが鍵を開けて、中に入れてもらったが、物が少なく、海の部屋と似た感じがした。

 そのまま引っ越しの荷物をみんなでまとめて、俺と母さんと海と時雨は家に戻り、凪さんと干菜さんは色々と手続きに行くようだ。

 物が少ないという理由もあるが、母さんの車は大きめのファミリーカーだから、荷物がけっこう入る。母さんが言うにはなんでも―――


「雪が産まれたらからこの車も、格安ローンで買えたのよ?」


「へぇー? それも男性保護省の特典ってこと?」


「そうよ」


 こう考えると本当に男性保護省の特典って色々あるんだな。

 なんだかんだ毎週種を提出して、お金も貰ってるし……

 誰に使われるか知らないけど、これだけ色々特典があるなら、素直に提出していい気持ちになるな。

 いや、逆にここまでしないと提出が渋られるのか……?

 他の男の知り合いなんていないからわからんな。


 そして、家に到着して空いてる部屋に荷物を運ぶのかと思えば……


「お兄ちゃん、荷物は私の部屋に運んで」


「ん? 別々の部屋じゃなくて、一緒の部屋にするのか?」


「というよりも、私の私物をお兄ちゃんの部屋に移動させようかなって、どうせ私の部屋があっても、ずっとお兄ちゃんといるから必要ないし」


「一人の時間とか欲しくなったりしないのか?」


「どんな時?」


「んー……勉強したい時とか?」


「お兄ちゃんが部屋で静かにしてくれるなら、必要ないかな。私が集中したい時に邪魔したりしないでしょ?」


「しないな。着替えたりとかも俺の部屋でするのか?」


「うん、別に恥ずかしくもないし。あっ、でもお楽しみの時は部屋から出てね? 着替えてるところ見られたら意味ないから」


「あぁ、それはかまわないが……」


「逆にお兄ちゃんは一人になりたい時あるの?」


「んー……今のところないけど、喧嘩した時とか?」


「お兄ちゃんが他の発情した犬に愛想振り撒かなければ、喧嘩することないと思うよ?」


「普通に接しただけで、愛想振り撒くことになるんだから無理だろ」


「お兄ちゃんは学校の勉強より、一般常識の勉強が必要だね」


「もう十分だよ……まぁ、俺も一人でいるより海や時雨が居てくれた方が嬉しいから問題ないな」


「あら、なら私の私物も雪の部屋に移していいかしら?」


「時雨も移すのか? 別にいいけど、窓越えるだけじゃないか」


「机を運びたいのよ。勉強する時はこっちでしたいから」


「わかったよ。なら、海の私物運んだあとに時雨の机な」


「えぇ、そうしましょう」


 と言った具合に、その日はみんなで引っ越し作業に明け暮れ、あっという間に夜になった。

 なんだかんだ率先して物を運んでいたので、クタクタだ。

 リビングのソファーの真ん中に座り寛ぐことにした。


「あー、疲れたなぁー」


「ふふ、お疲れ様、雪さん」


 凪さんは俺の後ろから、頭をごと包みこんで抱きついてくる。

 このヘッドレスト最高だな!


「はは、ありがとう、凪さん」


「疲れたでしょう? 今日は私と干菜さんで綺麗にしてあげるわね?」

「そうそう、凪さんに色々教わって試させてね?」


 干菜さんは俺に正面から抱きついてくる。

 これが母親サンドですか……非常に良い物だな!


「いいですね。じゃあ俺が二人を綺麗にして「はいアウト!」「アウトー!」」


 スパーン!


 時雨と海がそれぞれの親の頭をハリセンで叩いた。


「雪は私たちが洗うわ」

「ママ! お兄ちゃん取らないで!」


「取ってないわよ。人聞きの悪い。労ってあげようとしただけじゃない?」

「そうよ! 反抗期の娘が教えてくれないから、凪さんに聞くだけでしょ?」


「聞く必要はないわ。私たちが一生雪を綺麗にしてあげるんだから」

「ママも余計な気遣いは不要!」


 そこから凪さんと干菜さんは俺から離れ、自分の娘たちと口論し始めた。

 俺としては全員と入ってかまわないんだが、さすがに家の風呂だと五人はきつい。

 下手にここで介入しても収まらなそうだから、俺はさりげなく一人でお風呂に向かった。

 そのまま服を脱いでシャワーを浴びていると、お風呂の扉が開かれた。


「さぁ、雪さん、綺麗にしますね?」

「お兄ちゃん、今日もキレイキレイしようね!」


「おぉ、時雨と干菜さんは?」


「まだ言い争ってると思うわ」

「だから、私たちで洗ってあげる!」


「あぁ、よろし「「待ちなさい!」」……おぉぅ」


 坂間家も親子揃ってお風呂に入ってきた。

 それなりにここのお風呂場も広いが五人は厳しいな……

 そんなことお構いなしに、けっきょく五人でお風呂に入り洗っ子した休みだった。


★********★

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