第101話 宴

 

 俺達は適当に近くの酒屋でお酒とおつまみを購入し、家にまで帰り着いた。

 凪さんも店長さんに連絡して、明日休むことになったそうだ。

 俺も電話を変わってもらい、もう一度お礼を言って、今度海と時雨を連れて買い物に行くことを伝えておいた。

 

「ここが家ですよ」


「ここが海が住んでるお家なのね。距離はあるけど、歩いて今のアパートから来れない距離ではないわね」


「まぁ、どうなるかわかりませんが、とりあえず中に入りましょうか」


 そう言って俺は、玄関の扉を開けて―――


「「ただいまー」」

「お邪魔します」


 帰ってきた挨拶をするとリビングの方から時雨が姿を現した。


「おかえりなさい。そちらは……?」


「海ママの凪さん。凪さん、この子が時雨です」


「初めまして、海の母の水天凪と言います」


「……はっ? えっ? 海の実母?」


「はい」


「この間の大型ショッピングモールで服買いにいったら、凪さんが店員さんでばったり出会ったんだ」


「……どんな確率よ。えっと……雪の第二夫人の坂間時雨と言います。海にはいつもお世話になっております」


「海からさっき話を聞きました。こちらこそ、海と仲良くして頂き、ありがとうございます」


 時雨と凪さんはお互いにペコリと挨拶しあったので……


「とりあえず、母さんたちにも紹介したいから、中にいこうか」


「えぇ、そうね。出前も多分もうすぐ来るわよ」


 時雨がリビングに戻って行ったので、俺達も玄関で靴を脱いで、リビングへ向かうと、そこにはテーブルの上に色んな酒を並べて母さんと干菜さんが椅子に座っていた。


「おかえり、雪、海」

「おかえりなさい、雪君、海ちゃん」


「ただいま。紹介したい人がいるんだけど……いいかな?」


「えぇ、そちらの方は?」


 後ろにいた凪さんは母さん達の前に姿を出し―――


「初めまして、海の母の水天凪と申します」


「「……えぇ!?」」


 うん、そうなるよね。

 母さんも干菜さんも驚いた表情で凪さんを見ている。

 だから俺は、時雨に話したように母さんと干菜さんにも、凪さんとの出会いを話した。


「―――ということで、急で悪いんだけど……凪さんも入れて、パーティ的なことしてもいいかな?」


「ふふ、えぇ、いいわよ! お酒も買ってきてるみたいだし」

「ふふふ、今日は色んな話しができそうね!」


 母さんも干菜さんも一先ず、受け入れてくれた。

 俺は凪さんを席に座らせて、氷や飲み物を準備する為、キッチンへと向かった。

 すると、時雨も後ろからついてきた。


「ゲストって海のお母さんのことだったのね。まさか、海のお母さん連れてくるとは思わなかったわよ」


「あぁ、お店で出会った時は、ほんとびっくりしたよ」


「でしょうね。それで、今後はちょくちょく海に会いに来れるように紹介したかったってことかしら?」


「……出来れば、家に泊めてあげたいなって海と話してな?」


「え、えぇ? 一緒に住むってこと?」


「まぁ、普通に考えたら無理だとは思ってるけど」


「雪はどうしたいのよ?」


「出来れば、一緒に居て欲しいなって思うよ。海も幸せだし、凪さんも幸せになるから」


「ふーん、そう。いいんじゃないかしら? 雪がOK出せばOKみたいなものよ」


「いやいやいや、俺の家じゃないんだし。俺の一存じゃ決められないだろ」


「? あぁ、雪は知らないのね。この家は男性保護省が用意した借家よ」


「? どういうこと?」


「男の子が生まれると、色々あるから、申請して条件が合えば受理されて、それなりの家を男性保護省が用意してくれるのよ。雪が産まれたから、秋さんはここに格安で住めたって訳よ」


「えぇ? 男が生まれるとそんな特権もあるの? じゃあ男はみんな一軒家に住んでるのか?」


「マンションの子もいるわよ。詳しい説明は省くけど、今の家に愛着がある人は申請せずに今の家だとか、実家に住む人もいるし……都会の方になると、こんな大きな家は無理よ。申請も必ず通るわけじゃないから、かなりラッキーな方よ?」


「まじかよ……」


「そうよ。だから、雪がOK出せばOKみたいなものよ。まぁ、格安と言っても毎月いくらかは出してるし、光熱費とか他の費用は秋さんが払ってるから、相談は必要でしょうけど。一緒に住むなら凪さんにも出して貰えば金銭的には何の問題もないんじゃないかしら?」


「んー、つってもなぁ? 俺だけの問題じゃないし、母さんがNOって言うなら……」


「秋さんは……私のイメージだとOKしそうな感じだけどね」


「だといいけど……まぁ、頃合いを見て、相談してみるわ」


「そうしなさい。それじゃ『ピンポーン』ちょうど来たみたいね。受け取ってくるわ」


「おう」


 俺は氷や酒を飲まない組の飲み物を取って、リビングに向かうと……既に缶を開けて、お酒を飲んでいるところだった。


「それでね! 家に帰ったら雪がご飯作ってくれてるのよ! 海のご飯も美味しいけど、息子の手料理が食べられるなんて我が家だけなんだから!」

「私も食べたけど、雪君のお料理おいしいのよ! 男の子が作ったってだけでプレミア物なのに、美味しいなんて贅沢よね!」


「ふふふ、今度私も食べさせてもらいたいです」


「今から作らせましょ! ちょっと雪! おつまみ作って頂戴!」

「雪君お願い! あとで時雨に何でもさせるから!」


「ははは、わかったよ。ちょっと冷蔵庫見てくる」


「あ、お兄ちゃん手伝うよ!」


「海はそこに居ていいぞ。俺と時雨でやっとくから。海も楽しんどけ」


 そして、ピザの箱を持って時雨もやってくる。


「ピザ届いたわよ。雪、玄関に残りがあるから持ってきてくれない?」


「あいよ」


「時雨、雪君に料理作ってもらうから、手伝ってあげて頂戴。あと、雪君に何でもしてあげて!」


「えぇ、わかったわ。雪、海から聞いてるわよ。エッチなメイドさんとエッチなバニーさんどっちがいいかしら?」


「急に究極の二択出してくるじゃん。時雨がしてくれるならどっちでもいいよ。料理してる間それ見て、やる気出したいから、今から着替えてきてくれ。どっちにするかは時雨に任せる」


「料理中に暴れん坊将軍になっちゃダメよ? 危ないから」


「わかってるよ! あぁ、でもその前に、みんなで乾杯だけしようぜ。熱い内にピザも食べたいし」


「それもそうね」


 俺はコップにジュースを注いで、時雨と海に渡し―――


「雪、音頭取りなさいな」


「あぁ、それじゃ……海と凪さんの再会を祝して―――乾杯!」


「「「「「かんぱーーーい!!」」」」」


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