第98話 ママと一緒


 俺と海と凪さんは1階のフロアに行き、お目当ての回転寿司のお店に入った。

 ここに来る道中も、海はニコニコとしながら凪さんに色々と話をしている。

 テーブルに案内され、俺は席に着くと、反対側に海と凪さんが座った。

 俺は席に備え付けられたお茶の粉末をコップに入れ、お湯を注ぎ、3人分のお茶を作り、海と凪さんに渡していく。


「どうぞ」


「ありがとう、お兄ちゃん」

「――――」


 凪さんは目を見開き、俺が入れたお茶を見ている。


「? どうしました?」

「ママ?」


「……初めて、男の人に料理をしてもらいました」


「お茶を淹れただけでは、料理とは言えないかと……」


「ママ、今度お兄ちゃんの手料理食べようね! お兄ちゃんの料理美味しいんだよ!」


「え、えぇ? 大淀さんはお料理されるのですか?」


「海のお母さんなんで、雪でいいですよ。まぁ、毎日やってるわけではありませんが、週に何度か作ってますよ」


「私の料理の手伝いとかもしてくれるんだ!」


「……そ、そうなのね? お……雪さんは……色々と変わってるのね?」


「よく言われます……」


「お兄ちゃん、何頼む?」


「茶碗蒸しと……なんか適当に回ってるのから取るわ」


「はーい。ママは?」


「えっと……じゃあ、かけうどん」


「かけうどん?」


「あんまりお金ないから。安く済ませてるのよ」


「俺が出すから気にしないで下さい。海、海老天うどんにしてあげて」


「はーい!」


「……本当によろしいのですか?」


「えぇ、あと海に話すように話してもらっていいですよ」


「ママ、お兄ちゃんは普通の男と違うから、あんまり気にしなくていいよ。適当におっぱい揉ませとけば、言う事聞いてくれるし」


「おい、俺だって断る時は断るぞ」


「ホントでござるか〜? 信用ないでござるよ〜?」


「ホントでござるよ〜」


「じゃああとで、おっぱいで建築しなくてもいいでござるか〜?」


「よろしくお願いするでござる〜」


「ほら! 釣られてるじゃん!」


「海だからいいんだよ海だから!」


「……ふふ、仲がいいのね?」


 ……凪さんの前でなんて会話させやがる。


「あはは……すみません、海のお母さんの前で」


「気にしなくていいのよ。それで恋人なんだっけ?」


「うん! あのね―――」


 そこから海は俺……というか前雪が階段が落ちた時からのことを話始めた。

 俺がこの世界の人ではないことも、一緒に話している。疑惑的な反応をしているみたいだが……まぁ、そんなこと言っても普通信じないよね。

 幼馴染の時雨も俺の恋人になっていること、話をしているようだ。

 それに合わせて、凪さんはウンウンと相づちを打って、話を聞いている。

 海が夢中で話をしているので、俺は注文した茶碗蒸しを味わいながら、適当に寿司を食べている。


「それでね! お兄ちゃんが私に公園で告白してくれたの!」


「ふふふ、そう、よかったわね」


「うん! それから、毎日お兄ちゃんとイチャイチャしないとダメになっちゃった! 最近はお兄ちゃんとエッチするのが楽しみなの!」


「あらあら、ふふふ」


 ……何でもかんでも赤裸々に報告するのはどうかと思うぞ?


「でも、今度の月曜日から二日間もお兄ちゃんが居ないから……」


「夜電話するから我慢してくれ」


「待ってるからね?」


「おう。というか海は、寿司食えよ。寿司食いたいって言ったの海だろ」


「そうだった!」


「凪さんも好きに食べてください」


「えぇ……雪さん、ありがとう。海を幸せにしてくれて」


「お礼を言うのはこちらの方ですよ。海のお陰で色々と助かってますし、海がいるから、俺自身幸せですから」


「……よかった。本当によかった」


 そのまま凪さんは顔を両手で隠して、俯いてしまった。

 海は凪さんに寄り添い、抱きしめて慰めている。

 ずっと大変だったんだろう……

 いや、今も大変なのかな……? 海の母親だし、なんとかしてあげたいが……


「……凪さんは今も旦那さんと会っているんですか?」


「…………いいえ、少し前に離婚したから、今は一人よ」


「離婚されたんですか?」


「えぇ、一度体を壊してからも、頑張ってたんだけど、他の奥さんから会わせないようにされちゃって……もう、結婚してても意味ないから……」


「確か……ご実家とも、うまくいってないんですよね?」


「……そうよ。だから、最近こっちに引っ越してきて、今はずっと一人よ」


 …………んー! 知ってしまった以上はなんとかしたい! なんとかしたいが……今の俺になんとか出来る術はあるのか……?

 そんな状態なら、出来れば海の傍に居て欲しい。

 海も喜ぶし、凪さんも幸せで一石二鳥なんだが……

 俺がウンウン唸っていると、海がある提案をしてきた。


「お兄ちゃん、ママを家に泊めてあげることって出来ないかな?」


「それは……俺の一存じゃ決められないだろ」


「お兄ちゃんがいいなら、お母さんもOKすると思うよ?」


「えぇ? どこからその発想出てきたんだよ」


「お母さん、涙脆い話に弱いから」


「……とりあえず、母さんに相談だけしてみるか。というか、この場合って男性保護省的にどうなんだ? 問題ないのか?」


「さぁ……? こんな事例聞いたことないよ。お兄ちゃんじゃないと成り立たないだろうし……一緒に住むって言っても、戸籍は別だろうから、大丈夫なんじゃない?」


「あの……私の為に、そこまでしなくても……」


「まぁ、とりあえずお昼食べて、家に帰ってから相談してみましょう。どっちにしろ、凪さんもこのまま海とバイバイなんて嫌でしょ?」


「それはそうだけど……」


「お兄ちゃん! この豪華なお皿のお寿司美味しいよ!」


「なんだそれ……トロ食べ比べ! 大トロ、中トロ、トロの3貫セットか! 俺も頼むかな」


「ママの分も注文するね!」


「え、えぇ、わかったわ」


★********★

アンケート締め切りました!

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