第95話 マ、ママ!?①

 

 お店のテーブルで、休んでいるとネネちゃんが声をあげた。


「あっ! ママだ!」


「えっ!?」


 ネネちゃんが指を差した方向を見るが……人が何人も居て、どの人かわからん……。

 お母さんっぽい見た目の人……もいなくないか? 全員若そうに見えるんだが?

 まぁ、子供もまだ小さいし、お母さんも若いんだろう。


「ママー!」


 ネネちゃんが大声で叫びながら手を振ると、一人の女声がこちらを向き、走ってやってきた。

 マ……ママ……ママ!?

 あの見た目で!? 俺と年齢変わらない位のめちゃくちゃ美人な人に見えるんだが!? この世界の女性恐ろしいわ……!

 走ってくる女性は大きな胸をぶるんぶるんと揺らしながら、長いウェーブがかかった紫色の髪を靡かせ、こちらにやってくると、開口一番にネネちゃんに話しかけた。


「ネネ! 私はママじゃないって言ってますわよね!?」


 さすがにママではなかったようだ……


「えーっと、すみません、迷子センターに連れて行こうとしたのですが、喉乾いたと言われたので、ジュースを飲ませてあげてました」


「お兄ちゃんにジュース買ってもらった!」


「え、えぇ!? 男性ですの!?」


「あっ、はい。一応男ですよ」


「……色々と言うことがございますが、まずはネネを保護して頂き、ありがとうございます」


「いえいえ、ママが迷子になったと聞いて、迷子センターまで連れて行こうとしたのですが……歩き疲れていたみたいなので、少し休ませてあげてました」


「そうなんですのね……あの、失礼かもしれませんが……ネネを妻にしようとしてるわけじゃ……」


「違いますよ!?」


「ほら、お兄ちゃんが誰にでも優しくするから、勘違いされてるじゃん」


「優しくしただけで、狙ってると思われるのかよ。俺のストライクゾーンガバガバだと思ってるよな?」


「揺り籠から墓場までって思ってるよ?」


「そんな訳ないんだよなぁ!? 妻にするなら同年代しかする気ないよ!」


「そうなの? お兄ちゃんロリっぽい人が好きなのかと思ってた」


「えぇ? なんかそんな要素あったか?」


「ほら、この間のタペストリーとかもちょっと幼い感じの子だったし、愛羅さんとか童顔で可愛い系ですごく仲良さそうだし、可愛い幼い感じの子が好きなのかと思ってた」


「別にそんなつもりはないんだが……というか、海と時雨が好きって言ってるだろ? 二人とも幼い感じしないじゃないか」


「それはそう……かも? じゃあお兄ちゃんどういう系がいいの?」


「んー……お姉さん系?」


「私もお姉さんになろうか?」


「そのまんまでいいよ。そのままの海が好きなんだから」


「そっか!」


「あのー……」


 ……完全に忘れてたわ。


「あぁ、すみません、えっとー……ともかく! 俺は狙ってるわけじゃありませんから!?」


「そ、そうなんですのね、失礼しました。ご挨拶が遅れましたが、私は久遠紫乃くおんしのと申します。こっちは妹の音子ねねですわ」


「私は大淀雪です。こっちが妹の海です」


「大淀雪……? もしかして貴方、桜花七情学園の一年生ではなくて?」


「え、えぇ、そうですが?」


「なるほど……貴方が噂の……」


「噂?」


「気にしないで下さいまし。それより、音子の飲み物の代金をお支払いしたいさせて欲しいのですが?」


「あぁ、気にしなくていいですよ。大した金額でもありませんし」


「……わかりましたわ。このお礼は必ずさせて頂きますわ」


「本当に気にしなくていいですよ」


「良かったら、私もご一緒してもよろしくて?」


「えぇ、もちろんですよ」


 そう言うと、久遠さんはお店に行って、ジュースを買ってきて、俺たちがいるテーブルの椅子に座った。


「えっとー……久遠さんも七情学園の生徒なんですか?」


「えぇ、そうですわよ。二年生ですわ」


「二年……もしかして紗理奈先輩のお友達で?」


「あら、紗理奈のことは紗理奈と言うんですのね? なら、私のことも紫乃と言いなさい。音子もいるから紛らわしいですわ」


「わかりました。紫乃先輩」


「紗理奈にもそうやって敬語で話してるのかしら?」


「え、えぇ、まぁ……」


「へぇー? なら私のことは紫乃と呼び捨てで呼びなさい。敬語も不要よ」


「え、えぇ?」


「紗理奈の……いいえ、音子を助けてくれた恩人ですもの。堅苦しいのは不要ですわ」


「……はは、わかったよ、紫乃。俺のことも雪って呼んでくれ」


「えぇ、わかりましたわ、雪。それで? 紗理奈から生徒会に誘われているようですわね?」


「えぇ、そうですね」


「生徒会に男の子が入ったことがあるのは、創設時だけらしいですわよ。雪が入ったら学園にとって歴史的な事になりますわね」


「へぇー、創設時には男も生徒会にいたんですね」


「えぇ、一人だけ、ただ一度、その時だけですわ」


「ふーん、と言っても俺には生徒会に入るメリットがないから、どうしようか悩んでるんですけどね」

 

 ほんと、なんで紗理奈先輩は俺を生徒会に入れたがってるんだろうか……

 

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長くなったので分割します。


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