第90話 勧誘


 俺だけ残ってしまった……

 ここは空気を読んで退出したほうがいいだろうか?

 というか、親睦会じゃなかったんだっけ?


「あはははは! 残ったの雪君だけになっちゃったね?」


 友梨佳先生が、俺の後ろから俺の頭を抱きしめるように抱きついてきた。

 顔を少しだけ友梨佳先生の方に向けて―――


「俺も流れに乗って、帰ったほうがいいんですかね?」


「んー帰ってもいいけど、教室戻っても暇なだけだろうから、私とイチャイチャしていかないかい?」


「イチャイチャはしたいですけど……授業出なくてもいいんですかね? 最初の授業受けそこねると、次の授業とか置いていかれるじゃないですか?」


「今日は初日だから大丈夫だと思うよ? というか、雪君はこの学校の授業についていける自信はあるのかい?」


「……自信はないですね。時雨と教科書を軽く見ましたが、多少はわかりましたけど……かなり怪しいです」


「ふふふ、それでも真面目に授業を受けようとするんだね? 雪君はいい子だねー!」


「大して頭が良いわけじゃないですし、真面目に受けとかないと、テストやばいじゃないですか? 特に歴史とか暗記物ですし、時間かけないと覚えられませんよ。赤点取って留年するわけにもいきませんし」


「男の子は留年することないよ? テストを受ける必要もないから」


「えっ? そうなんですか?」


「うん、入学する時にテストが必要なかったように、免除されるよ」


「……そうなんですか。それはそれで寂しいですね」


「んん? なんでだい?」


「ほら、テスト前に友達と一緒に勉強するってこともないんでしょ? 別に勉強が好きって訳じゃないですけど、ちょっと寂しいかなって。テストが無い俺が居ても邪魔になるでしょうから」


「意図的に邪魔する訳じゃないなら、一緒に勉強してもいいと思うけどね? それに、時雨さんや桜さんなんかは君がいる方がやる気が出ると思うよ?」


「? そうなんですか?」


「うん、まぁ、物は試しだ。今度テスト前に一緒に勉強してごらん? きっと喜んでくれるよ」


「……わかりました。試してみます」


「うんうん!」


「雪君、質問するならそれくらいのレベルで質問してくれると助かるんだけど?」


 ……そう言えば、生徒会の人たちがいるんだった。


「ははは、すみません、紗理奈先輩。何でも良いって言ってたから」


「ふふふ、さすがに想定外の質問だったから回答できなかったよ」


「ちょっと待ちなさい紗理奈。なんで唯一まともな男の子と既に名前で呼び合ってるの?」

「紗理奈さん抜け駆けした?」

「会長ずるいですよー」

「会長、さすがにそれはダメだと思うよ?」


「ふふふ、ごめんねみんな? 入学式の時に席が近かったから、お友達になっちゃった♪ 今日はすごかったよ? 雪君に朝の挨拶しに行ったら、クラスの子がみんな雪君とハグしてるの! だから私も列に並んだら雪君とハグできちゃった!」


「なんでそういう大事なこと情報共有しないの!?」

「私も明日教室に行く!」

「会長って意外とずるい……?」

「私もいくわ」


「ダメだよ? みんなで行くと周りがびっくりしちゃうから。それに、私は雪君を生徒会に勧誘する為に教室に行ってるんだから、用事がないのに別学年の教室に行ったらダメ」


「職権乱用じゃん」

「ずるい!」

「仲間外れは良くないと思います!」

「会長、私たちもハグ出来るように、交渉してください」


 ……見た目ちょっと怖かったけど、意外と他の子と変わらないんだな?


「ずるくありませーん、会長権限でーす」


「あの、ハグぐらいなら全然いいですよ?」


「「「!?」」」


 友梨佳先生にどいてもらい、俺は立ち上がり生徒会の人に近づいていく。

 適当に一番近い人を抱きしめながら、頭を撫でてあげると他の子は察して、生徒会の人たちで列が形成された。

 とりあえず、全員にハグとナデナデをしてあげると―――


「会長、なんとしてでも大淀君を生徒会に入れてください」

「大淀君、とりあえずお試しで生徒会に来てくれないかな?」

「入らなくてもいいから週三、いや、週二でいいから遊びにおいで?」

「会長のおっぱいで大淀さんを捕まえてください」


 一人ダイレクトアタックしようとしてるやつがいるな?


「えーっと……こんな子たちなんだけど、どうかな雪君? 生徒会に入ってくれないかな? もちろん、遅くなるなら私達が家まで送っていくよ?」


 そうかこの世界の場合、俺が送られる側になるのか……

 まぁ、そこは別にどうでもいいんだが、生徒会の仕事なぁー……


「んー……ちょっと考えさせてもらっていいですか? さすがに俺が一人で決めると、多分怒られますし……生徒会の仕事もよくわかりませんから」


「そっかー、普通の子なら誘われたら、間違いなく入ってくれるんだけどねー? 内申点よくなるし、大学や就職にも有利になるから飛びついてくるのに」


「俺男ですから、普通には働けませんし……そう考えると俺が入るメリットって無いですよね?」


「そうだよねー。雪君にメリットがないかー……んー……」


 紗理奈先輩は顎に手を当て、うんうんと考え始めた。


「会長、なんとしても名案を!」


「と言われてもねー……うん、案はあるけど、私の一存では決められないから、ちょっと生徒会で相談するね?」


 どうしても生徒会に入ってもらいたいようだな……


「ま、まぁ、俺も相談する必要がありますから」


「うん、とりあえず雪君のメリットについて考えておくから期待しててね♪」


 紗理奈先輩は笑顔でそう俺に伝えてきた。


★********★

【妨害が始まる1年生】の登場人物も現在出ている人物はまとめました!(抜けてたらすみません、その場合ご報告を……)

章の頭にありますので、忘れた頃に見て頂けると、随時更新されてます。


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