第89話 顔合わせ In 生徒会②
紗理奈先輩がそう宣言すると、生徒会の人がお菓子を持ってきて配ってくれる。
友梨佳先生も紙コップにジュースを注いで、配ってくれている。
俺は生徒会の人や友梨佳先生に軽く会釈をして受け取った。
というか、親睦会? 親睦深めるような空気じゃなくないか?
「それでは、自己紹介をしましょうか。私は生徒会長で二年の東条紗理奈です。皆さん、よろしくお願いします」
紗理奈先輩の自己紹介に他の生徒会の人が拍手するので、俺も合わせて拍手しておいた。他の男は……特に何もせず、じっと見ている。
「次は私だな。私は三年の―――」
そのまま、生徒会の人たちが自己紹介を行い―――
男側の自己紹介の番になった。
「じゃあ、私から見て一番右の君からいいかな?」
紗理奈先輩が俺を見ながらそう言ってきた。トップバッターは俺かよ。
というかあれか? 紗理奈先輩は一応知らないていで、進めるのか?
よくわからんが、一応乗っかっておくことにしよう。
「初めまして、大淀雪と言います。何かとご迷惑をお掛けするかもしれませんが、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します」
俺はそう挨拶すると、生徒会の人が拍手をしてくれた。
「じゃあ、次は隣の君だよ?」
紗理奈先輩が挨拶を促すが……携帯を弄っているわけではないが、下を向いて俯向いている。
「あー……名前だけでいいから、とりあえず挨拶しとこうぜ? なっ?」
俺も紗理奈先輩と同じように、隣の男に挨拶を促した。
男はチラッっと俺を見て、正面を向き……
「……
それだけ言うと、また下を向いてしまった。
と、とりあえず先ほどと同じように、俺は拍手をするが……
生徒会の面々は紗理奈先輩以外、拍手をしていなかった。
「……僕は―――」
流れに合わせて他の男も名前だけ名乗っていく―――そして、最後に入ってきた男の番になった。
「最後は君の番だよ?」
「どーでもいいだろ、そんなこと。それより、さっさと他のお菓子を渡せ」
最後に入ってきたこいつだけ、既にお菓子を貪っていた。
というか食べ終わってるじゃん。
「うん、あげてもいいけど、とりあえず自己紹介しようか? お名前は?」
「うるせぇな! 俺を誰だと思ってやがる!」
「知らないから聞いてるんだよ?」
「俺は男だぞ! いいからお菓子を持って来い! そしたら妻にすることも考えてやる!」
完全にやべーやつだったわ……
菓子持ってきたら妻にしてやることを考えてやるって何だよ。
それで持ってくるやついるのか?
「別に君の妻になる気はないよ。今は自己紹介の場だから、お名前教えてくれるかな?」
「菓子がないなら、もう用はねぇよ!」
それだけ言い残すと、男は立ち上がり、この部屋から出ていった。
ハァ~……というため息が紗理奈先輩の方から聞こえた。
「……とりあえず、自己紹介はこんなものかな? これから君たちは、クラスにいることになるから、好きに過ごしていいけど、他の生徒の邪魔にだけはならない様にしてね? 何か問題があれば、私達が対処することになるから。もしくは、女子生徒に何かされて、困っていることがあるなら相談してくれていいからね? できる限り対処するから。何か質問あるかな?」
紗理奈先輩はニコニコと笑顔で俺たちを見てくるが……誰も何も言わない。
困っていることか……俺を手を上げ、質問してみることにした。
「ん? どうしたのかな、ゆ……大淀君」
「相談ってどんなことでもいいんですか?」
「うん、私たちが答えられることなら何でもいいよ? 大淀君は何か困ってることがあるのかな?」
「そうですね……例えば、私の姉を自称する人がクラスにいるんですが、どうすればいですか?」
「……そ、それは、何か被害にあってるのかな?」
「被害にはあってませんが、外堀をどんどん埋められて、周りから俺の姉だと認識され始めてます」
「そ、そうなんだ? う、う〜ん、ちょっと対処がわからないから生徒会で話し合ってみるね?」
「はい、あと他には……今日朝クラスの子たちにハグをしてあげたら、私の恋人が友人作りを邪魔するようになったんですが、どうやったら友人を作れますか?」
「……う、う〜ん、それもちょっと生徒会で話し合ってみるね?」
「わかりました。あとは私のクラスに私のメイドになりたいって子がいるんでメイドにしたいって思うんですが、恋人や自称姉がダメって言うんです……どうやったらメイドになってもらえますかね?」
「……その子が自主的にメイドになりたいって言ってるの?」
「えぇ」
「そ、そっかー……うーん……ちょ、ちょっと考えてみるね?」
「はい、あと「うん、大淀君の話はあとで聞くね?」……わかりました」
俺の困っていることはすべて、考える案件にされた……
「大淀君以外の子は質問はないかな?」
他の男たちは無言で俯向いている。
「……なさそうだね? それじゃあ軽くお話でもしようと思うけど、教室に帰りたくなったらいつでも帰っていいよ」
紗理奈先輩がそう言うと、男たちは立ち上がり、この部屋から帰っていった。
「……はぁー、前途多難だなぁ」
男たちが帰って行くのを見て、紗理奈先輩がそう呟いた。
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