第87話 午前の授業から保健室に行くまで


 HRも終わり、実際の授業が始まった。

 最初ということで、担当教師が軽く自己紹介のあと自分のことを話したり、和気あいあいとした授業が中心だった。

 特に変わったこともなく、午前中の授業は終わった。

 ただまぁ、朝のことから時雨が5分休み事に、俺の膝に乗っかり抱きついてきてから、他の子と話す余裕はなかったな。

 桜や愛羅も俺たちを遠巻きに見ながら、周りとの友人作りに精を出していた。


「時雨も新しい友人作った方がいいんじゃないか? 俺も作りたいし」


「新しい友人より、雪が居ればそれでいいわ。それよりも雪がこれ以上暴走しないように見張るほうが大事だわ」


「暴走はしてないだろ。ハグくらいなら前に病院でも看護師の人たち相手にやったぞ」


「はっ? 何その話、聞いてないんだけど?」


「言ってなかったか……? ……言ってないな。入院してる時……時雨と会った次の日に看護師が押し寄せてきて皆とハグしたぞ」


「……帰ったら裁判ね?」


「時効だよ時効。むしろその時はまだ時雨とも、出会ったばかりだろ。あの時もハグしてあげたじゃないか」


「……帰ったらいっぱいキスしてくれる?」


「おう、家の中ならどこでもしてやるよ。ベッドの上でもな」


「……そうね、そろそろ痛みも引いたし、今日はしちゃおうかしら。午後保健室に行くわよね? あのドリンク帰りに貰ってきて頂戴な」


「……さすがに明日も学校なんだから、ドリンクは勘弁してくれ」


 こんな会話があったくらいで、あとは割と平和だった。

 そして、お昼は―――


「雪、学食に行くわよ」


 お弁当など作っていないので必然的に学食に行くことになる。


「雪君! 私も一緒にいいよね?」

 

 そこに桜が加わり……


「ユッキー! あーしも混ぜて!」


 愛羅も合流しこれで……


「雪君! 私も一緒に!」

「雪君、私も私も!」

「お兄様、ご一緒させて下さい」

「我が魂の友よ! 我らも血の晩餐を喰らおうではないか!」

「ご主人様が学食に行かれるならお供します」

「雪、私もついて行きますわ!」


 私も私もと騒がれ始め……どうすんだこれ?


「ほらみなさい。雪が愛想振り撒くからこうなるのよ」


「私にいい考えがあります」


 そう桜は言うと少し前に出て、提案し始めた。


「皆様! 僭越ながら、雪君の姉として、ここはまとめてさせて頂きますわ。雪君と一緒にお昼ご飯を食べる権利をかけて……皆様でじゃんけんをしてください! 勝者には雪君との食事権利を差し上げますわ!」


 ざわざわと騒がれ始め、周りでじゃんけん大会が始まった。

 このままどうなるかと思えば、桜が俺の手を握り、教室から出て食堂に向かい始めた。


「あれ、クラスの連中はどうするんだ?」


「じゃんけんしてもらうよ? 決まるまで私たちはお昼ご飯を食べながら待つだけ」


「よくやったわ桜」

「あとでサクサクが何か言われなきゃいいけどね」


「別に今日のお昼の権利を掛けて、じゃんけんしてるわけじゃないんですから、どうとでも言えますよ」


 クラスのじゃんけん大会の勝者よ……すまぬ……

 そして俺たちは食堂に移動した。

 思うんだが、地味に遠いな? 遠いというか学校が広いというか……

 食堂について、辺りを見渡すと……うん、男もいるな。

 好機の視線に晒されることは無さそうだ。


 そのまま俺たちは券売機で、それぞれ食券を購入して食堂のおばちゃんに渡し、料理を受け取って食事をした。


 昼食が終わったので、俺たちは4人で保健室へ移動する。

 男性がいると言ってもちょくちょく視線を感じるな。

 目が合ったら……とりあえず微笑んで軽く会釈でもしておこう。

 道中そん感じで保健室まで辿り着くと、時雨が代表してドアをノックしてくれた。


「失礼します」


「「「失礼します」」」


「どうぞー」


 時雨が扉を開け中に入ったので俺たちもついていくと……

 友梨佳先生が待っていた。


「やぁやぁ、時雨さんにこんにちわ。雪君を連れてきてくれたんだね」


「えぇ、よろしくお願いします。それと先日はありがとうございました」


「ふっふっふ、その様子だとうまくいったのかな?」


「えぇ、とても素敵な思い出になりました」


「ははは! そうかそうか! 羨ましい限りだ!」


「あとちょっと雪の頭がおかしいので、よく見ておいてください」


「おい、誰の頭がおかしいんだ」


「ん? 怪我でもしたのかい?」


「いえ、なぜかやたらと皆に愛想振りまいて困ってるんです」


「普通にしてるだけなんだがなー」


「ふふ、あとで話を聞いてみるけど、いいじゃないか。雪君も結婚相手を探さなくちゃいけないんだし」


「このままだと結婚相手が三桁いきそうで……」


「だからいかないよ!」


「雪君? 三桁はダメだよ? 多くても十人ぐらいにしようね?」

「今のユッキー見てたら、卒業までに三桁いっててもあーしは驚かないよ?」


「……さすがに三桁は拒否するから安心してくれ。どれだけ多くても十人以内にするから」


「はっはっは! 時雨さん以外の二人も雪君と仲がいいんだね!」


「ユッキーのマブダチでーす!」

「お姉ちゃんですから!」


「ふふふ、愛羅さんは雪君のマブダチになったのか! それと……雪君はお姉さんがいたのかい? 海ちゃんがいるのは知ってたけど」


「自称です自称」


「雪君のお母様と時雨ちゃんのお母様にも認めてもらいました!」


「はっはっは! そうか! 私は三島友梨佳って言うんだけど、お姉さんの名前は?」


「桜です! 大淀桜って言います!」


「違うだろ!」

「違うでしょ!」

「あはははは! サクサクがどんどんお姉ちゃんになっていく!」


 外堀がどんどん埋められていく……


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