第83話 このクエスト、タチが悪いな……

 

 朝、目が覚めるといつも通り両隣に二人がいた。

 昨日は甘えながら、二人に抱きついて眠れて幸せだった。

 そして、いつも通り朝食を済ませ、部屋でのんびりしている時にそれは起きた。


 ―――――♪


 海の携帯が鳴り、海は電話を取ると画面の文字を見て顰めっつらをした。


「どうしたんだ?」


「……学校の友達から」


 そして、嫌そうにしながらも電話に出る。


「もしもし―――うん、うん―――えっ、嫌だけど? ―――はっ? ダメに決まってるじゃん。―――ダメダメダメ! ―――ちょっと考えさせて。―――えっ―――わかった! わかったから! 行くからいいでしょ! もう!」


 ピッ


「どうしたんだ?」


「……友達が遊ぼうって」


「いいじゃないか」


「嫌って言ったら、この家に来るって言われてさ、お兄ちゃんと遊ばせてって言うから、仕方なく向こうに行くことにした」


「別に呼んでも良かったのに」


「ダメに決まってるでしょ! ということで、時雨姉あとはお願いね」


「えぇ、わか「時雨! 大変よ!」お母さん?」


 干菜さんが時雨の部屋から顔を覗かせた。


百合子ゆりこさんの容態が良くなったみたいだから、急いでお見舞いに行くわよ!」


「えぇ!? 今日なの!?」


「そうよ! いつまた容態が悪くなるかも分からないし、今のうちに行くわよ!」


「……わかったわ」


 急に知らない人出てきたぞ?


「百合子さんって誰?」


「私の曽祖母さんよ。そろそろまずかったんだけど……行くしかないわね。この機会逃すと、もう挨拶出来ないかもしれないし」


「……お兄ちゃん一人になるけど、家から出ないでね?」

「雪、帰ってきたらたっぷり相手してあげるから、大人しくしてて頂戴ね?」


「俺は小さな子供かよ」


「素直に心配なのよ。昨日あんなことがあったばかりなのに」

「うんうん、何かあったらすぐに連絡してね?」


「わかったよ。何かあればすぐ連絡するから」


 そうして、二人は急いで着替えて家を出ていった。

 母さんはこの時間まだ寝ているだろう……

 俺も着替えてクエスト受けに行くか!

 受けなくてもいいって言ってるのけど、受けたらより幸せに暮らせるなら受けるべきだろう。

 とりあえず、行くだけ行ってみよう。


 そして、俺は着替女装えて家を出た。

 すっかり女装にも慣れてしまったな。なんなら今度別のウィッグでも買ってみるべきだろうか。

 女装した状態ならまったく男と気付かれず、一人でも出歩ける。

 喋ったらアウトだけど……訓練か何かでそれっぽく出来るようにならないだろうか?

 今度誰かに相談してみよう。


 そして、一人で駅前までやってきたわけだが……どうしたらいいんだ?

 別段問題が起きてるようにも見えないし……

 とりあえず、駅の真ん前まで行ってみるか。


 駅の目の前まで行くために、横断歩道を渡る必要があるので、信号が青になるまで待っていた。

 人通りは……意外と少ない。

 女神様が何かしているのだろうか?

 そんな感じにキョロキョロとしていると、俺の横を一人の女性が通り過ぎて行った。


 はっ? 今は赤だぞ? あぶないなぁ…… 車は…… 来てるじゃねぇか!?


 俺は咄嗟に女性を掴み、引き寄せた。

 クラクションを鳴らした車が俺たちの前を通り過ぎて行った。


「赤信号で渡ったらあぶないだろ!?」


「……お、男?」


 ……思わず喋っちまったじゃねぇか。


「あぁ、そうだよ。そんなことはどうでも「お願いします! 助けて下さい!」……はい?」


 もしかしてこの女性がクエストか? 今助けたからクエスト完了にならねぇかな……


「お願いします! お願いします! どうか、どうかぁ……」


 急に俺の目の前で泣かれても困るんだが!?


「あの、とりあえず話を聞きますから、場所を移動しませんか?」


 俺は泣きじゃくる女性を引き連れ、近くにあった喫茶店へ足を運んだ。

 席についた後、俺はコーヒーを2人分頼む。もちろん喋らずにメニューを指さして注文をした。

 注文が来るまで、俺たちは一言も発さず、ただじっと待っていた。

 そして、注文が届き一口飲んだ後、俺は尋ねた。


「それで? どうしたんですか?」


「…………」


 話しかけたが、顔を下に向けて固まっている。

 とりあえず、待つしかないんだろうか……


「……ないんです」


「ん?」


「子供が出来ないんです……」


「……はぁ?」


「……私、とある会社の社長なんですけど、跡取りが必要でずっと子供を作ろうとしているんですが……なかなか子供ができないんです」


 ……跡取りか。

 割と大事な問題がだな。

 何の会社か知らないが、社長となると責任が重い立場だ。

 後継者がいないと問題になる場合もあるし、一族で経営してる場合もあるだろう。


「男性保護省から子種の提供を受けて、何度も挑戦しているのですが……一向に妊娠しなくて……お金も無駄に掛かって……それでも必要だから払って、挑戦していたんですが……提供回数が多いと判断されて、妊娠する機会が無くなってしまったんです……」


「……それは、待っていれば再度受けれるようにならないんですか?」


「最低でも5年必要と……」


 5年……随分と待たされるな……


「お見合いに参加しても選ばれず、年齢的にも結婚するには限界で……もう後がないんです……」


「えぇ? まだ若そうに見えますが……失礼ですが、おいくつなんですか?」


「今年25です」


 前世の俺と同い年なんだが!?


「え、えぇ……25で限界なんですか?」


「? そうですよ?」


 25で行き遅れって……この世界大丈夫か……? いや、大丈夫じゃないから困ってるんだろうな。

 こう言ってはなんだが……髪は金髪のミディアムヘアで肩ぐらいの長さ、顔のパーツが整っており、目は……気が強そうな感じだ。スレンダー体型……かと思えば胸は時雨と同等にはありそうだし、見た目がこれだけ良くて、結婚できないとかどんだけ厳しいんだよ……

 

「5年待つとさらに妊娠が困難になり……お願いします! 私と子作りして下さい! 何でもしますから! お願いします! お願いします……!」


「……子種を直接提供するだけじゃダメですか?」


「……男性保護省で管理している機材が必要です。子種だけ提供されても、どうしようにも……妊娠しやすくなる薬はあるのですが……」


 これがクエストか……タチが悪すぎるだろ……

 あぁ、だから女神様は意図的にした訳じゃないって言ってたのか……

 ……こういう状態の人ってこの人だけじゃないんだろうな。

 たまたま俺の近くにこの人がいたから……いや、女神様の口振りからすると、この人も出来れば救いたいって感じなんだろうか?

 

「もうおばさんかもしれませんが、頑張りますので! 私に出来ることなら何でもします! だから、どうか……どうか……!」


 女神様……卑怯でしょこんなの……好きに選んでいいって言っといて、ここまで話を聞いて、嫌なら断れと?

 さすがに無理だろ……完全に嵌められたわ……次会った時、あのデカパイに責任取ってもらおう。

 ……まぁ、体の相性で嫁さん探しても良いって言ってたし……いいか。


「はぁ……わかりました。今からでもいいですか? 時間がないんで」


「! 本当ですか!」


「えぇ、ちゃんと出来たら、お礼は弾んで下さい。出来なかったら結構ですから」


「ありがとうございます! ありがとうございます! 早速ホテルに案内します!」


 そして俺たちは喫茶店を後にし、まだ名も聞いてない人と自らの意思でホテルに向かい、その女性を抱いた。


★********★

コメントにあった登場人物をまとめて欲しいと言う要望に応えて、ざっくりとまとめました!(すっごいざっくり……

【Welcome to 貞操観念逆転世界】の下に書いてます!


【妨害が始まる1年生】の方もどこかでまとめます。


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