第82話 ダメ押し
俺は女神様の胸の中で目が覚めた。
極上の枕だな、海や時雨にもやってもらいたい。
許されるなら、桜や愛羅も気持ちよさそうだ。
「おはよう雪君☆」
「……おはよう」
「ふふふ☆ 頑張ったね雪君☆」
「ん、あぁ、これで試練終わり?」
「とりあえずはね☆」
「とりあえず?」
「ダ メ 押 し」
そう言うと、女神様は俺の額に人差し指で触れると光の波紋が浮かび上がり、消えていった。
「何これ?」
「明日、駅前に一人で行ってくれるかな?」
「それも試練?」
「うんん、どっちかと言うとクエストかな? やってもいいし、やらなくてもいいよ。でも、行って達成すると報酬は手に入るよ☆」
「報酬?」
「君がいずれ必要になるものだよ☆ 奥さんたちと仲良く過ごしたいなら☆ まぁ、達成しなくても仲良く暮らせるだろうけど……あるに越したことはないかな☆ あぁ、一応誤解の無いように言っとくけど、意図的にそうした訳じゃないからね☆」
「? と言っても、俺一人で外出なんて無理だよ。絶対に海か時雨がついて来るだろうし」
「そこは私の力でなんとかしてあげる☆ 雪君は選択するだけだよ☆」
「……わかった」
「ふふふ☆ じゃあそろそろ現実に戻ろうか? あぁ、多分肉体と魂が長く離れてたからちょっと体が重いだろうけど、すぐ良くなるからね?」
「わかりました」
そう言って俺は女神様とお別れの口づけを交わした。
「んん……ふふふ☆ 嬉しいよ雪君☆」
「また会いに来てもいいですか?」
「もちろん☆ いつでも相手してあげるから☆ やりたくなったら手土産なんかも買わずにおいで☆」
「はは、手土産は買っていくよ。そこまで礼儀知らずにはなりたくないから」
「ふふふ☆ 女の子に慣れたとは言え、そこは真面目なまんまだね☆ 良いと思うよ☆ それじゃ……またね?」
「えぇ、また」
そして、俺の視界は光に包まれ、元の場所に戻った。
**********
「ぐっぅ!?」
体に痛みが走る。
体が重い。
痛みまで走るなんて聞いてないんだが!?
戻った俺は思わずその場にしゃがみ込んでしまった。
「雪!?」
「お兄ちゃん!?」
しゃがみ込んだ俺に海と時雨がすぐさま駆け寄ってきてくれた。
「どうしたの雪!? 気分が悪いの!?」
「大丈夫お兄ちゃん!? 救急車呼ぶ!?」
「あ、あぁ、大丈夫だ。ちょっとだけ休ませてくれないか?」
俺は両脇を二人に支えられ、近くのベンチまで行き、真ん中に座らされた。
「ちょっと飲み物買ってくるわね」
時雨は俺をベンチに座らせると気を遣って飲み物を買いに行ってくれた。
そして隣には海が座って俺を心配している。
「大丈夫、お兄ちゃん……おっぱい揉む?」
「……埋めるわ」
俺は力なく海の胸に抱きつくと、海は俺の頭をナデナデしながら胸に抱きしめてくれた。
「んふー、お兄ちゃんが珍しく甘えてきたね」
「……今後はもっと甘えるよ」
「そっかそっか! いーっぱい甘えていいからね!」
あぁ……海の匂いに包まれてこのまま眠ってしまいたい気分だ。
「それでどうしたの? 苦しんでしゃがみ込んだけど」
「……あー、急に目眩がして、体が動かなくなってな」
「……今頃頭を打った後遺症が出たのかな? 次病院行った時によく診てもらった方がいいかもね。明日行く?」
「いや、次行った時でいいよ。明日はゆっくりする」
「そっか! 明日はイチャイチャしながらゆっくりしようね?」
「あぁ、海の胸に埋もれながら映画でも見るよ」
「んふー! いっぱい抱きしめてあげる♪」
「雪! 飲み物買ってきたわよ」
時雨が飲み物を買って走って戻ってきたようだ。
そのまま俺の隣に座り飲み物を渡してきてくれた。
俺は海の胸から離れ、喉を潤す。
「それで、どうしたのよ? 随分きつそうだったけど」
「急に目眩がして、体が動かなくなったんだって」
「……雪、明日は病院、いえ、今から行きましょう?」
「大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないでしょ。何かあったら私も雪を追いかけるからね?」
「追いかけるなよ」
「バカ……どれだけ心配したと思うのよ」
「……悪い。時雨に抱きついてもいいか?」
「? えぇ、いいわよ」
俺は時雨の胸に抱きつきスリスリと顔を擦り付けた。
時雨も海と同じように、俺の頭を抱きしめてナデナデしてくれる。
「どうしたの? 素直に雪が甘えるなんて珍しいわね」
「ね! さっき私にも甘えてたよ」
よかった。俺はまだ二人を大事に思えてる。
女神様の試練で、何か変わってしまうんじゃないかと少し不安だったが、杞憂だったな。
「二人とも愛してるよ」
「私も愛してるわよ」
「私も!」
海も後ろから抱きついてくる。
うん、二人がいれば今後どうなろうと大丈夫だな。
そのまま、ベンチに座りながら少しだけ休んで俺たちは神社を出た。
「あれ? ケーキはどうしたの?」
「ん? お供えしてきたぞ?」
「えぇ? 一緒にいたのにいつしたのさ! お兄ちゃんマジシャンだったの?」
「これが俺のイリュージョンさ」
「まぁ、いいや。帰りにケーキ買って帰ろうね? 全部口移しで食べさせてあげる! それが私の手を使わずに、お兄ちゃんにケーキを食べさせるイリュージョン!」
「いや、普通に食べたいわ」
そんな会話をしながらケーキを買って帰り、のんびりとその日を3人で過ごした。
★********★
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