第72話 私の場所だから!

 俺たちは学校を出てスーパーで買い物をし、俺の家に向かっている。

 学生服でスーパーに買い物なんてちょっと変な感じがする。


「なんかユッキーが主夫に見えてきたよ。買い物カゴ持って、ネギを見比べてる時とかまさにって感じで」

「ネギって色んな料理に使えるからな。出来るだけいいものを選びたいんだよ」


「ふふふ、雪君はいいお婿さんになりますね」

「まぁ、嫁さんだけに負担を強いるつもりはないさ」


「雪の料理って普通の味付けだけど、優しさを感じるのよね」

「愛情込めてますから」

「ふふ、なら私もお昼ご飯はたっぷり愛情表現してあげる」

「込めるんじゃなくて表現するのかよ」

「えぇ、だって愛情はいつも込めてるもの。だったらあとは表現するしかないじゃない」

「そっか……ありがとな」

「えぇ、だから全部私が食べさせてあげる」

「……嬉しいような、面倒くさいような……さすがに全部はいいよ。普通に食べたいし」


「私も雪君に食べさせたい! お姉ちゃんがあーんってしてあげるね?」

「なら、あーしもあーんってしてあげる!」


「ダメよ。雪にあーんは妻の役目よ」


「ケチ!」

「シグシグってユッキーのことになると鬼厳しいじゃん」


「あーんぐらいよくね?」

「堂々と浮気したいとかいい度胸ね? 帰ったらボールギャグが必要かしら?」

「えっ!? あーんって浮気なのかよ……厳しくないか?」

「そうよ。浮気よ」

「高校入ったら緩くするんじゃなかったのか……」

「それは……」

「妻も探さなくちゃいけないんだから、仲良くさせてくれよ」

「……そうね」


「気のせいかな? びみょーにあーしら、ユッキーの妻に狙われてない? 会話の流れから、あーんしたら結婚しようみたいな?」

「妻探すんだから狙ってる子のあーんくらい見逃せってことですよね? 雪君お姉ちゃんと結婚したいの!?」


「深読みしすぎだ! 普通に二人とは仲良くしただけだよ!」


「なら、お姉ちゃんとは結婚したくないですか……?」


 ちょっと悲しそうに上目遣いで俺を見てくるのは卑怯だと思います!


「待て待て、その聞き方はずるいだろ。とりあえず、仲良くしたいと思うし、仲良くなればそういうのも考えてくるから。あと、桜はお姉ちゃんではないだろ!」


「どうして雪君はお姉ちゃんを認めてくれないの?」


「逆になんでお姉ちゃんとして認められたいんだよ……」


「んー……秘密!」


「秘密なのかよ!」


「大した理由じゃないから! でも雪君のお姉ちゃんにはなりたい!」


「わがままかよ」


「わがままなお姉ちゃんは嫌い?」


「……ありじゃないか?」


「やりました! 今日からわがままなお姉ちゃんになります!」


「もう何でもありだな……」


 そんな会話をしていると家に帰り着いたので、家の鍵を開けようとするが……


「あれ? 鍵空いてるな。母さん先に帰ってきたのか?」


 俺は不思議に思わず、扉をあけ、ただいまーと挨拶をすると、2階からドタドタと降りてくる人物がいた。


「お兄ちゃんおかえりいいいい」


 あれ、なんで海がいるんだ?

 俺の疑問を無視して海は俺に抱きつき、頭を俺の胸にこすりつけてくるので、とりあえず頭を撫でてあげることにした。


「海帰ってきてたのか。学校は?」

「お兄ちゃんが勝手に妹増やそうとしたから早退してきた!」

「そんな理由で早退するなよ!」

「そんな理由じゃないよ! なんで勝手に妹増やそうとしてるのさ! 私じゃ不満ってこと!?」

「そんなことないよ! クラスの子が俺のことをお兄様って呼びたいって言ってきたから許可しようとしただけだ」

「じゃあ私がお兄様って呼ぶから、勝手に妹増やさないで!」

「そういうことじゃないんだが……なんでもいいや……妹が増えようが俺は海を大切にするつもりだぞ」

「……なら証明にチューして」


 桜や愛羅がいる前で……?

 ……まぁ、それで海の機嫌が治るならいいか……

 俺は海に少しだけ長めのキスをしてあげた。

 キスが終わると海は再度俺の胸に頭をこすり始める。


「雪、私にはないのかしら? 帰ってきたらやることがあるわよね?」


 俺は思わず苦笑いになりながらハイハイと答え、海に離れてもらい、時雨にも同じようにしてあげた。


「ふ、ふえぇぇ!? ゆ、ユッキーたち帰ってきたら、そんなことやってんの!?」

「雪君雪君、次はお姉ちゃんの番だよね?」


「いつもこうやってるわ。愛しい人とこうやると、幸せになれるのよ。桜はダメよ」

「お兄ちゃんとこうすると一日の疲れが飛んじゃうよね! というかなんでこの人たちいるの」


「あー、クラスの親睦会に参加出来ないから、俺たちだけで親睦会しようって話になってな」

「ふーん……」


 ちょっぴり海の機嫌が悪くなったが気がするがこのぐらいならいいだろう。

 俺たちはリビングに移動し、時雨と桜が料理を作る間、俺と海と愛羅ソファに座りながらテレビを見ることにした。


『巷では女装する男性もいるみたいですよ!』

『そうなんですか!? じゃあ、町中でもしかしたら男性とすれ違っている可能性も!?』

『あると思いますよ! では、女装の取り扱いを行っているお店に直接実態を聞いてみましょう!』


「ふーん、そんな噂があるんだなぁ」

「……ねぇ、普通にスルーしてるけどさ、なんでウミウミはそんな状態なの?」


 ソファに座ると言ったが……座ってるのは俺と愛羅だけで、海は俺の膝に正面から抱きつきながら座っている。


「ここが私の定位置だから、ギャルにはあげない」


「もう、そんなに愛羅に噛みつくなよ。ちゃんと海を大事にするからさ」


 俺は抱きつく海を宥めるため、頭をよしよしとしてあげると、海は俺の首元に埋め、甘噛したり、ペロペロしたりし始めた。

 時雨と同じでそうするのが当たり前なのか……?


「……ユッキーって毎日こんなことしてるんだ。そりゃ腕に抱きつくだけじゃドキドキもしなくなんね」


「だろ? 愛羅が海や時雨みたいになるのは相当経験が必要だ。おこちゃまの愛羅に俺をドキドキさせるのは無理だからあきらめろ」


「……そう言われると、ムカつくじゃん! あーしの魅力でユッキーをメロメロにしてやっから!」


 そう言うと愛羅も俺の腕に抱きつき、そのままテレビを見ながらお昼ご飯が出来るのを待つことになった。


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