第71話 親睦会 In 我が家

 何を貰ったかわからないまま俺たちは保健室を出ようとしたが、友梨佳先生に呼び止められた。


「そうそう雪君、月曜日はお昼から保健室においで」


「わかりました。一緒に食事ですか?」


「いや、お昼休み終わりの五限目から男子生徒は一度顔合わせで、集まってもらおうと思ってね。多分親御さんからも話があると思うよ」


「そうなんですね。わかりました」


「うん、じゃあ、気を付けて帰るんだよー!」


 友梨佳先生に別れを告げ、俺たちは保健室を出た。


「で? 母さんたち待って帰るのか?」

「そうね」


 ふむ、となるとこのあとは家で時雨とダラダラ過ごすだけか。


「えー! あーしらも親睦会しようよ!」

「親睦会ならクラスのやつに参加したらいいんじゃないか?」

「ユッキーのせいで無理だよ! 行ったら絶対根掘り葉掘り聞かれるじゃん!」


 まぁ、それはそうだよな!


「じゃあ、雪君のお家に行きたいです!」

「それ! ユッキーの家で親睦会しよ! ユッキーの手料理食べたい!」


 桜が提案し、愛羅が乗っかってきた。


「俺は別にいいが……」


 時雨の判定は……


「私はいいけど、海がなんて言うか知らないわよ?」


「……まぁ、なんとかなるだろ」


「やったね! ユッキーの家で親睦会!」

「やりました! これで雪君の部屋に行けます!」


「んじゃ、俺の家で親睦会するか」


「お昼御飯と晩御飯はユッキーの手作りね!」

「いいですね! 雪君の手料理フルコースです!」


「両方かよ、地味に面倒だな。というか、本当に大した物は作れないからな?」


 愛羅と桜がすごい期待しているが、実際出しても普通の料理だからがっかりするんじゃないか?


「なら、お昼は私主導で、晩御飯は雪が主導でどうかしら?」

「あー、ならそうしようか」


 時雨が昼は主導で動いてくれるので少しは楽になるな。

 そこまで話が決まり、俺たちは母さんが待つ校門前に向かった。

 校門前では同じように待つ、保護者や生徒でまた溢れかえっていた。


「そういえば、桜や愛羅の両親は来てないのか?」


「私のところは来てないですね」

「あーしの家も来てないよ」


「そうなのか」


「まぁ、仕事だししゃーないじゃん? 都合がつく親は来るだろうけど、つかないと来れないし」


 保護者を見かけるが全員が全員来てるわけじゃないんだな。

 そりゃそうか、ほとんどが母子家庭みたいなもんだし、仮に夫がいたとしても、もしかして来ないんじゃないか……?


「あ、雪! そっちも終わったのね」

「あら、お友達も一緒ね」


 お、母さんと干菜さんだ。


「あぁ、終わったよ。なんか家で親睦会することになったから、帰りにスーパー寄って帰るね?」


「えぇ、いいわよ。親睦会に来るのはお姉ちゃんとその子?」

「あら、確か時雨と同じ中学だった子よね?」


「こんにちわ! あーし、桃園愛羅っていいます! ユッキーのマブダチでーす!」


「あらあら、私は雪の母親で秋です。よろしくね、桃園さん」

「私は時雨の母親で干菜よ。雪君のマブダチだなんておもしろいポジションね」


「私と干菜さんは一緒に遊びに出かけるから、みんなでいってらっしゃい」

「そうなんだ。遅くなる?」

「えぇ、今日は帰ってこないと思うわ。このまま干菜さんと遊んでくるから気を付けて帰るのよ」

「そっか。了解」


 そう言う残すと母さんと干菜さんはどこかへ行ってしまった。

 まぁ、せっかくの休みなのだから、楽しみたいのだろう。


「それじゃ、スーパーに行きましょうか。私もお昼作るなら欲しい材料があるし」


「そうだな」


「えぇ、行きましょう! ところで何を作られるんですか?」


 と桜が聞いてるが、時雨は何を作るつもりだ?


「私はうどんとおにぎりにするわ。手早く軽めに済むように」


「なるほどな。んじゃ、俺は肉食いたいし油淋鶏でも作るか」


「中華!? ユッキーそんなの作れんだ!?」

「そんなのって言っても油淋鶏の素買えば、割と簡単にできるぞ」

「へぇー!」

「……念のため聞くが、愛羅は料理できるのか?」

「あーし食べる専門だから! 最後に包丁握ったのも2年ぐらい前の家庭科の実習の時だよ!」

「料理しない子だったか」

「そうだよ! がっかりした?」

「ん? 別に? 今できなくてもあとから出来ればいいんじゃないか?」

「おー! 家のママと言うことが違うね! ママは将来に備えてすぐに練習しろって言うのに」

「まぁ、今からでも少しずつ練習はしといたほうがいいとは思うけどな。将来どうなるかわからないけど、出来れば苦労することは少なくなるだろうし」

「んー、そっかー。じゃあ、少しだけ練習しようかな。あーしも晩御飯作るの手伝うよ!」

「おう、愛羅ならすぐ上達できると思うから頑張ろうな」

「ニシシ、ありがとうユッキー!」


「なら、私は時雨ちゃんのお手伝いしますね。」

「桜は料理できるのかしら?」

「私は普通にできますよ。花嫁修業でそれなりに練習しましたので」

「なら問題ないわね」


「んじゃ、スーパー行くか」


 そして、俺たちはスーパーに向かって歩き始め……ようとしたところで、呼び止められた。


「雪君。今帰り?」


「あぁ、紗理奈先輩。先程はありがとうございました」


 俺を呼び止めたのは紗理奈先輩だった。


「気にしないで。騒ぎを納めるのも生徒会長としての役目だから。ところで、物は相談なんだけど、生徒会に入る気はない?」


「……生徒会ですか?」


「うん、ぜひ君に入ってもらいたいなって」


 生徒会ねぇ……面倒くさそうなんだよなぁ……


「うーん……」


「まぁ、いきなり言われても困るよね? また誘うから考えておいてね。それじゃ!」


 紗理奈先輩はそれだけ言い残し、去っていってしまった。


「雪、生徒会に入るつもり?」

「ユッキーが生徒会に入るとなんか色々大変そう」

「雪君、お姉ちゃんにはわかります。おっぱいですね?」


「あんまり乗り気じゃないよ。面倒くさそうだし。あと胸に釣られてない!」


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