第69話 あのさぁ、自己紹介の場なんだけど?
入学式も無事に終わり、俺と桜は教室に戻った。
教室には既にクラスのみんなが戻っていたので俺も自分の席へと戻ると、さっそく時雨が噛みついてきた。
「あなたやってくれたわね……」
「無難な一言だっただろ?」
「どこがよ! 言わなくていいように受付で話したのに! 台無しじゃない!」
「そうカッカするなよ。カルシウム足りてないんじゃないか?」
「そうね、今日は爆破してたっぷりカルシウム取るとするわ」
「カルシウムとか入ってねぇよ! タンパク質オンリーだよ!」
「はーい、皆さんお待たせしました。それではLHR(ロングホームルーム)を始めますねー」
七橋先生がクラスに戻って来たようだ。
そして、LHRが始まる。自己紹介とか来週の授業の話をするのかな?
「じゃあさっそくだけど、皆さんの自己紹介から始めようと思いますので、そっちの子から挨拶してもらえるかな? 名前と簡単に自己アピールしてもらおうかな」
「はい! 私は―――」
自己紹介が始まり、一言二言しゃべって次の人と進んでいく。
いよいよ俺の番だ。
「じゃあ次は、いよいよ男の子の新入生男子代表も務めてくれた大淀君いいかしら?」
「はい! 大淀雪って言います。男ですが、皆さんとこれから仲良くできればいいなと思っていますので、遠慮せずに話しかけてもらえるとうれしいです。私からも近場の人から声を掛けて、輪を広げていこうと思いますので、皆さんよろしくお願いいたします」
無難に挨拶できたのではないだろうか? 相変わらずみんなはこちらを物珍し気に見ている。
時雨は……頭に両手を当てて考え込んでいる。
そして、時雨の番がやってきた。
「坂間時雨と言います。最初に言っておきますと、私は雪の幼馴染で恋人で第二夫人です。雪に何かある場合は直接話しかけず、私に声をかけてください」
「おいまて、なんで時雨を通さなくちゃいけないんだ?」
「当たり前でしょ? そうしないと貴方、誰彼構わず愛想振りまくじゃない?」
「普通に会話してるだけだよ! 仮に愛想振りまいてもいいだろ? 他に妻探さなくちゃいけないんだし」
「ダメよ」
「なんでだよ」
「このままだと本当に婚約者3桁になりそうなんですもの、あなたが入学式で馬鹿な発言したせいよ」
「いかないよ! そんなに婚約者いらないよ!」
「そうかしら? どうせすぐにおっぱいに釣られるんだから、信用ならないわね?」
「ぐっ……釣られ……るかもしれないけど! そんなには作らない! 普通に友人が欲しいだけだ!」
「それでZカップの人を探すつもり? 現実見なさいな」
「探してねぇよ! つうかそのネタやめろよ! 海が勝手に言い出したことだろ!?」
「あら、でも上限はないんでしょ?」
「ないけどさ! 友梨佳先生以上の人を見たことないからだよ!」
……正確にはある。女神様だ。多分友梨佳先生よりデカいが……それを時雨に言うことはないだろう……
「あの人以上なんて簡単に見つからないわよ。つまり上限ないってことじゃない」
「そもそも胸で人を探してるわけじゃねぇんだよ!?」
「でも大きい方がいいんでしょ?」
「それは……そうだが……」
「なら、探してるみたいなもんじゃない」
「待て待て、論点がずれてってるじゃないか! そもそも普通に友人が欲しいだけだよ!」
「行きつく先は一緒でしょ」
「もしかしたら一緒かもしれないけどさ!」
「あのー……」
第三者の言葉が聞こえ、俺と時雨は言い合いをやめ、声がする方をみると七橋先生だった。
「自己紹介の場なので……先に進めてもいいですか?」
「すみません、うちの雪が躾がなってなくて、帰って教育しておきます」
「だから犬かよ! すみません、先に進めてください」
俺はどこで時雨と言い合いしてるんだ……
ふと周りを見渡すとみんな固まって俺らを見ていた。
うん、初っ端からこれはひどいよね……
「えーっと……じゃ、じゃあ次の人」
「は、はい。私は―――」
そして、自己紹介が再開されるが……
「次は、新入生代表を務めてくれた、神藤さんね」
「はい、
「違うだろ!」
「違うでしょ!」
俺と時雨は同時にツッコミを入れる。
「もー、雪君、時雨ちゃん! わがまま言ったらメッ! ですよ?」
「わがままとかじゃないだろ!?」
「勝手に雪の姉にならないで頂戴な!」
「でも、雪君のお母様も時雨ちゃんのお母様も認めてくださいましたよ?」
「……頭痛くなってきた」
「同感ね……」
「そういうことですので、皆様どうぞよろしくお願いします」
どんどん外堀が埋められていく……なんなんだ姉って……
俺はふと気になって、愛羅の方を見た。
愛羅は……口を手で塞ぎ笑いを堪えている。
……仲間はずれはよくないよなぁ?
「時雨」
「何よ」
「間をとろう」
「間?」
「あれ」
そう言って俺は愛羅を指差す。
指差されたことに気づいた愛羅はキョトンとした顔をしている。
「……そうね、その案に乗りましょう」
「えーっと……じゃ、じゃあ次の人」
「はい、私は―――」
次第に順番が流れていき、愛羅の番が回ってきた。
「はーい! あーし、桃園愛羅でーす! たまにファッションモデルなんかもやったりしてまーす! おしゃべり好きなんで、積極的にみんなに話しかけに行くから、みんなもあーしに何かあったら話しかけてね!」
そして、ここで時雨が一言を入れる。
「すみません、先ほど色々ありましたが、雪に何かある場合は彼女に許可をもらってください。雪のマブダチなのできっと親身に話を聞いてくれます」
「へっ?」
そこに俺も乗っかった。
「すみません、俺からもお願いします。時雨と桜には任せておけないので、俺のマブダチの愛羅に一声かけてください」
「はっ!? ちょ!? ユッキー!? シグシグ!?」
「この通り、彼女は雪のことをユッキーと呼ぶほど親しい間柄ですので彼女の許可が必要になります」
「ちょ!? なんであーしを巻き込むの!?」
「おしゃべり好きならいいじゃない」
「おしゃべり好きなんだから頼むよ愛羅」
「それとこれとは話が違うよね!?」
「愛羅ちゃん、よろしくね?」
「なんでサクサクも乗っかるのさ!」
「よくよく考えたら、私に一声かけられると、その分雪君との時間が減っちゃうから愛羅ちゃんに任せたほうがいいかなって」
「あーしをそこに巻き込まないでよ!」
「はーい、彼女からは以上ですので次の人お願いします」
「勝手にそこで終わらないで!」
「……えーっと先に進まないので、次の人お願いします」
七橋先生も空気を読んでさっさと終わらせようと次の人に回そうとする。
「ちょ! 先生!」
「桃園さん、今は自己紹介の場なのであとで話し合ってください」
「はい……」
愛羅の抵抗は潰され、次の人の自己紹介が始まった。
そして、自己紹介が終わり、来週からの説明が終わると授業が終了した。
今日はこれで終わりのようだ。
そして、待っていたかの様に愛羅の元へ女子生徒が殺到した。
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