第68話 高嶺の花
時間になり、教室では皆席についていた。
そして、教室の前の扉が開き、担任が入ってくる。
これで全員か? このクラスで男は俺だけなんだな。
「皆さん、入学おめでとうございます。今日からこのクラスの担任になる、
「「「よろしくお願いします!」」」
「では、入学式の説明を行いますね」
―――それから俺たちは、七橋先生から入学式の説明を受け、説明が終わったあと廊下に並び、体育館へ向かった。
「なぁ、時雨、俺ってまた離れた場所になるのか?」
「……そういえば聞いてないわね。校門の受付でも言われなかったし」
「お、なら、みんなと一緒か」
「……大人しくしてて頂戴ね?」
「いつも大人しいだろ」
「わかった。不用意に喋らないで頂戴。喋ったら私の口でその口塞ぐわよ?」
「家の中なら大歓迎だが、学校ではさすがに勘弁願いたい」
そして、俺たちは体育館に入り、同じように並ぼうとしたが……
「大淀君と神藤さんはこっちに来てもらえる?」
七橋先生から声をかけられ、俺と桜は別の場所に案内された。
そこは教師や来賓の人たちの近く、男は……俺しかいなくね?
生徒は俺と桜と知らない美人な人……一言で表すなら『高嶺の花』だろう。
俺は高嶺の花と目が合ったので、軽く会釈して、席についた。
そして、隣に桜が座り話しかけてきた。
「雪君もここに来たってことは、代表挨拶するの?」
「あぁ、校門で代表の挨拶してくれないかって頼まれてな」
「ふふふ、そっか! 雪君偉いね」
「偉いのかな? まぁ、原稿読むだけだし別にいいかなって。それよりも、もってことは、桜は新入生代表なのか?」
「そうだよ!」
「ほー、代表に選ばれるってことは一番成績がよかったのか?」
「うん、そうだね」
普段お姉ちゃんお姉ちゃん言ってる様子から想像できないな……
「そうだったのか。人は見掛けによらないな」
「うふふ、雪君のお姉ちゃんだからね!」
「お姉ちゃん関係ないよね?」
「うふふ、じゃあ、あとでお姉ちゃんらしく、よしよししてあげるね?」
「いや、別にいいかな……」
「ねぇねぇ、ちょっといい?」
俺と桜が喋っていると反対側から声をかけられた。高嶺の花だ。
「はい? どうしました?」
「貴方が新入生男子代表?」
「はい、そうです」
「……へぇー」
「? あの、何か?」
「うんん、気にしないで。君、新入生だよね? 何組なのか?」
「私はC組です」
「Cね。覚えたわ。これからよろしくね?」
「えぇ、よろしくお願いします。貴方は……新入生じゃないですよね?」
「うん。2年の
「私は大淀雪って言います。よろしくお願いします。東条先輩」
「ふふふ、よろしくね。大淀君」
東条先輩が微笑むと美しさの中に何処か妖艶な感じがするな……
東条先輩は黒髪の腰位までありそうなサラサラのロングヘアーだ。
目の感じはぱっちりとしていて、正統派ヒロインと言った感じだろうか。
胸部は桜並じゃないだろうか? かなりデカい。
「東条先輩はここにいるってことは在校生代表の挨拶ですか?」
「うん、そうだよ。生徒会長ですから」
「えぇ? 生徒会長なんですか? 2年って言ってましたけど、今年2年なんですよね? それで生徒会長になれるんですか? 普通そういうのって3年生がやるもんだと思ってました」
「普通はそうなんだろうけど、去年生徒会総選挙で選ばれてちゃったから」
「へぇー、よほど人望が厚いか、優秀なんですね。もしくは両方ですか」
「ふふふ、君おもしろいね。気に入っちゃった!」
「えっ?」
「さぁ、お喋りはこの辺にしておきましょ。そろそろ始まるよ」
東条先輩がそう言うと、司会進行の人がマイクで喋り始めた。
「お待たせ致しました。これより、入学式を始めます」
いよいよ入学式が始まった。
国歌斉唱、校長の入学許可宣言、学校長や来賓の挨拶、そして―――
「歓迎の言葉を在校生よりお伝えいたします。生徒会長、東条紗理奈、前へ」
「はい」
東条先輩の出番のようだ。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
ただ歩いているだけなのに美しいと感じる。
東条先輩は壇上に上がり、歓迎の言葉を述べる。
「桜の花が咲き始め、温かい日差しが降り注ぎ、新しい出会いを祝福してくれる季節になりました。新入生の皆様、この度はご入学おめでとうございます。在校生を代表し、心よりお祝い申し上げます」
そのまま東条先輩の挨拶は続いていく。
まっすぐ新入生たちを見ながらしゃべってるけど頭の中に原稿が入ってるのか?
こんな長文覚えるなんてすごいな……
そして、挨拶の終わりが近づいてきた。
「これからの学校生活で素敵な思い出を作っていきましょう。以上をもちまして、歓迎の挨拶とさせていただきます」
歓迎の言葉を終え、東条先輩がこちらに戻ってきた。
この次は桜の番かな?
「続きまして、新入生代表挨拶、主席、神藤桜、前へ」
「はい」
そして、桜が同じように壇上へ上がっていく。
桜もお姉ちゃんお姉ちゃん言ってなければ、普通の美少女に見えるな。
「新たな命が芽吹き始める春の良き日に、私たち新入生一同が桜花七情学園の一員となることができ、期待や希望で胸がいっぱいです。私たち新入生の為に式を挙げて頂き誠にありがとうございます」
桜も当然のように原稿など見ずに喋っていく。
そうなると俺だけ原稿見て恥ずかしくないか……?
いや、急に言われたんだし仕方ないんだけどさ?
「この学園で過ごす三年間を無駄にすることなく、日々精進していきます。どうぞよろしくお願い申し上げます」
そして、桜も挨拶が終わり、こちらに戻ってくる。
……いよいよ、俺の番か。
「続きまして、新入生男子代表挨拶、大淀雪、前へ」
「はい」
社会経験があるとは言え、こんな大勢の場でしゃべるのだ、当然緊張する。
歩きながら、少しだけ深呼吸……
まぁ、失敗してもいいか。どうせ急に言われたことなんだし、そこまで責任に感じることもないだろう。
俺は壇上に上がり、生徒一同を見渡しながら、挨拶を始めた。
「春の息吹が感じられる今日、私たちは桜花七情学園に入学いたします。本日は私たちのために、このような盛大な式を挙行していただき誠にありがとうございます。新入生男子を代表してお礼申し上げます」
俺は準備された挨拶をチラチラと見ながら、出来るだけ前を見て読み上げていく。
「伝統ある桜花七情学園の一員として、責任ある行動を心がけていきます。校長先生を初め先生方、先輩方、どうか暖かいご指導をよろしくお願いいたします」
さて、本来であればここで何か一言言うことになっていたが、時雨によって言わなくていいようになっている。
だけど―――それじゃつまらないよなぁ?
俺は微笑みながら言わなくていい一言を付け加えた。
「最後に私個人としての言葉ですが、色んな人と親睦を深め、仲良くしていきたいと考えております。男というだけでこの学園に入学し、右も左もわからない状況ですので、何かと迷惑をかけることがあると思いますが、仲良くして頂ければ幸いです。以上をもちまして、新入生男子代表の挨拶とさせていただきます。新入生男子代表 大淀雪」
俺は二人と同じように一礼し、壇上を下り、自分の席へ戻った。
「ふぅ」
「雪君! すごくよかったよ!」
「ありがとう、桜。最後自分なりの言葉で言ってみたけど、あれで大丈夫かな?」
「あー……あれはダメだと思うよー?」
「えっ、まじか……」
「多分時雨ちゃんに怒られるんじゃないかな?」
「やっぱり?」
「うん、あんなカッコいいこと言っちゃうと、みんな雪君のところに来ちゃうから、次学校来る時から大変だと思う」
「はは、かっこよかったら良かったよ。どうせ妻探さなくちゃいけないんだ。色んな人を見たいからな」
「うふふ、大淀君は変わってるって思ったけど、もの凄く変わってるんだね?」
「えっ、そうですか?」
「うん、あんな挨拶すると思ってもみなかったもん」
「あー、最後微妙でしたか?」
「うんん、予想の斜め上の発言で驚いてる。ねぇ、色んな人と仲良くしたいなら、私も仲良くしていい?」
「もちろんですよ。東条先輩」
「なら、私のことは紗理奈って呼んでもらえる? 私も雪って呼ばせてもらうから」
「はは、わかりました。紗理奈先輩」
「ふふふ、これから楽しみ♪」
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