記念SS 遊園地に遊びにきた!①
高校入学前の金曜日の夜、暇を持て余していると唐突に海が提案してきた。
「お兄ちゃん、明日遊びにいこうよ!」
「おう、いいぞ。どこにいく?」
「んー、どこでもいいけどー……」
「なら、遊園地なんてどうかしら?」
「「遊園地?」」
「えぇ、何か雪とデートっぽいこと出来ないか色々見ていたら、たまたま見つけたのよ」
そう言って時雨は俺達に携帯を見せてきた。
そこには―――
「20周年記念キャンペーンで入場料半額か……」
「ちょうどいいと思わない?」
「そうだな。ちょっと遠いが、母さんに相談してみるか」
「いいね、遊園地! 数年前に1度行っただけだから行ってみたい!」
「えぇ、雪との思いで作りにいいかなと思って見つけたのよ」
そして俺達は母さんのところに行き、遊園地に連れて行ってくれないか相談したところ快く了承してもらい、俺達は明日遊園地に行くことになった。
迎えた土曜日、俺達は母さんの車に乗り、片道1時間掛けて遊園地までやってきた。
「さぁ、着いたわよ」
「ありがとう母さん!」
「お母さんありがとう!」
「秋さんありがとうございます」
「うふふ、いいのよ。じゃあ、あとは三人で楽しんでらっしゃい」
「母さんは来ないの?」
「えぇ、ちょっと行きたいところ見つけたから、そこに行ってくるわ。何かあったら連絡して」
「わかった。帰る時に連絡するよ」
「えぇ、じゃあ楽しんで来なさい」
そう言い残し、母さんはどこに行ってしまった。
「じゃあ、さっそく行ってみましょうか」
「そうだねー! 色々乗ってみたいし!」
「あぁ、行こうか」
俺達は入場口で遊園地の1日フリーパスを買い、入園した。
俺達はパンフレットを貰い、何に乗りたいか相談することにした。
「んで? 何から行く?」
「私このジェットコースター乗りたい!」
海が興味を示したのはこの遊園地の名物だった。
全長1kmにも及ぶ、スキーリフトのように、足がブラブラの状態で宙返りやらスクリュー回転やら決めてくる中々ハードなアトラクションだった。
「ジェットコースターか! いいな! 名物みたいだし、これは行くべきだな!」
「私はこれに行きたいわ」
時雨が選んだのは、全長1.5kmあるゴーカートだった。
「なんか意外だな」
「これ二人乗りがあるのよ。雪と二人で乗りたいんだけど……ダメかしら?」
時雨が上目遣いでこちらにお願いをしてくる。
正直に言おう……そんな目をされて断れる訳がない!
「あぁ、いいぞ! 一緒に乗ろう!」
「お兄ちゃん私も一緒に乗りたいから二週ね!」
当然海も乗っかってくる。時雨だけ優遇したりするつもりはない。
「わかってるさ。時雨と一緒に乗ったあとに海と一緒に乗ろう」
「やったー!!」
「それで、雪はどこか行きたい場所あるのかしら?」
「俺はこれに行きたいな」
俺が示したのは―――
「「おばけ屋敷?」」
「あぁ、ほら、ここのアピールポイント見るとさ、けっこうおもしろそうなんだ」
そこにはこう書かれていた。
【全国のテレビ番組でもとりあげられた本物の心霊スポット……貴方は無事にこの廃病院から生きて出てこられるだろうか…… 】
「へぇー! テレビ番組でも特集されたんだ! おもしろそうだね!」
「だろ? そこまで人気あるならぜひ行っておきたいんだ」
「うんうん! 行こう行こう!」
海は怖いのは平気らしい。かなり乗り気のようだが、約一名表情が固まったままの人物がいる。
「…………」
「時雨は……もしかして、怖いの苦手か?」
「は、はぁ!? そんなわけないでしょ!? お化け屋敷なんて子供騙しでしょ!?」
「時雨姉って怖いのダメだったんだ?」
「違うって言ってるじゃない!? いいわよ! 行くわよ! 行ってあげるわよ!」
「あー……時雨無理はしなくてもいいぞ? 怖いなら別のやつでも「怖くないって言ってるでしょ!!」……わ、わかった」
無理する必要はないと思うが……ここまで言うのなら行くしかないだろう。
と、いうわけでまずは海が希望しているジェットコースターにきた。
「はぁー、すごいなあれ……」
ジェットコースターに来たから並んでいるが、乗っている人の悲鳴がすごい。
そりゃ、あんだけぐるんぐるんなったら悲鳴もあげるか。
「わぁー! いいね! いいね!」
海は目をキラキラさせて、ジェットコースターを眺めている。
「酔い止め飲んどいた方がいいかしら……」
時雨はあれを見て、ちょっと顔がひきつっている。
「時雨は絶叫系も苦手なのか?」
「もって何かしら? 別に怖くないって言ってるわよね? ね?」
「あー! 悪い悪い! 失言失言! で? 絶叫系はどうなんだ?」
「乗ったことないからわからないわ。ただあれだけぐるんぐるん動くと三半規管が耐えられるか心配になったのよ」
「あー、まぁ、あれだけ動けばどうなるかわからんな」
「でしょ? お昼ご飯食べたあとなら絶対乗りたくないわね」
「それはそう」
「ほら! 前動き出したよ! 行こう行こう!」
海が列が動き出したのを見て急かすように伝えてくる。
そして、いよいよ俺達の番が回ってきた。
「お兄ちゃん一緒に乗ろう!」
「おう」
俺と海が一緒に乗り、時雨が後ろの席に乗った。
係員がバーがしっかり固定されているか確認をしていき、確認が終わるといよいよスタートするようだ。
ジェットコースターが動き出し、徐々に上り始めた。
「ワクワク! ワクワク!」
「あー、段々怖くなってきたわ」
「何言ってるの! 今からが楽しいんじゃない!」
待たされた分楽しみが増大し、テンションMAXな海である。
「……そうだな、楽しまないとな!」
「そうそう! 楽しまないと損だよ!」
「あぁ! たのしんでいこぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
海としゃべっていたらいよいよ始まった。
まずはただの急降下から始まり、上昇すると同時に縦に一回転、そのあとは横にぐるんぐるん回りながら急カーブを曲がり、ぐるんぐるん回りながらの急降下、その勢いのまま回転が止まり、一旦小休止かと思えば、縦に一回転と見せかけて一回転の頂上付近で横回転も加わり急降下していく。
うん、もうね、動きがやばい。
「「「キャー―――――!!!」」」
「んなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
全長1kmは伊達じゃないな……
ジェットコースターがスタート地点に戻った時には叫び疲れた状態になっていた。
バーが上がり、俺達はジェットコースターを後にする。
「すごかったな……」
「えぇ、思った以上に楽しめたわ」
「時雨は意外と平気そうじゃないか」
「そうね、三半規管が強かったみたい」
「海は……」
海は乗る時と違い、青い顔をしていた……
「気持ち悪い……」
「だ、大丈夫か? ちょっと休もうか」
海は時雨と違って三半規管が強くなかったようだ。
「う、うん、お願い……ちょっと無理……」
そして俺達は近くのベンチに座り軽く休憩することにした。
「はい、海これ」
時雨は鞄から薬を取り出していた。
「も、持ってきてたの?」
「なんとなく、ね? そんな予感がしたから」
「ありがとう時雨もん」
「さすがだな時雨もん」
「それやめなさいよ。飲み水はないから今から買ってくるわ。ここで待ってなさいな」
「あぁ、なら、みんなの分頼めるか? 俺も欲しいから時雨もいるだろ?」
そう言って俺は財布から千円札を時雨に渡した。
「あら、気が利くじゃない? 雪は何でもいいかしら?」
「あぁ、時雨に任せるよ」
そう言うと時雨は自販機に飲み物を買いにいった。
横を見ると海は3回戦終えたボクサーのように両腕を自分の膝に乗せて俯いている。
「横になるか? ほら膝マクラしてやるから」
「ありがとうお兄ちゃん……」
そのまま海は横になり、飲み物を買ってきた時雨から薬を飲んだあと15分ほどグロッキーな状態になっていた。
★********★
40万PV記念です!
サポーターコンテンツで先行公開してますので、◯◯万記念の時か、何かの記念のタイミングで次話を更新します。
いつも閲覧して頂きありがとうございます!
今後とも、よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます