第64話 あーし狙われてる?


「そーだよ! 歌いに来たんだから歌おうよ! とりま、採点入れんね!」


 梓さんの言葉で愛羅も思い出したようだ。


「はい、雪君、何歌う? さっき言ってたの歌う?」


 桜が俺に曲を選ぶデンモクを渡してきてくれた。


「ありがとう、んー、そうだな、そうしようかな」


 俺は念の為、デンモクで歌詞を確認……うん、一緒っぽいな。

 俺はデンモクで曲を予約した。すると、すぐに曲が始まる。


「はい、雪君マイク。頑張って! 厳しそうなら一緒に歌うからね」

「ユッキー、あーしもすぐ援護するから!」


「ありがとう桜、愛羅!」


 はぁ……久しぶりに歌うなー、まぁ、いつも通り歌うか。


「〜〜〜〜♪ ―――♪ ―――〜〜♪」


 この世界に来て初めて歌う曲、以前は移動中などに聞いていた曲だ。

 流れてくる音楽もいつもの音だ。

 これなら大丈夫。


「―――♪」


 そして、歌い終わり採点が開始される。


『結果発表! ドルゥドルゥドルゥドルゥ テン! 84点! いい感じだね♪』


「うん、こんなもんだな。次は誰がうた……?」


 全員こちらを見てポカンとした表情をしている。

 ……なんで?


「……どうしたんだ? なんか変だったか?」


「……不思議ね。初めて男の人が歌ってるのを聞いたけど、曲の印象が全然違うわね。下手って言ってたけどそんなことないじゃない」


 固まっていた時雨が始動すると、そんなことを言いだした。


「うんうん! お兄ちゃん下手とか言う割にはよかったと思うよ!」

「ユッキー完全に謙遜してたじゃん! マジ騙されたし!」

「雪君! うまかったよ! お姉ちゃんびっくりしちゃった!」

「ちゃんと雪君の勇姿は撮影したので安心してください!」


「はは、よかったよ。なんとかいつも通りに歌えたよ」


「いつも通りってことはよく歌ってるんだ? ユッキー、別の曲でもっかい歌って! リピ希望!」

「そうね、雪が歌ってるなんて新鮮だから、もう一度聞きたいわね」

「お兄ちゃん、アンコール!」

「雪君の歌もう一度聞きたいなー?」

「撮影にしますので、どうぞ歌ってください!」


 愛羅、時雨、海、桜、梓さんが俺にアンコールを希望してくるが……


「んー、どうせなら一緒に歌わないか? ずっと俺がマイク使うのもあれだし」


「んじゃ、あーしと歌おう!」

「お姉ちゃんも一緒に歌おうかな!」

 

「んじゃ、愛羅と桜と俺で歌うか」


「んじゃーねー……これとか二人とも知ってる?」


 愛羅はデンモクを操作して検索すると画面を俺と桜に見せてきた。

 何回か歌ったことあるな。


「多分いけるぞ」

「私も行けますよ」

 

「んじゃ、入れちゃうね!」


 愛羅はデンモクで曲を入れると音楽が流れ始めた。


「「「〜〜〜〜♪ ―――♪ ―――〜〜♪」」」


 やっぱこの二人はうまいな。

 愛羅は声がかわいい感じだし、桜は声がきれいだ。

 面白いのは、桜がリズムに合わせて体を揺らしてることだな。


「―――♪」


「イェーイ!」

「うふふ、みんなで歌うのもいいですわね」

「二人とも歌うのうまいな!」


「ほんと! お姉ちゃん嬉しい!」


 そう言うと、桜がまた俺の腕に抱きついてくる。


「あっ、あーしもやっちゃお!」


 そして、まさかの愛羅まで反対側に抱きついてきた。

 海と時雨と違った感触がとても良い……!


「雪、帰ったら覚えておきなさい」

「お兄ちゃん、一泊二日の未開発地建築爆破旅行希望なんだ?」


「待て待て! 俺から触ってないだろ!」


わたくし、初めて男の人に抱きつきましたが、ガッシリしてるんですね」

「だね! めっちゃカチカチじゃん! なんか運動してるの?」


「運動というか、今は朝、海と時雨と一緒に軽く筋トレしてるだけだな。前はバスケとかもしてたけど」


「へぇー! ユッキーって運動好きなん? 体鍛えてるならあーしともランニングしようよ!」


「おう、いいぞ! つっても、もうすぐ高校入るから、そんなに頻繁には出来ないだろうけど」


「ん? なんで?」


「そりゃ高校入ったら、高校でも新しく友人作るからさ。そっちの友人とも仲良くしたいし」


「なら問題なくない? あーしも同じ学校だし」


「えっ、そうなのか?」


「そだよ! あーし、こう見えて頭良いからさ!」


「頭良くて、運動も出来て、コミュ力高くて、モデルやるくらい美貌もあるとか。もう漫画の主人公とかヒロイン枠じゃん」


「あっはは! ユッキー褒めすぎ! 学力はシグシグと変わんないし、運動も持久走以外勝てる気しないから! コミュ力はあるって自負してるけど、美貌はこの面子ならどんぐりの背くらべみたいなもんじゃん?」


「謙遜までするかこのハイスペギャルは。まぁ、でも、愛羅が魅力溢れる子って言うのは出会って間もないけど、よくわかったよ」


「魅力溢れる子って……あーし、ユッキーに狙われてる?」


「えっ!?」


「雪、帰ったら裁判開くから」

「お兄ちゃんの弁護人はいないから」

「雪君、雪君! お姉ちゃんは!? お姉ちゃんは魅力溢れてる?」

「雪君! 私はどうかな!? 雪君専属の看護師だよ!?」


「いや、ちがっ! そういう意味じゃなくて! 普通に友人として魅力が多い子だなって思っただけで!」


「じゃあ、ユッキー的にあーしは結婚相手として無しなの?」


「んぇ!? いや、そりゃ……全然ありだけど……」


「へぇ~? ユッキー的にあーしはありなんだ?」


 愛羅がめちゃくちゃニマニマしながら俺のことを見てくる……


「……えぇい! ありだよあり! もういいだろこの話は!」


「ごめんね、ウミウミ、シグシグ! あーし、ユッキーに狙われちった!」


「あとでお兄ちゃん締めとくんで大丈夫です」

「雪、今日は寝れないから覚悟しておいてね? 帰りにマムシドリンクでも買って帰りましょうか」


「素直な感想を言っただけなのに……」


「雪君雪君! お姉ちゃんは? お姉ちゃんはどうなの?」


 桜は俺の腕に抱きつきながら少しだけ不安そうな顔で俺を見てきている。


「……それは……その……とても魅力的だと思ってる」


「結婚相手としては?」


「それは……もちろん、ありだと思います……」


 俺がそう答えると桜は嬉しそうに笑顔になり、抱きつく腕の力を強めた。


「ふふふ、そっか。雪君としてはお姉ちゃんと結婚したいんだ?」


「え、えぇ!? いやーそのー「雪!」「お兄ちゃん!」」


「すぐおっぱいに騙されるんだから!」

「帰ってすぐ躾が必要みたいね?」


「……どいひー」


★********★

今日はあっちの作品も更新! 見てね!


投稿し始めて2ヶ月が経ちました……早いものです……


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