第63話 歌いに来たんだよね?
帰りたい。
帰って不貞寝したい。
今の俺の胸中に浮かぶのはそれだけだ。
あのあともドーナッツを食べながら、じっくり公開処刑が行われ、俺は既に満身創痍だ。
「……帰りたい」
「ダメよ、せっかく出会ったんだもの充電させてもらうわ」
「お兄ちゃん、私とデートだってこと忘れてない?」
「お姉ちゃんともデートして欲しいなぁ?」
「雪君! ドーナッツの補填がまだ終わってませんよ!」
「ユッキー、あーしにはどうすることもできないからガンバ」
「……というか、みんなで遊ぶのか?」
「出会ってしまったんですもの、まさかここで恋人を見捨てる雪じゃないわよね?」
「今日私とデートのはずなんだけど!」
「お姉ちゃんも雪君と一緒に遊びたいなー?」
「ちゃんとドーナッツ分満足させてくれるまで帰りませんからね!?」
「……あきらめよユッキー?」
このメンツだと俺の精神がガリガリ削られる気がする……
「はぁ……じゃあ何するんだ?」
「んー、みんなで遊べるものっしょ? カラオケとかどう?」
カラオケか……歌唱力に自信があるわけでもなく、アニソンしか歌える自信がないんだが……?
アニメとかに特に興味なさそうなリア充軍団の中で歌えと……?
「あー……俺歌下手だし、アニソンしかわからないから、違うのがいいな」
「私は雪が歌うのなら何でもいいわよ。というか雪が歌っているところ見たいからカラオケにしましょうか」
「私もお兄ちゃんが歌ってるところ見てみたい!」
「お姉ちゃんもアニメ好きだからアニソンでもいいよ? 歌ってるところ見せて?」
「私も雪君が歌ってるところ見たいです! 動画を撮りたいです!」
「別にアニソンでもおっけー! 恥ずかしいなら一緒に歌おうか? あーしも有名なやつなら見てるし!」
……逃がしてはもらえないらしい。
「はぁ……わかったよ。本当に下手だからな? 下手でも笑うなよ?」
「お姉ちゃんも一緒に歌ってあげるから!」
「……というか、いつまで桜はお姉ちゃんなんだ?」
「? 雪君が生まれた時からお姉ちゃんになったんだよ?」
「出会ったのついこの間なんだが!?」
「雪君にお姉ちゃんって言われてビビってきたの。私は雪君のお姉ちゃんになる為に生まれてきたんだって!」
「私は認めてないからね!」
「私も認めてないわよ? 私が姉権、恋人権、第二夫人権、幼馴染なんだから」
海と時雨が威嚇するように桜に敵意を見せながら俺の腕に抱きついてきた。
「もー、海ちゃんも時雨ちゃんもわがままなんだから」
「わがままとかそういうのじゃないでしょ!」
「そうよ、雪の姉は私だけで十分よ。というかお姉ちゃんはこの間だけでしょ!」
「はいはーい! こんなところで駄弁っていても仕方ないし、カラオケ行くよー! ユッキーの美声聞きたくないの?」
「「「聞きたい!!」」」
「おい、愛羅、ハードル上げるなよ」
「大丈夫だって! あーしも一緒に歌うからさ! 最近の有名なやつだと幽滅の銃弾とか歌える?」
「あぁ、オープニングならわかるぞ」
「なら、いけるいける!」
「あっ! それなら私も歌えますよ! 動画を撮影しながら一緒に歌いますね!」
「梓さんは歌うか撮るかどっちかにして……」
「じゃあ撮ります!」
「いや、撮るなよ」
「いいじゃないですか! 撮っておけばいつでも雪君の歌を聞けるんですよ? 大事なことです! あとでBeamに送ってあげますから!」
「いらないんだよなー」
「梓、私に送って頂戴」
「雌犬、私にも送って」
「
「あーしもあーしも!」
「……帰りたい」
俺のそんな思いは受け入れられず、海と時雨に両脇を固められ、ズルズルと引っ張られてカラオケまで来てしまった。
「いらっしゃいませ。6名様でよろしいですか? ご利用時間はどうなさいますか?」
「6名でーす! とりま、3時間パックドリンク付きでいい?」
愛羅が受付で対応してくれるようだ。
「えぇ、それでいいわ」
代表して時雨が返答。
「じゃあ、3時間パックドリンク付きでお願いしまーす!」
「かしこまりました。少々お待ちください―――では、106号室をお使いください」
「はーい! じゃあ、ドリンクバーに寄って106いくよー」
俺達はドリンクバーでそれぞれドリンクをグラスに注いで106に向かった。
「雪はここよ」
「お兄ちゃんはここね」
俺の両隣はがっちり海と時雨に固められた。
「えー、ずるいですー! 私も雪君の隣がいいです!」
「
梓さんと桜が反論するが……
「雪の隣に座ると発情するからダメよ」
「お兄ちゃんの隣に座れるのは妹の特権だから」
時雨と海は譲るつもりはないらしい。
「座る場所を公平にじゃんけんで決めればいいじゃん?」
「そうだな、全員でじゃんけんして座る場所を決めよう」
愛羅の提案に俺が乗っかる。
梓さんと桜と時雨と海が睨み合い……
「「「「「「じゃーんけーん、ポン!」」」」」」
―――結果……
「愛羅と桜が隣になったか」
「やったねユッキー! 一緒に歌えるよ!」
「お姉ちゃんも一緒に歌ってあげるね!」
「雪、浮気はダメよ?」
「お兄ちゃん浮気したら帰って搾るから」
「雪君の隣がよかったのに! まぁ、でもこの位置なら撮影しやすいですね」
「なぁ、浮気ってどこから浮気なんだ?」
「手と手が触れたら浮気よ」
「お兄ちゃんが他の女の子触ったら浮気だね」
「厳しすぎだろ!? 高校に入ってもそれだと妻探しとかできないだろ!?」
「高校に入ってから緩めるって言ったでしょ? まだ入ってないから厳しくいくわ」
「卒業したんだし、もう入ってるみたいなもんじゃん……」
「高校の入学式から入った扱いだから」
「ウミウミとシグシグ、鬼N出すじゃん。ユッキーかわいそっしょ……」
「……愛羅がマブダチでよかったよ」
「でも、雪君が触らなければ浮気じゃないなら、こうすればいいんですね?」
そう言うと桜は俺の腕に抱き着いてきた。
すごい。何がすごいって腕が包まれて柔らかい……!
「ちょっと! 桜!」
「はい、お兄ちゃんアウトー。帰ったら搾るから」
「俺触ってないよね!?」
「ねぇ、さっきから搾るって何を搾るの? 牛飼ってるの?」
「愛羅が大人になったらわかるから、そのままでいてくれ」
「だから、あーし同い年なんだけど!?」
「撮影の準備できてるんで、そろそろ雪君の美声が聞きたいんですけど?」
……そういや歌いに来たんだったわ。
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