第61話 Zはないよお兄ちゃん……


「こんなところで何やってるんですか?」


「えっ、えぇ!? いや、これは、そのぉー……」


 俺はふと梓さんの手を見ると男性向けのそういう本を持っていることに気付いた。


「あー……梓さんもそういう本を買いにきたんですね」


「えっ!? いや、これはちがっ!?」


「別に変に思ったりしませんよ。私たちもそういう本を見に来たんですから」


「……あの、勉強の為に」


「勉強?」


「その……いつか雪君とそう言うことを、することになった時に備えて、準備だけしとこうと思って……」


「…………」


 梓さんは恥ずかしそうに本で口元を隠しながら頬を赤らめ、上目遣いで俺を見ている。

 ……勉強熱心ですねと返すべきなのか……?


「そんな未来こないから」


 海はそう言い放つと俺の腕に抱き着いて梓さんを睨み始めた。


「いいじゃないですか! もう雪君とやったんでしょ!? 私も混ぜてくださいよ! 私も見習いサキュバスに転職したいですぅ!」


「転職したらいいんじゃない? お兄ちゃん専属のサキュバスにはなれないけど」


「待て待て、そもそもやってないし、そんな職ないよ」


「えっ? やってないんですか?」


「やってません」


「なら私にもチャンスが!?」


「あるわけないでしょ!」


「ケチ!」


「動画撮って送ってあげるから我慢しなさい!」


「撮らねぇよ!? つうか埒が明かないから、見て回ろうぜ。あー、梓さんも一緒にどうですか?」


「いいんですか!?」

「お兄ちゃん!?」


「人数は多いほうが楽しいし、この間の時雨のデートの時も人いたからいいだろ?」


「……帰ったらタワマンが建設できなくなるまでするから」


「……ちゃんと海が満足出来るようにするから許して」


「それで、雪君たちは何をしに、ここに?」


「あー、グッズ漁りにきて、ついでにこういう本を見にきました」


「グッズ?」


「えぇ、アニメとか漫画が好きなんで良さそうなグッズがないか見にですね」


「へぇー、雪君はそういうのにも興味があるんですね」


「そうですね」


「それで、お兄ちゃんはこの辺だと、どれが好みなの?」


 海にそう言われ、辺りを見渡した。


「んー……絵だけ見るならこれとこれとこれが気になるな」


「ふーん、『巨乳の友達が僕を誘惑する』と『友人の巨乳育成計画』と『幼馴染の胸に溺れる』ね。どんだけおっぱい好きなのさ」


「好きだから海や時雨の胸を毎日揉んで育成してるんだよ」


「ならこの『友人の巨乳育成計画』買ってみよう? 参考になるかもしれないし」


「やったぜ」


「そういえば、雪君はどのサイズからどのサイズまでが許容範囲なんですか?」


 ふむ……そう言われると……難しいな?


「どうですかね……時雨って確かDでしたけど好きですし……友梨佳先生のHカップより大きくてもかまいませんし?」


「つまりお兄ちゃんの許容範囲はD以上の上限なしってこと?」


「逆に嫌いになるほど大きいのを見たことがないからわかんねぇよ」


「んじゃ、この大きさは嫌い?」


 そう言いながら海が見せてきた本は……


「『罠に嵌ったヒーローを魔改造する悪の女幹部 Zカップまで育てられた胸でご奉仕する正義のヒーロー』……んー…実際こんなサイズだと色々大変そうだよな」


「……これでも嫌いじゃないんだ?」


「いや、絵じゃん。絵で聞かれても困るんだが?」


「この絵自体はどう思うの?」


「んー……表紙だけだからなんとも言えないが、実用性はあるんじゃないか? 中身見たらまた違うかも知れないけど」


「「えぇー……」」


 海と梓さんが何故か引いている……


「えっ……絵でも引くのか?」


「なんか、お兄ちゃんこのサイズでも喜びそうって思って」

「雪君、流石にこのサイズに育てるのは無理ですよ?」


「だから絵の話だろ! 嫌かどうか確かめるなら実物を持って来い実物を!」


「とりあえず、上限はないってことだけ覚えとくね」


「そんなトリビアいらんだろ……」


 そこから俺と海と梓さんの三人でそのお店を散策し、気になった物を買ったあとお店を出た。

 けっきょく、グッズはタペストリーを一点購入した。

 まったく知らない絵師だけど、絵が好みだったので思わず購入してしまった。

 ちなみに猫耳の白いワンピースを着た胸の大きな子が夏の向日葵畑にいる絵です。


「お兄ちゃん猫耳も好きなんだ?」

「そうだな」

「うさみみはどうですか?」

「好きです」

「犬耳は?」

「垂れてるならありだな」

「もうなんでもありじゃん」


 好きなんだから仕方ないじゃないか……!


「はぁ……お兄ちゃんが変態だってことはよくわかったから、どこかお昼食べに行こう? お腹空いたー」


「男は皆変態なんだよ……そうだな昼ご飯食べに行くか」


「そうですね! 食べに行きましょう! 安い物ならご馳走しますよ!」


「やったぜ!」


「じゃあこの辺にある高級焼肉調べるね。確かA5ランクのお肉が食べれるお店が……」


「安い物って言いましたよね!?」


「そうだ。ドーナッツ食べに行かないか? この間約束したし」


「! うん! 行こう行こう!」


 海は余程うれしいのか、俺の腕に抱き着いて頭を擦り付けてくる。


「ちょうど近くにチェーンのドーナッツ屋さんがありますね。そこに行きましょうか!」


 俺と海と梓さんでドーナッツ屋へ向かう。幸い、現在地から遠くなかったので5分程で目的地に着いた。

 休日の昼時だからか、人が多いな……


「あー、俺は席確保してくるよ、何食べるかは海が好きに選んでくれ」


「わかった! お持ち帰り出来るように三十個くらい選んどくね!」


「普通に食べる分だけにして下さい!」


「お兄ちゃん飲み物は?」


「ブラックで」


「おっけー」


 俺は一先ず二階に上がり、空いてる席がないか歩きながら見渡した。

 やっぱ人が多いな……

 そんな風にキョロキョロしていたから、俺は人にぶつかってしまった。


「あ、すみません!?」


「へ?」


 やべっ!? しゃべっちまった!!


「……ユッキー?」


「えっ?」


 ―――ぶつかった相手は愛羅だった。


★********★

すみません、次話から登場人物が多いです。今後に備えての練習なのです。

基本的に口調や雪の呼び方で判断して頂けるとは思いますが、誰の会話かわかりにくかったら、ご指摘頂ければ幸いです。


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