第58話 とりあえず……遊ぶか!

 「あー……それで? 俺は大淀雪って言うんだが、あんた名前は?」


 「わたくしは、神藤しんどう さくらと申します。皆様、先程は助けていただき、連れ出していただき、ありがとうございます」


 名前は神藤桜と言うらしい。ここでようやく冷静に彼女のことを見ることができたが、身長は俺と同じくらいだな。金髪のサラサラロングヘアーで腰まで長さがある。胸部はさっき顔に乗っかった時に感じたが……海より大きいな……そんで目は少しおっとりした感じで、第一印象としてはお姉さんっぽい人だ。


「私は坂間時雨よ」

「あーしは桃園愛羅だよー。よろよろー!」


「……色々言いたいことはあるが、まぁいいや……」


「ところで……貴方はもしかして、男性ですか?」


「あー、そうだよ」


「まぁー! 男性も普通に外を出歩くんですのね? 女装しているのはバレないようにですか?」


「そうよ。普通にしゃべるから変装の意味があまりないようだけど?」


 時雨がジト目で俺を見てくるが……


「いや、今回のは仕方ないだろ」


わたくしも男性に会う機会がたまにあるのですが、大淀さんみたいな人もいらっしゃるんですね」


「ユッキーみたいな人滅多にいないと思うけどね? あーしも初めて見たし」


「そんなことより、神藤さんはこれからどうするんだ?」


「……皆さんはどうなさるのですか?」


「あーしらはこのゲーセンが目的地だから、ここで遊んでいくよん!」


「……これも何かの御縁ですのでわたくしも混ぜて頂けませんか?」


 まさかの返答に俺と時雨と愛羅は顔を見合わせる。


「別にいいけど、追って? の人達は大丈夫なのか?」


「えぇ、いざとなったら連絡するから問題ありません」


「なら、お稽古サボっちゃおう! ずっと稽古だけとか息が詰まるし、息抜きしちゃお!」


「えぇ! 皆さんよろしくお願いします」


 神藤さんはそう言うと、深々と頭を下げた。


「んじゃ、何からしようか? あとでメダルゲーはやりたいよな」


「わかるー! あれマジ沼なんだよね!」


「だよな! 当たり始めるとまじで時間溶ける」


「それ!」


「にしても、うるさいわね。ゲームセンターってこんなに音が大きいのね」

わたくしも初めて来ましたが、すごい騒音ですね」


「そうだな。だいたいこんな感じだぞ。んじゃ、なんかみんなで遊べる台探すか」


「エアホッケーとかどう? みんなで対戦しよ!」


「いいね! それだ!」


 とりあえず、エアホッケーをやることにしたのでエアホッケー台を探すとすぐに見つかった。プレイ料金は……100円か。かなり良心的だな。


「じゃあジャンケンでわかれるか」


 そして結果は―――


「俺と神藤さんだな」

「えぇ、よろしくお願いしますね!」


「私と愛羅ね」

「シグシグと一緒なら優勝間違いなしなし!」


「んじゃ、始めるか」


「罰ゲームはどーする?」


「いる?」


「あった方が燃えるっしょ!」

「なら勝った人が負けた人にひとつ命令できるようにしましょ」

「おもしろそうですね! やりましょう!」


 急遽罰ゲームありの真剣勝負になった。


 そして始まったエアホッケー対決。


 いい試合になるだろうと勝手に思っていた。

 序盤2:1といい勝負だったが、時雨にエンジンが掛かり始めると時雨の猛攻が始まった。


「フッ!」


 時雨は壁を使わず、ストレートにゴールに向けて打ってくるのだが、その速度が早い。ゴールも意外と広いため、すべてをカバーできるわけもなく、ちょくちょくゴールを決められる。


「し、時雨、強くないか?」


「強いも何もこの円盤を相手のゴールに入れるだけでしょ? 簡単じゃない」


「あっはは! シグシグ運動神経いいからね!」


「愛羅もいいでしょ」


「悪くはないけど、シグシグには持久走以外勝てる自信ないなー」


 ……敗色濃厚なんだが?


「頑張りましょう! 大淀さん! 私も頑張りますから!」


 神藤さんは俺を見ながら両手を自分の前でグッっと握り、頑張るという意思を示すと同時に俺を励ましてくれる。


「ははっ! なんか年上のお姉さんっぽいな!」


「……お姉さんっぽいですか?」


「あぁ、今の仕草が可愛らしくて、弟の為に頑張る、頼りがいのあるお姉さんみたいな感じがした」

 

「…………」


 神藤さんが俺を見ながら驚きの表情で固まった。

 なんか変なこと言ったか俺?


「神藤さん……?」


「お姉ちゃん」


「ん?」


「お姉ちゃんって呼んで下さい!」


「「「はい?」」」


 神藤さんが目をキラキラさせている……


「ユッキーのお姉ちゃんが爆誕した?」

「雪、法律を無視して勝手に姉を増やすのは良くないわよ」


「どーしてそうなるの???」


「ゆき……雪君!」


「え、あ、はい」


「お姉ちゃん頑張るから! 見ててね!」


 さっきより3割増しで力が入っているように見える。

 そして、アイスホッケーが再開したのだが……


「フッ!」

「ハァッ!」


 ほとんど時雨と神藤さんで打ちあっている、たまに俺と愛羅が参加するだけで、ほぼ二人の攻防だ……なんかバトル漫画チックになってない?

 時雨が直接的なゴールを狙うのと違い、神藤さんは壁を利用して反射でゴールを狙うプレイをしている。


「なんか、あーしら蚊帳の外じゃない?」

「そうだな……」

「って言うか、神藤さんも運動神経良さそうだね。シグシグと張り合ってるし」

「だな」


 ちゃっかり俺と愛羅はそっと台から離れ、成り行きを見守っている。

 お姉ちゃんパワー? に目覚めた神藤さんの猛攻が続き、そして―――


「勝ったーーー!!!」

「はぁ、はぁ、はぁ……ま、負けたわ」


 神藤さんが点数を巻き返し逆転勝利を果たした。


「雪君! 見ててくれた!」


「あ、あぁ! すごかったよ神藤さん」


「お姉ちゃん!」


「……すごかったよお姉ちゃん」


「えへへ、でしょでしょ!」


 神藤さんは両手を腰に当て胸を張り、俺に自慢をしてくる。

 大きな胸を主張しているように見えてちょっとエッチです。


「じゃあ罰ゲームですね!」

「そうだな。何にするかなー」

「雪は途中参加してなかったから無しよ」

「あはは、あーしとユッキー途中で眺めてたもんね」

「どいひー……」


「それじゃあ……」


 神藤さんが罰ゲームの内容を告げた。


★********★

今日は不運美少女も更新されますので、よかったら見てください!


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