第57話 このパターンは宝くじ当たる?
俺たちは昼食を終え、店の外に出た。
やっぱバーガーはいいな。久しぶりに食べたが、大満足だ。
「んじゃ、腹も膨れたし、適当にぶらつくか」
「そうね、服は……この間買ったからやめときましょ」
「んー、アクセとか興味あるー?」
「私は興味ないわね」
「俺もないな」
「なら、カフェ巡りとかは?」
「今バーガー食ったからなぁ」
「そうね、軽食だったらそれでもよかったけど」
「んじゃー、ゲーセンとかどうよ? プリクラ撮ろ!」
「お、いいね!」
「ゲームセンターね。初めていくわ」
「お? シグシグ行ったことないんだ?」
「えぇ、興味ないもの」
「なら、シグシグのデビュー戦だな」
「デビュー戦って何よ? 戦うの? というか雪は普通に呼んで頂戴」
「ユッキー、かなぴー!」
「……帰ったら躾が必要かしら?」
「すいませんでした……」
「あっはは! ユッキーとシグシグの組み合わせおもろいね! 逆の立場なら見かけるけど、ユッキーとシグシグのような関係リアルで初めてみたわ!」
「まぁ、私と雪は恋人ですから♪」
「恋人って言うなら、もうちょい慈悲があってもよくないか?」
「あら、こんなに慈悲に溢れてるって言うのに何に不満があるのよ?」
「建築と爆破の回数をもう少し減らしてくれないか?」
「雪が誰彼かまわず愛想振りまくのをやめたら考えるわ」
「……神よ、救いわないんですか……!」
「残念ながら、神は休暇を取って、世界旅行行ってるわ」
「何世界旅行してんだよ。それで、いつ帰ってくるよ?」
「雪がおじいさんになったら帰ってくるわよ」
「……愛羅、ちょっと慈悲売ってくれない? 時雨に日頃の感謝を込めてプレゼントしたいからさ」
「あーしの慈悲とシグシグの慈悲は互換性ないから買っても意味ないよ?」
「…………」
「ほら、雪、バカなこと言ってないでゲームセンターに行くわよ」
「さっきから気になってるんだけど、建築と爆破って何? ユッキーの家で何か実験やってるの?」
「愛羅がもう少し大人になったらわかるよ」
「あーし同い年なんだけど……」
俺の生活に救いはなかったようだ。
そんなくだらない会話をしながらゲーセンに向かっていたが、愛羅が近道があると言って大通りから脇道に入っていくことになった。
「こっちから行くと大通りからはずれるけど、時短になるんだよねー」
「ふーん? この辺りよく来るのか?」
「まぁね!」
「初めて通る道ね。大通りと違って居酒屋がポツポツあるくらいね」
「そそ。だから普段通ることはないと思うよ!」
脇道というだけあって、人通りも少ない。
普通の会社など入ったビルがあったりするぐらいで、特別珍しい物はない。
そうして俺達は愛羅について行く形で道の端の方を歩いていたのだが……
「どいてええええええええええええ!!!」
「「「はっ?」」」
上から声がしたので思わず見上げたが、今歩いている横のビルから女の子が飛び降りてきた。
「はっ!? ちょ!?」
ちょうど俺の真上にきたので、俺は思わず受け止めるようとするが、受け止めきれず、飛び降りてきた女の子の下敷きになった。
「雪!?」
「ユッキー!?」
い、いてぇ……背中は痛いのに……顔は柔らかい……
「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」
声の主が起き上がったことで気が付いた。俺の顔にこの人の胸が乗っかってたのか……まさかここでラッキースケベが発動するとは思わなかった……
「あ、あぁ、なんとか大丈夫だ」
「よ、よかった!」
「な、なんでビルから飛び降りてきたの?」
時雨は俺の背中をさすっており、愛羅が顔を引き攣らせながら、落ちてきた女の子に問いかけている。
「あぁ、そうだ! 早く逃げないと! どこかへ!」
……追われているのか!?
「くっ……急いで逃げよう! 時雨、愛羅! ゲーセンにダッシュだ!」
「えぇ!」
「りょ!」
時雨と愛羅も状況を察して走り出した。
俺は落ちてきた女の子の手を引いて後を追う。
愛羅が走って行くのを追うが、愛羅は右に曲がったり、左に曲がったり、どんどん先を進んでいく。
5分ほど走り続け、やがて大通りに出て、目的のゲーセンが見えたので俺達は中に駆け込んだ。
「「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」」」
「ふぅ……ちょっと遠回りしながら来たから撒けたと思うけど……」
いや……待て……なんで愛羅はあんだけ走ったのに息切れしてねぇんだ……
「はぁ、はぁ、はぁ……愛羅って体力あるんだな……」
「まぁね! 毎日ランニングしてるから!」
「ちょ……ちょっと息を整えましょう……」
「そ……そうですわね……」
時雨と落ちて来た女の子は俺と同じように肩で息をしている。
そして、俺達はゲーセン内にベンチを見つけたのでそこに座ることにした。
自販機もあるな……スポーツドリンク飲むか……
俺は財布を取り出し、スポーツドリンクを4つ買い、みんなに渡していく。
「ありがとう雪」
「お! ユッキーあざまし!」
「ありがとうございます」
各々ドリンクを飲み始め、なんとか一息つくことができた。
「はぁー……なんとか逃げ切ったかな? それで、何があったんだ、逃げないとって言ってたけど? あんた誘拐でもされたのか?」
「? いいえ?」
……はい? じゃあなんでビルから飛び降りてきたんだよ……
謎の女の子は何言ってるのと言わんばかりにキョトンとした顔をしている。
「えっ、じゃあ、なんでビルから飛び降りて逃げようとしたの?」
愛羅はまた顔を引き攣らせながら謎の女の子に問いかけた。
「お稽古が嫌になって逃げだしましたの」
「「「…………」」」
「せっかく学校がない休み期間なのにお稽古ばかりでひどいと思いませんか!?
完全に騙されたわ……
二人も同じ思いなのか、椅子に座りながら顔を上にあげ、天井を見上げている。
「時雨よ……」
「……何かしら?」
「ボディーガードじゃなくて女の子拾ったんだが、宝くじ当たるかな?」
「……ワンチャン当たりそうよね。1万円くらい」
帰りに宝くじ買って帰るか……
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